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ウチのギルドマスターが可愛すぎる! ~一流ギルドから不当に追放されたら超弱小ギルドにスカウトされたので、ちょっと復活させてみます~  作者: 抑止旗ベル
3章 イオランテ暗躍編

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外伝 テオ・ジュピトリスとイオランテー1

 それは、ちょうどエデンが単独で第六通りの調査を行っていた頃。

 時を同じくして。

【テオ・ジュピトリス】の正門前で――カインは三人の仲間に向けて説明する。


「今回の俺たちの仕事は、王都の目を盗んで汚ねぇ商売をしている奴らを摘発することだ。本来俺たちがやる必要もない仕事だが、他の奴らが調査を進めていくうちに予想以上に規模の大きい問題であることが発覚した。だから俺たちが引き継ぐわけだ。何か質問は?」

「はーい! 一体どこのどいつがそんな悪戯をしてるんですかぁ?」

「だからそれを探りに行くんだよマリー、話聞いてたか?」

「冗談だって。でも私たちに任されるってことは数人のグループとかじゃなくて、もっと大所帯ってことでしょ? どっかが組織ぐるみでやってたりするんじゃない?」

「まあそうかもな。報告によると場所は第五、第六、第七通りにまで絞られてる」

「だったら【イオランテ】だよ! あそこならやってもおかしくない! セラとバラクもそう思うよね?」

「こら、そうやってむやみに疑っちゃダメでしょ」

「あはは、僕からは何とも」


 セラはマリーを諭し、バラクは笑って曖昧な反応を見せた。

 面倒くさそうに、カインは話を本筋へと戻す。


「とにかく、さっさと仕事に取り掛かるぞ。今から手分けして情報を集めに行く。万が一の場合、マリーは戦えないから誰かと一緒に行動しろ」

「じゃあ私はバラクと行くー! 新メンバーと親睦を深めたいから!」

「お選びいただき光栄だよ」

「じゃ、それぞれ調査して夜に互いの結果を報告するぞ。解散だ」


 ※


「調査って言われても……なにすればいいんだろう」


 正体を隠すためにフードを深く被ったセラは、目を光らせながら第六通りに佇んでいる。

 彼女の担当は第六通りに割り当てられ、カインは第五通り。マリーたちは第七通りに向かった。

 既に数時間が経過しているが、未だに情報は掴めていない。


(マズいかも。やっぱり商店の近くに身を潜めて、盗み聞きで有益な情報を得るっていうのは失敗だったかなぁ)


 セラが自らの作戦について後悔していると、すぐ近くの商店に人がやってきた。

 その見覚えのある声と顔にセラは驚く。


(エ、エデン!? どうしてこんなところに……そっか、まだ王都から帰れてないんだ。そうだよね、お金とか色々大変だろうし……私に持ち合わせがあれば良かったんだけど)


 だが、エデンがいる商店はネックレスやブレスレットのようなアクセサリー類と、帽子や仮面のようなアイテムをメインで売っているお店だった。

 そんなところに何の用事だろうかと、セラはつい聞き耳を立てる。


「あの、ちょっといいですか? この近くに【イオランテ】っていうギルドがありますよね、そこについて、もしよかったらお話を――」

「冷やかしなら結構。ウチで買い物しないならさっさと他に行ってくれ」

「あ……すみません。じゃあ、宝石が付いてるのは高そうだから……この仮面をください」

「あいよ、値段はそこに書いてある通りね」

「えっ、こんなにするんですか!? この仮面が?」

「有名な先生のデザインなんだ。別に無理して買ってくれなくてもいい」

「ああいえ……買います」

「まいど。確かに金は受け取ったぜ」

「あの、それでさっきの話の続きですけど」

「俺は忙しいんだ。世間話をしてる時間はねえよ」

「ちょ、そんな……買ったら相手をしてくれる感じだったじゃないですか」

「ほら、もう買わないなら行った行った」

「……失礼します」


 意地の悪い商人に誑かされ、趣味の悪い仮面を持ってトボトボと歩き去るエデン。


(うぅ、エデンも相変わらず苦労してるなぁ。適当に一番安そうなヤツを選んだんだろうけど……ていうかあれって、向こうも何か探っている雰囲気だったよね? ちょっと追いかけて挨拶を――)


「ったく、あの客はどこから嗅ぎつけたんだか、こりゃ俺たちのことがバレるのも時間の問題だな。大商人さんに相談しねえと……」


(あー……ごめんエデン。行けない理由ができちゃった。もしかするとマリーの言ってた通りになるかも……)


 エデンを追おうとしたセラだったが、商人が漏らした独り言を聞いて足を踏み出すのをやめ、彼女は再び気配を消した。


   ※


 王都の夜。とある酒場のテーブルを囲んで四人の冒険者が座っていた。

 現在、セラの調査報告の最中である。


「――で、第六通りの商店を統括してる『大商人』っていう人がいて、あそこはその人の意向でだいぶ危ない商売をしているみたいだね。表で確認できただけでもボッタクリみたいなことをしてたし、多分、裏じゃもっとあくどいことをやってるよ」

「セラすごーい! スパイみたーい! 私たちなんて荷物をめちゃくちゃ持たされてるメイドさんを見かけただけなのにー!」

「うん、たった一日でそこまでわかっちゃうなんてすごいと思うよ」

「ま、お前にしちゃ上出来だな、セラ」


 報告を聞いたカインは満足そうに頷いて腕を組んだ。

 自分の名声に関わる仕事がスムーズに進むことが喜ばしいのだろう。


「あとはその大商人とやらを捕まえて話を聞けばいい。居場所の情報は?」

「あの辺りじゃ有名な人だから住所はすぐに分かったけど、最近は殆ど家にいないみたい」

「なるほどな。そう簡単に姿は見せないって訳か」

「ね、ねぇカイン、一旦ギルドに戻らない? 私がこの情報を聞いたのは【イオランテ】と関係がありそうな商店だよ? 下手したらあそこまでこの件に関わってるかもしれないし、一度、途中経過を報告した方が……」

「必要ねえ。目の前に大元がいるならそこを叩けばいいだけの話だ。仮にお前の言う通りだとしても、相手がまだこっちに気付いてないならチャンスじゃねえか」

「いえーい、カイン大胆ー。さんせーい」

「マリーまでそんなことを……バ、バラクはどう思う?」

「うーん、僕はどちらかというと、はんた――」

「誰が何と言おうと関係ねえ。方針を決めるのは俺だ」

「――うん、そうだね。じゃあ僕もリーダーに賛成。そうだ、明日全員で第六通りを探ってみようよ。人が増えればもっと有力な情報も見つかるかもしれないしさ」


(……なんか、変)

 にこやかに同意するバラクを見て、セラは少し違和感を覚えた。

 賛成とは思っていないはずなのに、話し合いもせずこうも易々と意見を変えるなんて。

 セラは出会った当初から感じていることだが、バラクは異常なまでに落ち着いている。

 それは強者の余裕とは少し違っていて、言葉にするなら――そう、まるで他人事のような立ち振る舞いなのだ。

(カインがパーティに加えるってことは実力はあるんだろうけど、なんか打ち解けられないなぁ……心の壁があるっていうか、うーん、エデンたちとは違う感じ……)


ここまで読んでいただきありがとうございました!

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