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ギルドの窓口にて

初めて行った冒険者ギルドには、幼馴染のナナミちゃんが居た。久しぶりの再会で、目の前がパッと明るくなっちゃった。

 

 黒くツヤツヤな綺麗な髪で、良く晴れた朝のような水色に瞳の彼女。くるみボタンのブラウスの上に、裾の長い上着とミニスカート、そんな白のヒーラーの衣装がとっても似合っていた。


 凄く可愛らしいけど、膨張色の白はなぁ……。私には着られないな……。

 

「すまん、通っていいか?」

 

 低い通りの良い声がした。横を見ると、聡神(そうかみ)伊久磨(いくま)が居た。この大陸で、珍しい日ノ本から来た人間だ。装備はこちらの国のものを身につけているが、彼の刀だけが異彩を放っている。


「あっ、すみません」私は慌ててナナミちゃんから離れて後ろずさった。


「いや、こっちこそすまん」そう言って彼は、 私たちの前を通って行った。私たちはただそれを眺めていた。


「なんで、向こう通らないのかな?」ナナミちゃんが、濃いえんじ色の円形のソファの奥側通り道を見て少しとげのある声で言った。


「彼は左利きで、向こうを通ると刀の鞘が壁にぶつかってしまうの」


「へぇー、エクレアよく見てたね」

 

 そうナナミちゃんは言って、私は「偶然、目についただけだよ」と、言ったが彼の事は結構情報で知っていた。

 

 彼に同じように、『通っていいか?』と言われたうちの師匠が、『えっ? どうして?』と、聞き返すとこから始めて『いや、すまなかった。向こうを通る事にする』と言っても『その理由が聞きたいの』と彼について行ったらしい。


 『そこにもしかしたら世界の神秘があるかもしれないしー、日ノ本って不思議な国なんでしょう? 忍者いるんでしょう、忍者素敵ね。子孫なの?』


 そう言って彼を追い回し、彼の名前から、歳はいくつか、そしてなんの目的でここに来たかまで、酒場に連れて行って聞き出したなんて、他人には例え幼馴染にも言えない事だった。

 

 聡神さんが通り抜けた後、彼の相手をしていた受付嬢さんが、「こんにちは、あちらの受付開いているのでどうぞ」と言ってやってきた。

 

 そして彼女はナナミちゃんに、何か話しかけ始めたので「ナナミちゃん私、受付行ってるね」そう言って二人からそおっと離れ、ベンチの前を通り開いている受付の前に立つた。


 受付には優しくて、ちょっと頼りない感じの眼鏡をかけた男の人がにこにこ笑顔で出迎えてくれた。制服なのだろう、質のいい黒のジャケットとえんじ色に曇った時の海の色などの差し色のが入った落ち着いた感じの斜めストライプのネクタイをしている。

  

「あのーこの街の外に住んで魔女見習いをして、ちょっとした事情でこの街へ住み冒険者をしたいのですが、 どうすればいいですか?」


「もしかしてギアールさんの所の……「師匠を知っているんですか?!」

 私は驚き、彼の言葉を遮り聞いてしまった。


「うーん……、この街で彼女と彼女の追い求める『世界の神秘』ってキィーワードを知らない人は居ないんじゃないかな……?」


「ははは……。うちの師匠がすみません……」私は、カウンターに両手をつけて頭を下げた。内容は、聞かなくてもなんとなく理解できたからだ。


「ですが、どうにもならない案件でも、彼女ならこなしてくれますし、この街のみんなは彼女の事を頼りしてますよ。昨日、お別れを言いに来たときは驚きましたが、お弟子さんが残ってくださるのは心強いです」

 

 彼はそう言って目を細めて笑ったが、昨日師匠はここに来ていたとは、師匠もまめなとこがあるなぁ……。そして私に師匠の代わりが務まるだろうか? しかしそれは無用な心配で出来る事やるしかないのだ。

 

 「すみません。話がそれてしまいましたね。私はヨークと言います」


 彼がそう言った時、「ヨークがさー」って師匠の声が聞こえた。この優しそうなヨークさんが、クレーマー冒険者の手にペンを貫通させたヨークさんか……。

 

「では今、お持ちの住民カードをギルドの登録も出来ものにしますね」


 彼はガードを傾けると、文字がキラキラと輝きながら落ちていく。それだけで幻想的で、とてもきれい。私の知らない魔法の登場に、とても興味津々で彼の手元を見る。でも、それが彼に伝わってしまわないように、慌てて視線を外すがやっぱり気になる。

 

「凄い、どうなっているのですか? これ」


「実は幻影の魔法かけているだけなんですよ。冒険者のみなさん魔法が得意な方ばかりではないので、打ち消す魔法でサッと消しちゃうとすり替えられたと、思う方が一定数いまして……」


 いきなり彼の表情が雲った。冒険者には荒くれ者も多い、そんな人々の相手も結構大変のようだ。


「では、ペンをお出ししますので。このカードの上にお乗せください。そして出来たら、動かさない様にお願いします」


 ふんふんと、聞いて彼に言われた通り、彼の手のひらと手のひらからの間から現れたペンを、軽くカードに添えてみる。するとキラキラ光る、水色のインクが溶け出るようにカードの書式を埋めていく。

 欲望に負け、右から、左からと様子を確認しつつ見る。

 

 これは体の内を探る魔法の応用で、系統としてヒーラーに近い系統で……でも、相手を無意識に操る黒魔法の系統も入っている?


 そんな事を考えると、彼が「ふふふ」って笑う。

 

 顔を上げ、彼の気持ちを探るように、彼の顔を見る。


「失礼しました。魔法使いの方々には2種類居まして、魔法学校卒業してすぐに冒険者になられる方は、この冒険者カードの裏に記載されます呪文サポート通り覚えていかれるのです。それに対して魔法使い弟子に入られたような方は見て覚える傾向があります。そういう方いつも私の魔法を紐解こうとペン先を凄く真剣な目でご覧になるんですよ。しかしそれはあまりお薦めしません。解析した事が私のような事務員にバレると、首に首輪をはめられる事になりますよ」


 彼はにこにこ笑って言うが、彼の言葉じりに「私の様に」って付きそうで、オカルトを聞いた時の様に毛穴がゾアッとした。

 

 全ての項目が記載されたカードと、ペンを彼は私から受け取る。ペンは水色の幾つもの蝶となり消えていった。事務作業の1つ1つが幻想的で、飽きが来ない。


 うちの里の「修行に行くので、しばらく里を出まーす」

「はい、エクレアは修行ね。学校で習った連絡は忘れずにね」

「はーい(後、で調べるか……)」って感じとは凄い違い。そして未だに、調べてなかった……。


 しかし蝶々が隣の受付まで飛んでいき、それを見た隣りの受付嬢さんには、彼は睨まれていたので彼、独自のサービスだったかもしれない。


 ヨークさんは隣の彼女に少し、照れ笑いと肩をすくめる仕草をしただけで、すぐにこちらに向き直りにこにことした笑顔で住民カード改め、ギルドカードと魔術師向けの本を手渡してくれる。


「カードの裏に記載されるような呪文はすべて、こちらに詳しく掲載されていますので、くれぐれもいきなり街中で新しい魔法を試さないでくださいね」と、またもや怖い事を言うので、少し慌てる。


「もちろんですよ」どんな魔術師がいきなり街なかで、魔法を試すの? もしかしてこちらも前例があるのかなか? 

 

「そうですよね。後衛の皆さんそういう面はしっかりしてらっしゃいますからね……」


 彼はしみじみ言うが、前衛の戦士たちの話しかぁ~。うんまぁ、そうだよね……。


「後、毎朝ギルドに顔を出して、いただけますと場所はランダムでございますが、こちらで依頼した熟練冒険者さんをリーダーとして結構大人数で合同でクエストなどございます。結構ハードなのですが、ソロから参加もご気軽にできますし、普段は行けないクエストについての知識が付くほか、気の合った仲間でパーティー組む手助けにもなるので、是非ご参加を。……こちらは普通のパーティーと違いヒーラーが居ない場合は、私ども事務員が治療いたします。しかし重体や死んでしまったりする場合もございます。その為、合同クエスト専用の保険に加入する事をお勧めします。掛け捨てですが、一年の保険の期間は継続されますよ。だいたいランチ分のお値段でご利用になれます」


 そう言って彼はその保険の加入用紙を出し、渡してくれた。


「なるほど……転ばぬ先の杖ですね。ありがとうございます。検討してみます!」そう言って思わず、力を込めて言ったら、ヨークさん今度は笑うのをこらえているような顔になっていた。


 私のお礼に対しての、ヨークさんの「ありがとうございました」の声に頭を下げてつつ、歩きだそうとすると壁の時計は正午過ぎを示していた。食事時の時間になっていたからか、ナナミの姿はもうなかった。


 少し心細くなったが、私のお腹はくぅ~と鳴り、お腹がすいたって気持ちの方が強くなる。


 ギルドのレストランので食事をしてみよう! 何があるかな? と、行くと「お疲れ様ですした~」そう言いながら、マリーネちゃんは私を席に案内をした。


 彼女は美味しそな料理の名前の並んだメニューと、今日のお勧めの書かれた厚紙、そしてお水を置いて「どうでした? 初ギルドは」と聞いた。

  

「思った以上にいろいろと、至れり尽くせりで驚きました」


「良かった~、時々説明が長いって言って怒りだす冒険者さんがいるんですよ。でも、エクレア様には喜んでいただけて良かったです。では、メニューがお決まりならお呼びください」そう言って彼女は次の仕事へ向かった。


 魔女の住処では考えられない、スピードですべてが進んでいっている。新しい顔見知りに胸が少しあったかくなる。


 今日のお勧めのミートパイとウエルカムドリンクで林檎ソーダーを頼む。

 

 マリーネちゃんが「うちの料理はどれも美味しいですよ」って言っただけあって、パイは、お肉も玉ねぎやニンジンもしっかり入っていてソースも深みがあってサクサクで、食べ応えがあって美味しい。林檎ソーダーには、魔法使いの素敵な魔法の味がした。


 どれも美味しく、どれも見栄えがいい、不格好さをそれでも愛した魔法使いの居場所からはやはりちょっと遠くなってしまったようだ。


 続く


見てくださりありがとうございます!


またどこかで~。

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