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ナナミちゃんのお願い

 ギルドを出ると街は結構な人通りだった。


 やはり正午のお昼時には、皆が一斉に街へと飛び出すらしい。ギルドの所属の手続きと、食事を終えた私は、住む部屋のを探さなきゃいけない。


「そういえばエクレア様、宿屋を探してませんか? 宿屋もギルドのカウンターで貰った本に、割引の効く宿屋の名前が載ってますよ。是非、参考にしてくだいね。って副ギルドマスターに言ってくださいって言われてるんですよね~」


 そう林檎ソーダーを運んできたマリーネちゃんに言われて、本の内容を少し読んで、だいたいの目星も付けた。


 それにしても教会の結婚式の割引まで書かれていたのは驚いた。地図が書かれている下に、もしもの時はギルドで遺体袋を貰ってください。って書かれていて、あ~これ遺体についてメインで書けないからか~と感心したりもした。


 師匠には初心者は、フルキォールがお勧めと言われていたけど、こんな感じに手厚ければそれも納得がいく。後は魔物の属性と街と冒険者の雰囲気、それをある程度掴んでから、定住を決めても遅くないかな。


 宿屋の方向へ歩きだそうとした時、ギルドの植え込みのブロックの柵に、ナナミちゃんが腰かけて居るのを見つけた。ナナミちゃんの方も私を先に見つけていたずらっ子のような顔で、指をひらき手を振っている。


「あれ、ナナミちゃんどうしたの?」


「もちろんエクレアを待ってたんだよー。久しぶりに話したい事はあるし、それに今から本に載っている宿屋へ行くんでしょう? 案内するよ。もちろん、私が泊まってる宿屋からね~」


「えっ、本当? うれしい。でも、ギルドの中で待ってれば良かったのに」


 彼女は手を後ろに組み、頭を右に傾ける。


「うーん、いろいろあるだよー。それより行こーう! 宿屋が決まったらいろいろ買わないと」


 そう言って、私の手を掴んで歩きだす。見知らぬ場所で、幼馴染にあって昔に戻ったみたいで安心する。


 私たちは人通りの多い、石畳の街を並んで歩き始めた。目の前にはおしゃれなで、楽し気な建物が並んでる。


 ☆☆ 


 ナナミちゃんの泊まる宿屋はギルドからそう遠くない場所にあった。


「部屋の中を、見て決めた方がいいじゃない?」ってナナミちゃんが言うのでついて歩いていく。2階の彼女の部屋に行く途中、リビングのような空間には、ノアとカリストさんが居た。


 ノアさんは本を読んでいて、カリストさんはそんなノアさんに何やら話しかけているようだ。


「お兄ちゃん、カリスト幼馴染のエクレアだよー覚えてる?」


 ノアは、読んでいる本を下に傾け私の顔を見つめる。


「あぁ……居たな、そんなの。魔法が得意で、いつもお菓子食べてる」


「食べてませーん。お久しぶりです。エクレアです。ノアさん、カリストさんこの街へ越して来たので、これからよろしくお願いします」


「久しぶりだなエクレア。えっとーチョコとかアイスが好きだったよな。この街はいろいろな種類のお菓子があるぞ」


「はぁ……、ありがとうございます」


「よろしく」


 今日は久しぶりなのでカリストさんも、話す量を頑張ってくれたようだ。ノア、ノアさんはいつも通りだったけど。それにしてもどうして、私にそんなにお菓子のイメージがついちゃったんだろう?


「お兄ちゃん」

「ノアだ。兄弟仲良しごっこはしないって言っただろう?」


 ノアがぶっきらぼうに言い、ナナミが明らかにへこんでしまった。


「ノア、エクレアにうちのパーティ入って貰わない? うちは後衛を探していたでしょう?」


 ――なんですと!?


「いやー、私、初心者だし足を引っ張るんじゃないかな?」

 私は決まってしては大変と、慌てて言った。


「ほら、本人もそう言っている。うちは効率重視だし、初心者には務まらない。たぶん、この俺にガンガン文句言えるような奴じゃないと、このパーティーの魔法職なんてつらいだけだぞ」


「でも、ノア、普通のパーティーには魔法職が欠かせないって、お前もわかるだろ?」


「カリスト……」


「お願いノア、やっぱり魔法職が居ないと、ヒーラーも辛いの。魔物を弱体化させる魔法も、ヒーラーだと限りがあるし」


 二人からお願いされる形になってしまった、ノアは私の顔を見る。


 ナナミちゃんと兄妹だけあって、彼の顔はとても綺麗な顔立ちをしている。プラチナブロンドに、ブラウンの瞳。どこかの王子様!? って感じの顔立ち。


 ノアだけど、少しだけ胸がドキドキしてしまう。


 彼は不意に目をそらし「エクレア、話は聞いていただろ、入るかどうかはお前が決めろ。俺はこのパーティーは、お前におすすめしない。ナナミ、エクレアが入った場合は、お前がちゃんと説明しろよ。お前が連れて来たんだからな」


 それだけ言うと、座っていた長椅子のソファへ横になり、本をかぶせ眠ってしまった。


 そして残った三人はお互いに目を合わせるが、カリストさんは「まぁ、いろいろ見て決めるといい」と言って、一目ノアを見ると自分の部屋に入ってしまった。


 ノアは戦いの戦術に関しては的確なので、ノアのパーティーはそういうパーティーだろう。実際、里でもそんな感じで彼のパーティーを組み、彼らだけ先に帰って来て、そこら辺でノアたちがゴロゴロしている事はよくあった。


 彼らのパーティで頑張れば、黒魔術師の腕は上がって、師匠を驚かせる事は出来るだろう。でもー、魔物の狩場で私からポッキリ折れて、パーティー全滅は避けたい。冒険者の資質で大事な事は自分を知る事だ。よし! なんとしても断ろう。


「エクレア、じゃー私の部屋へ行こうか」


 明らかに意気消沈している、ナナミが私の腕を引く。


 廊下は明るく、珍しくランプが置かれている。こういう物は、イグリオンから輸入されると聞くが、この宿屋は結構儲かっているのかもしれない。


 ナナミは廊下の一番奥の部屋の壁を触り、呪文を唱え開錠する。部屋にはいると対面して窓があり、横幅は大人2人が、両手を広げ当たらないくらい。タンスとベット、そして洋服掛けが置かれている。


「タンスとベットが備え付けで付いていて、洋服掛けは別料金で借りられるの。後、いろいろ借りられるものあって、ここら辺の宿屋でそれらを貸し借りしているから、この宿屋に無くても2,3日で届くかな?」


 彼女はきれいに整理された部屋のベッドに座り、そう話した。


「本に書かれた値段で、このこれだけの広さだったら十分だね。あぁ……でも、やっぱりいろいろな宿屋を見ようとは思うよ、あはぁはは」


 ノアが、共同リビングで寝っ転がっているのを見ながら横を通るのは、きついかな? 目の保養にはなるかもしれないけど……うーん。


「えっーエクレアもこの宿屋にしようよ! 同じパーティーは一緒の方が何かと便利だよー」


 ナナミちゃんはベットから起き上がり、私に言った。


「えっ……でも、私、初心者だからノアさんもああ言ってたし、無理だよ」


「じゃー1年、ううん、3ヶ月、じゃなかったら1ヶ月だけでも、一緒にやってみない? ノアは厳しいけど、勉強になる部分はあると思うんだ。それに……」


 ――それに……。


「私たち友だちだよね」


 そう彼女はにこにこの笑顔で言った。


「あ……っと、えっと……」


「だめ?」


 だめ? 良いか、嫌かで言われたら嫌だ。……『だめ?』『えっ~? どうして? もしかしておノアだめなの?』『だめなの』『ノアは何もしてないよ』『なんか無理なの』『上から言ってくるのが無理なの』『今日は風が強いからそんな日は、ノアとのパーティー組むなって天の啓示が今来たの!』


『そんなひどい!?』


 ――いやー、本当にひどい。特に最後。


「うーん、1ヶ月、1ヶ月だけね。ほかの人たちともパーティーを組んでみたいし、もしかしてノア、えっとノアさんから首って言われちゃうかもしれない。だから、うーん1ヶ月後の事は期待しないでね」


「わかった! じゃー買い物へ行こう。おススメの雑貨屋とか美味しいお菓子屋さんも紹介するよ」


 彼女は、弾むように言う。実際、彼女は少しピョンピョンと飛んでいて、下の階からの苦情を心配したがそういう事はなかった。


 私たちは眠っているノアの横を通り抜け、街へとくりだりたのだった。


 続く

見ていただきありがとうございました!


またどこかで!

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