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女尊男卑

これは小説習作です。とある本を開き、ランダムに3ワード指差して、三題噺してみました。

随時更新して行きます。

【お断り】「明日、田、火」の三題噺です。


(以下、本文)


【1】


オレの妻は、いい妻だ。でも、悪い時はゾッとする。


出会って二日で口説いてきたのは妻の方だ。


「あなたの明日をちょうだい。その代わり私の明日をあげる。」


押しの強い女は何人も見てきたが、こんなに図々しいのは初めてだった。そこにクラッときた。

オレの方はと言えば、デート三日目で岩盤規制に穴を開け、異次元のおしりあいになる積もりでいたんだが。


妻が岩盤どころか惑星でも吹き飛ばしかねない女だと気がついたのは、結婚後二週間目のことだった。

(さすがに一週間くらいは自粛していたらしい。)


妻は、ある時は実りの神。

オレのタネを田んぼのように受け入れて、子どもを何人も産み育ててくれた。


ある時は、火のように全てを焼き尽くす破壊の神。


バクチも酒も、オレはいつの間にか止めていた。妻に脅された訳でも泣きつかれた訳でもない。きっと火であぶるように、ゆっくりとオレの尻を叩いてくれたんだろう、「早く大人になれ」と。


ただ、浮気がバレた時は別だった。

あの時は本当に焼き殺されるかと思った。

古女房たちの良く聞く言い草、「浮気するなら、してもいいから、バレないように、やってくれ」はウソだと思った。

バレないようにって、あのかわいい私立探偵たちの尾行を、どうやって振り切ればいいと言うのか。

袋叩きにされた浮気相手をかわいそうとは思わないが、オレがかわいそうじゃないか。


今、目の前にいるのは妻の顔をした死に神だ。

オレは、まだこうやって生きてきるのに、医者は「ご臨終です」と言い捨てて、サッサと病室から出て行った。

妻はオレの口に水を流し込んで溺死させる積もりだ。気管に水が流れ込むのは死ぬよりツラい。


その時、またしても誰かがオレの手をちぎれるほど引っ張った。上の方から引っ張った。

見れば、コスプレの天使みたいなカッコした妻だ。


「さあ、サッサと私の股の間に入っちまいな。」


思い出した。オレはフェリーが転覆して溺死したんだった。


【2】


オレは父の顔も祖父の顔も知らない。男が早死にする家系なんだ。

オレは母親の稼ぎで養われ、大学まで行かせてもらえた。

オレをおんぶに抱っこして、粉ミルクを飲ませ、背中を叩いてゲップさせ、おしめを換えてくれたのは祖母だ。

姉が三人いる。みんな大学に進学した。上の姉は公務員。その下のは医者。三人目はアメリカに留学して、向こうで結婚した。

独身を貫いた伯母が、オレたち姉弟の学資を援助してくれた。金は出すが口も出す伯母で、姉たちもオレも「勉強しろ、勉強しろ」と、散々追い回された。

父親が三人いて、母親も三人いるような家だ。男尊女卑の逆バージョンだった。


かく言うオレの子、三人とも女だ。

妻は、まず理路整然トウトウとオレを言い負かして、それから怒りを爆発させるタイプだった。本を読み漁るのが趣味だが、なぜかフェミニズムには全く目をむけなかった。

欲しいものは、みな手に入れ、散々もてあそんで、飽きたら捨てる。そういう人生に満足していたからだ。


良く「明治時代の家父長制が云々」と耳にするが、旧民法では女も戸主になれた事をあんまり言わないのは、一体なぜなんだろう?

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