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ウチのギルドマスターが可愛すぎる! ~一流ギルドから不当に追放されたら超弱小ギルドにスカウトされたので、ちょっと復活させてみます~  作者: 抑止旗ベル
3章 イオランテ暗躍編

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28話 【魔力増幅】

「よし、そろそろ俺も行ってくる」


 エデンはイスから立ち上がり、同じく室内にいたロートとアイシャに向かって言う。

 あれから数時間が経ち、王都にはもう夜の帳が降りている。

 二人とも戻ってきていないので首尾は上々のようだ。


「ロート、アイシャのことを頼む」

「はい、任せてください」

「アイシャもロートの言うことをちゃんと聞くんだぞ?」

「うん、わかってる」

「あまり夜更かししないようにな。俺たちの帰りが遅くなるようだったら先に寝てていいから。それと――」

「もう、アイシャはそんなに子供じゃないよ?」

「……ああ、そうだな。悪かった」


 子供扱いされたことを不服がって頬を膨らませるアイシャを見て、エデンは思う。

 出会ったのはつい最近なのに、アイシャはこの短期間で見違えるように凛々しくなった。

 初めて会った時の弱々しさはもう彼女からは感じられない。

 それがどうしようもなく嬉しかった。


「気を付けてね? 無理しないでいいからね?」

「大丈夫だって」


 エデンは親身に心配してくれるアイシャの頭を優しく撫でた。

 彼女のサラサラの黒髪が指の間をすり抜けていく。


「もぅ、エデンってば……恥ずかしいよ……」

「ごめんごめん。じゃ、行ってくるから」


 二人に見送られて家を出たエデンは、人通りの少ない夜の通りを足早に進む。

 【イオランテ】との軋轢を解決するためには戦闘が必要になるかもしれない。

 望ましいことではないが、自ら撒いた種なのだから責任は取らなければならないだろう。

 人を助けるためとはいえ、【エル・プルート】の人間として喧嘩を売ったのだから。

 だから――


『シヨウシャ。思案中のところすみませんがちょっとよろしいですか?』


 そこで唐突に、エデンの脳内で【括弧】の声が響く。


「おぉ、括弧どうした?」

『ソウダンガアリマス。アイシャ嬢が首から下げている赤い宝石。あれを一度【魔究空間】に取り込んで鑑定させてください』

「なんだ、お前もヴァイスたちみたいにオシャレしたいのか?」

『チ、チガイマス。まだ不確定ですが【括弧】の魔力検知によると、あれは龍結晶の可能性が高いです。それもかなり高濃度の』

「……何だ? その龍結晶っていうのは」

『モジドオリ。龍の魔力が結晶化して質量を持った状態です。現状、魔力がそういった形になる条件は分かっておらず、かつ龍種自体がとても希少なため、この物質が人目に触れる機会は殆どないと言っていいでしょう』

「へぇ、あれってそんなに珍しい物なのか。確かに普通の宝石とはちょっと違うよな」

『ホンダイハココカラデス。よく聞いてください。高濃度の魔力を含有している龍結晶は【魔力増幅】(ネイクリアス)という、既に禁術指定を受けている魔術の発動に必要な素材なのです』

「聞いたことのない魔法だな」

『セツメイシマス。【魔力増幅】(ネイクリアス)という魔術は、龍結晶の中に滞留している高濃度の魔力を周囲に与える魔術なのです。龍の魔力は人間のモノとは比べ物にならないほど強力で、その性質上、魔術への理解が浅い人間でも圧倒的な力を持つことができます』

「アイシャがそれを使っていると? だけど、アイシャはまだ魔法は使えないはずだ」

『アノマジュツハ。発動に特定の動作等が必要ありません、龍結晶の魔力が身体に馴染めば、その時点で『発動中』ということになります」

「だが【イオランテ】と戦った時は、相手の火力が増してるようには感じなかったぞ?」

「ハイ。使用者の感覚は正しいです、【魔力増幅】(ネイクリアス)の対象は発動者が選別することができます。推測ではありますが、魔術を起動している自覚がないアイシャ嬢の場合、単純に、自分が嫌悪感を抱いていない相手に自動で魔力を譲渡している状態かと』

「ふぅん、なるほどな……」


 括弧の説明を聞いて、エデンはこれまでのことを思い返す。

 初めてアイシャに会った路地裏で信じられない規模の【種火生成】が発動したあの日から、ずっと気になってはいた。

 普段は二、三本しか飛ばせないホウキを九本も浮かせることができ、大木を一瞬で切り刻むことができ、なにより――

 莫大な魔力を消費するという触れ込みの括弧を――こうも容易く扱えている。


「そうか。ずっとアイシャを守ってるつもりだったけど、助けられていたのは俺の方だったのか」

『オタガイサマ。だと思いますよ。使用者がアイシャ嬢を救って、アイシャ嬢は使用者を救っているわけですから。自分が本来何の役にも立たないダメ人間だからと言って落ち込むことはありません』

「そんな深刻に捉えてないわ。お前は俺をどれだけ自己評価が低い人間だと思ってるんだ」

『チガイマスカ? 【括弧】はこの事実を告げたら使用者がショックを受けるかと思っていたのですが』

「いや、別に自分が急成長したなんて思ってなかったし、理由が分かって安心したよ。けどさ、禁術ってことは……これ以上使い続けるわけにはいかないんだよな?」

『ハイ。その認識で問題ありません。あの龍結晶はアイシャ嬢から遠ざけておくべきです』

「でもあれ、おじいちゃんから貰った物らしいから気に入ってるんだよなぁ……うん。まあとにかく、帰ったらすぐアイシャに話すよ。教えてくれてありがとうな」


 エデンが感謝を述べると、【括弧】は謙遜するかのように言う。


『レイニハオヨビマセン。しかし、どうしてもと言うのであれば【魔究空間】(エクリプス)に何着かお洋服を保管してください。ヴァイス嬢が着ていたようなドレスがいいです』

「やっぱファッションに興味あるよなお前……魔法がオシャレしてどうするんだよ。そもそも着れないだろ?」

『キレマス。必要がないから実行しないだけで、その気になれば【括弧】も魔力で人型を形成することができます』

「その魔力は誰が出すんだ?」

『モチロン。使用者です。いえ、より正確に表すならアイシャ嬢でしょうか?』

「…………」

『ナンデスカ。そのうんざりしたような沈黙は。【括弧】だって頑張ってるんです。言われた通りに毎日ポーションを生成しているんですよ? ご褒美があってもいいでしょう?』

「はいはい、いつもありがとう。ヴァイスも喜んでたから考えとくよ」

『イイカタガキニクワナイデス。もっとちゃんと検討してください』

「分かったって。お金も魔力も小さい女の子に貰ってて悪かったな。もう着くから切るぞ」

『イヤイヤ。【括弧】はそこまで言っていませんよ!? やっぱり気にしてますよね!? 怒っているなら謝りますから――』


 プツン。

 そこで【括弧】の声は途切れる。

 このまま会話を続けていたら服だけでなくアクセサリーまで買わされそうだ。


「はぁ、まったくもう…………あれ、待てよ」


 括弧からの情報を脳内で整理してみたところ、エデンはある問題に思い至る。

 アイシャの【魔力増幅】(ネイクリアス)による底上げが無くなれば、魔力が足りなくて【魔究空間】(エクリプス)を発動することもできなくなる。

 そうなれば当然、括弧ともお別れになるわけで――


(あー……括弧が言ってた、伝えたらショックを受けるかもっていうのはこっちだったのか? だとしたら、まあ……確かに嫌だよなぁ、それは)


 つくづく悩みの種が尽きないエデンは、複雑な心境で第六通りへ向かうのだった。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

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