夜のダイヤモンドと永遠の絆
「俺らはどんな事があっても、ずーっと一緒な!」
そう言って彼は僕に笑いかけた。
あの日見た君の笑顔がもう見れなくなるなんて思いもしなかった。
君からもらったこの耳飾り。
片耳にいつも身につけている。
もう片方の飾りは僕の部屋の奥深くに眠っている。
本当は君が持っていたこの耳飾り。
埋め込まれた宝石は暗闇の中でも美しく輝いている。
この宝石のように、いや、それ以上の輝きを放つ君の笑顔がまた見たい。
この願いが叶えばいいのに。
毎日のように君のことを考える。
君なしじゃ生きていけない。
神様、もしも存在するのなら、わがままな僕の願いを叶えてくれませんか?
僕は今日も星に向かって願いを唱える。
もしかしたら叶うかもしれないって思うから。
ほんの少しの可能性にかけて、僕は今日も星に願う。
神に願う。
また僕に君の輝く笑顔を見してよ。
また一緒に笑いあいたい。
あの日、君と別れた時。
君は
「ばいばい。」
と言ったね。
君の目はとても寂しそうで、もう僕とは会わないことを知ってたんだよね。
いつもは
「またね。」
って言って別れるのに。
なんで僕はあそこで気づくことができなかったんだろう。
こんなにそばにいたのに。
君がいじめを受けてて、ずっと苦しんでいたことに。
自ら命を絶ってしまうほどに苦しんでいたんでしょ?
もし、願いが叶って君にまた会えたのなら、言わせてほしい。
「ごめんね。」
と。
今度こそ君を心の底から笑わせてみせるから。
君が心の底から幸せって思えるまで、それまでずっとそばにいるから。
今度こそ手放したりなんてしない。
君を幸せにするまではぜったいに。
こんな情けない僕でごめんね。
だから、もう一度、僕にチャンスをくれませんか?
また僕のもとに戻ってきてくれませんか?
僕は今日も星を見つめる。
君と別れてもう一年が経った。
今日も僕は願う。
その日は三日月だった。
次の日。
今日も暗い気持ちで学校に行く。
君がいない世界で生きていたって何にも楽しくない。
楽しいと感じることができない。
心のなかにぽっかりと穴があいてしまったよう。
教室の窓から見える校庭をぼんやりと見下ろす。
最近は頭もろくに働かない。
僕はボーッとしていることが多くなった。
窓の外を見ていると教室がいきなり騒がしくなる。
何かあったのだろうか。
少しだけ気になって目線を窓の外から移した。
どうやら転校生が来たらしい。
見間違いだろうか。
僕の視界にはもう会うことができないはずの君が居た。
特徴的なその髪色、瞳。
その雰囲気。
僕は君だと確信した。
もう会うことのできないはずの君が目の前にいる。
君ではないとわかっていても、それでも君なのではないかと期待してしまう。
名前は違ったけれど、それでも君なんだと思った。
神様、これが夢ならもう少しだけ眠らせたままにしてください。
もう少しだけこの幸せを噛み締めたい。
ああ、これが現実だったらよかったのに。
僕はそう思いながら頬をつねった。
「いてっ。」
僕の口から言葉がこぼれた。
あれ、痛みを感じる。
これは夢じゃないの?
「大丈夫?」
そのとき、懐かしい声が、聞き覚えのある声が僕に話しかけてきた。
僕は声のした方向を向いた。
そこには君が居た。
いつからいたのだろうか。
考え事をしていて気が付かなかった。
君の顔を見て、これが夢じゃないとわかって、僕は何を考えたのだろうか。
無意識のうちにの僕の頬を何粒もの雫がつたっていた。
君はそんな僕を見て不思議そうにしていた。
いきなり泣き出したら、そりゃ不思議に思うよね。
これでも一応初対面だもんね。
「えと、よろしく。」
僕は雫を拭き取ると君に挨拶をした。
「おう、よろしくな。」
君は笑顔で僕に返した。
その笑顔を見るのはいつぶりだろうか。
今度こそ、君の笑顔を守ってみせるから。
君が転校してきてから一週間。
あのときのように君とまた仲良くなりたくて、僕は君と仲良くなるために努力をした。
こんな必死になったのはいつぶりだろうか。
君は僕を狂わせる。
やっぱり僕にとって君はなくてはならない存在。
君がいなくなってから、改めて君の存在の偉大さに気付かされた。
まだ一週間しか経っていないのに、もう君がいない生活なんて考えられない。
これからもこの幸せが続いてほしい。
もう失いたくない。
なんでこんなにも無邪気に笑う君がいじめられなくてはならなかったのだろう。
あのときのように僕たちは仲良くなることができた。
今日も君と放課後に遊ぶ約束をした。
君は笑顔で了承してくれたよね。
どんなときでも、君は僕に希望の光を照らし続けてくれる。
君が現れてから僕の人生はまたひかりに包まれた。
暗闇から救い出してくれた。
君には感謝することしかないや。
待ち合わせ場所は僕たちが初めてであったあの場所。
すずらんがきれいに花を咲かせるあの場所。
僕と君、二人だけの秘密の場所。
僕は部屋の奥に眠っていたもう片方の耳飾りを手に取り、大切にポケットにしまう。
待ち合わせ場所へと向かうと君はすでに来ていた。
君はなんだか深刻そうな表情をしていた。
君は僕に気がつくとこちらへと駆け寄って抱きついてくる。
「忘れててごめん。」
君は震えた声で言った。
君に涙は似合わない。
「僕の方こそごめん。」
僕は君を抱き返すと、君の頬をつたう雫を拭き取った。
それでもまた君の頬を雫がつたう。
僕はもう一度雫を拭き取ると、ポケットに大切にしまっていた耳飾りを取り出した。
そして君の耳に取り付けた。
君の頬がどんどん雫で濡れていく。
僕は君に抱きついた。
もう離したくない。
君のことを。
「これからは僕が君のことを幸せにするから。これから、いや、永遠に。」
僕も震えた声で呟くと、君のことを改めて強く抱きしめた。
僕たちの絆は誰にも引き裂くことができない、かたいもの。
ぜったいに引き裂かれたりなんてしない。
そばでは僕たちのことを見守るかのように美しいすずらんが花を咲かせていた。