表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

アーサーの葛藤

ーー月が高く昇った夜更け。

静まり返った訓練場の隅に、ひとり剣を振るう青年の姿があった。


「……アーサー。少しいいか?」


父の突然の来訪に、アーサーはすぐさま振り返った


「どうかされましたか、父上。」


「……セレナ様が、宮殿を抜け出した。」


ジークの言葉に、アーサーの表情が一瞬で変わる。


「一体どこに...」


「それははまだ分かっていない。だが、アルフと話してこの件はお前に任せることにした。」


「……俺に?」


「あぁ。王宮内であの娘が1番心を許していたのはお前だったからな」


「ですが...」

アーサーの瞳は大きく揺れていた。

ジークはそんな息子の反応を見逃さなかった。


「無理に連れ戻せとは言わん。だが、あの娘を放ってはおけん。お前なら……あの子の心に寄り添えるはずだ。」


アーサーは深くうなずき、捜索の準備をするために部屋を出た。

だが、心は嵐のように揺れていた。


◆◆◆


夜の街へ馬を走らせながら、アーサーの胸の中には幼い頃の記憶が渦巻いていた。


――ねえ、アーサー。外の世界って、どんなところだと思う?


自分にそう問いかけるセレフィーナの瞳はどこまでも透き通っていて輝いていた。


(あの頃から、あの人はずっと外を見ていた。城の外にある世界を、知りたがっていた……。)


だが今の自分は「追う者」であり、命を受けた「騎士」だ。

それでも胸の中に芽生えた葛藤は、簡単には拭えない。


(もし――俺が連れ戻すことが、あの人を傷つけるのだとしたら……)


アーサーは歯を食いしばった。


(……守りたい。セレフィーのすべてを。)


それが、彼が騎士を志した理由。

父のような英雄ではなく、彼女だけの盾になると決めた日から、変わっていない

登場人物紹介

ジークフリート

近衛騎士団の団長で勝てる者はいないと言われるほどの実力を持っている。戦争では1人で勝利したことがあるため国内では国の英雄と呼ばれているが他国からは恐れられている存在。

アルフォンスが唯一深い信頼をおいている者


アーサー

ジークの息子

5歳のとき、王宮で初めて顔合わせをした時にセレフィーナに一目惚れした。父が英雄なため、幼い頃から周囲から多くの期待を寄せられ、それが嫌で騎士になることに積極的ではなかったが、セレフィーナと出会ってからは命を狙われやすい立場にいるセレフィーナを守るために騎士になって父の後を継ぐことを決意する。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ