パンの耳の宴
私の泊まっている宿屋のリビングルームで、今も、もぐもぐとパンの耳を食べている私たち。
私が持ってきた大皿の上のパンの耳は無くなろうとしていた。
「食べながらだけど、ここでは人が来ないようです。そして管理人も先ほ昼食へ行ってしまいました。誰も居ない今なら詳しいそれぞれの話も出来ます。おおまかな戦闘方法を決める上でも、武器や魔法についての自己紹介を改めてしていくべきだと思います。なので、まずは僕から自己紹介を。僕は今現在のジョブはヒーラーです。事実上の聖女と同等だと考えてください」
「聖女って男の人でもなれるものなんですか?」
私は大皿の上のパンの耳を1つ、つまみ取り聞く。先ほどから姿を変えていなかった小さなやまから絵皿の野菜の絵がやっと姿を覗かせた。
「それについては僕も良くわからない。啓示と言うべきか天啓言った方がいいのか、ある日、雲の隙間からさす光が僕の身を包んだ。そして空を見上げると、そこには虹が僕からほど近い山にかかり、あった」
「それって……」
「そうだです。俗に聖女の出現の際に起こるとされている。2つの現象が僕の前に起こり、僕自身の資質であった黒魔術の力が一切がっさい消失してしまったのです」
さすがにその事については立ち直れないのか、ルシアは頭を抱え、机に平伏してしまった。
「だから教会の総本山の国、ライートールカヒへ向かう目的で旅立ち、法王様への謁見も叶った。しかしなにやら称えられ、祝福をされはした。しかし聖女については修道院で引き継がれているらしく、そして門外不出で、聖女つまり僕がいかねば認定はおろか、その秘密を知る事は難しいようですが……入れないのでそこで事実を知るための希望はついえました。黒魔術がふたたび戻るのかや、聖女の秘術も今回の旅では知る事は叶わず。しかしライートールカヒにて、伝承や伝説の本を片っ端から調べ上げた記録と、『人を蘇らせる事も可能なほど素晴らしい』と言う法王の評価でほぼ間違いないだろうというの僕が出した結論です。けど……そもそも聖女の力自体、国王の資質として、僕はそれほど評価していないし、求めていない。敵を攻撃し、うち砕く力、僕にもともと備わっていた力こそ必要だったのに……」
「そんなルシアに、僕と勇敢な騎士が付いて行ったけど、今回の旅で騎士様に途中で裏切られちゃった。ルシアの新しい継母はとても綺麗な人だしね。しょうがないかもね~。彼女、シェリルはとても魅力的な人だもの。しかし僕も一緒に片付けようとしていたようで、一緒に来ることになってしまったけど、そのお陰で無事だったんだよね~」
そう話す2人から、心の疲労みたいなものを感じた。彼らは現実に疲れ、そしてこれから新しい生活を始めなければいけない。順応性の高い子どもでもきつい事だろう。
「ではとりあえず私たちは、貴方の国へ着くまでの護衛ですか? さすがに王族関係者に弓を引くのは……」
「それは僕らにも難しい事です。彼女はイグリオンからやって来た姫君で、この国の人物でも、僕の国ラクアノールでもおいそれと、手を出すことの出来ない存在なんだ。現在の王とは母親が違うらしいけどそれしかわからない。僕のおばが、継母のシェリルと交換でイグリオンに嫁いでいるから、そこから詳しく聞ければって所だったんだけどねー。今回の事がですべての計画がくるってしまった。そんなところかな? 僕の話は」
「では、僕の番だね」そう言ってピエネッタちゃんは胸に手をやり立ち上がる。
「僕はピエネッタ、フルキォールの貴族の娘で影武者として剣術も剣を投げる腕も鍛えられて、レイピアのナックルガードで魔物を殴る事も出来る。ただ力が弱い。魔法を乗せるけど、魔法の効かない強靭な敵には僕は全然歯が立たないよ! 覚えておいて」
そう言ってピエネッタちゃんは聡神さんと私のおよそ中間を指さし言った。
「次が俺か」ピエネッタちゃんのリアクションには触れず、聡神さんが立ち上がったので、彼女は目を見開いてルシアの方が見るが、彼はもう聡神さんの話を聞く姿勢になっていた。今度は彼女は、こっちを見たのでわかる! わかるよ! って感じ小さくうなずくと彼女はパァァーッと笑顔になる。
「俺は刀を使い、遠隔な攻撃は出来ない……以上だ」
彼は凄くあっさり終わった。そして私の番だ。
「私は新米の黒魔術師で、三年だけここで冒険者をやったら、ラクアノールの魔女の住処へ行きます。そしてふたたび師匠との修行再開でするので、その時はおふたりともよろしくお願いします。そんなわけで新米なのです。樫の木の杖で攻撃も出来るけど、やはりそれは最終手段と習っているので期待しないでください。黒魔術も基本程度と言いたいのですが、私の里での初歩の魔法学習と師匠がまず得意を伸ばす系だったので、魔法の習得速度をまわりとてらし合わせる事が出来てなくって……」
「じゃールシアに習えば? ルシアは聖女の魔法に目覚める前は、魔法剣士目指していたから基本の知識は、いやもっとたくさんかな? きっとためになるよ!」
そうピエネッタちゃんは、笑ったり、ちょっと考える様に口元に手を置き左上を見つめたり、その表情をサイコロの目の様にころころ変える。
「それは全然だめな事だよ。お師匠様が居る方を僕は教えらない。彼らには魔法の使う時の様に思い描いている、魔法を使うエクレアの姿がある。その途中である彼女に、異質な僕は混ざれないと思うなぁー」
「でも、学校では先生は変わる事が普通だよ」
「それは枠組みと教科書も決まっているから、何をやるかの指標は、決まってるからって事で良くないかい?」
「それならギルドカードの裏面の魔法は独自学習するんだよー。そこはどんな解釈するのさー?」
「うん、どうだろうね。そういうのも勉強する取り組み方の構築も、彼女の師匠は今の修行と捉えているのかも?」
「そうかな?」
「どうだろう?」
ルシアとピエネッタちゃんはコソコソと、二人で話している。そいうところってなんだか猫会議ぽい。猫だけで集まって独自の言語で話しているけど、まわりの人間は何話してるんだろう……と、目で追うとこちらには普通ににゃーんしか言わない。私にもなんか普通に話しかけて貰いたいなぁーと思っちゃう感じの猫ぽい会議。
「そう深く考えずとも教えたかったら、教えればいいだろう。同じパーティーという仲間なのだから」
「ほらねぇー」「それでいいのでしょうでしょうか?」
「大丈夫だ。エクレアを信じろ」
「えっ?あぁ、大丈夫。私と師匠を信じてください。特に師匠をですが」
「……そうだね。では、気になった事があればお伝えしますよ」
「はい! 私を信じてどんどん言って来てください」
「ところで、僕たち丁度前衛2、後衛2で理想的なパーティの組み合わせだね。今日の午後のクエスト頑張ろうね!」
――うん?
「ピエネッタちゃん、私たちまだ、クエストは受けてないよ」
彼女は口もとに手をやり少し考える。
「えっ? そうだっけ?」
「うん。ジョブとかの相談やどの程度の敵を目指すとか、こうやってすり合わせしないと危ないからね。ピエネッタも同じ前衛として聡神さんとの打ち合わせとかないの?」
「最初の切り込みは私がやろう」そう、落ち着いた声で聡神さんは言う。最初の切り込みは下手をすると、他の魔物を巻き込む事がある。だから複数の攻撃をかわせる手札の多い人物がなる。
「お願いしまーす。終わった!」
そう言って彼女は立ち上がった。今にもギルドへ走って行ってしまいそうな勢いで。
「「本当にそれでいいの!?」と、私とルシアは彼女に突っ込んだ。そしてもうそろそろパンの耳の完食もそろそろ。
「では、これ一人ずつ食べたらクエストを受けに行こうか」
こうしてうちの寄せ集めのパーティーの、パンの耳の昼の部の宴は終わった。
続く
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またどこかで~。




