ヒーローになれたなら
僕は個性のない人間だ。
個性のない人間だからこそ
幼稚園生の頃はヒーローや主人公に憧れた。
憧れたのにも関わらず、嘘をつき、人を騙し見栄を張ることが何時の間にか日常にに変わっていた。
「人生なんてどうしても上手くいかない」なんて
努力と呼べるものさえしていないのに。
諦めたふりして何処か助けを欲していた。
そんな中で君と出会えた、奇跡だと思った。
何者でもない僕を君は
「凄いね!ヒーローみたいでかっこいいよ!」って言ってくれた。
曇天で灰色の景色だった世界に僕をくれた!
枯れたピノキオの花に太陽の光が咲いた!
何度も遊んだよ、ゲームをしたり、ままごとをしたり
家族じゃないのに家族に慣れた気がした。
小学生で無邪気にランドセルを背負って走り回っていた君を見て、幼稚園生だった僕に強い憧れを抱かせるには充分だった。
だけど、忘れてしまっていた。
自分が何者でもなく、ただ矮小だった事に。
小学生になればそれが顕著に出てしまっていた。
周りにからかわれ、君と居るのが段々何故だか、恥ずかしいことに思うようになってしまっていた。
そう思うようになってからは時が流れるのは早過ぎた。
遊びの誘いを何度も断ってしまい、君に何度も寂しい想いをさせてしまった。
それが、自分の自信過剰だったなら本当に良かった。
7月8日 中学2年生だった君はこの世界からいなくなってしまった、後悔しかなかった。
虐待、性暴力にイジメ 授けられず冷めた家族の愛情。
あの時、君の誘いを断らなければ。
何度も思考が巡った、だけど現実は残酷だった。
当たり前だ、自分の選択肢の結果がこれだ。
あの時君が言ってくれた言葉の意味も
全て気が付くのには遅すぎた、ヒーローの成り方がわからなく、ヒーローのなり損ないの僕は13階君が世界をたったあの場所から飛んでみた。