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ウチのギルドマスターが可愛すぎる! ~一流ギルドから不当に追放されたら超弱小ギルドにスカウトされたので、ちょっと復活させてみます~  作者: 抑止旗ベル
3章 イオランテ暗躍編

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23話 ギルドのご近所事情

 太陽の柔らかな日差しが降り注ぐ中、【エル・プルート】が本拠地を構える通りにて。


「おはようございま――」

「おー! 来たか兄ちゃん!」


 と、午前中とは思えない声量で挨拶をしてくれたのは、ギルドの改修を行ってくれている大工のリーダー「ブラオ」である。

 その大きな体格同様、豪快な性格をしている壮年の男性だ。


「アイシャちゃんも一緒か!」

「はひ……お、おはようございますブラオさん」


 ブラオの声により、まだ眠たげだったアイシャも一気に目が覚めたらしい。

 スヤスヤと気持ち良さそうに寝ていたので連れて来るつもりはなかったのだが、出発する直前に起きて事情を知り、「アイシャも行く」と言って聞かなかったため、彼女の意思を尊重して同伴してもらっている。


「ロートから聞きました。俺たちに相談があるって……」

「そうなんだよ。立ち話もなんだからな。詳しくは中で話そう」


 ブラオに言われるがまま二人も建物へと入り、一階のギルドスペース――そのテーブルの一つに腰を下ろした。

 二階へと続く階段など、ここから見える箇所だけでも以前より更に手が加えられて洗練されている。


「見ての通り工事は順調だ。二階の家具も必要最低限ではあるが揃えられるだろうぜ」

「ブラオさん、本当にありがとうございます」

「いいんだよ。それより本題に入ろう。兄ちゃんは、ここがどんな場所に建ってるか知ってるか?」

「あー……まあ、あまり治安は良くないですよね」


 少なくともアイシャを一人で出歩かせられないくらいには警戒が必要な場所だ。


「でも、今はエデンが一緒にいてくれるから平気だよ?」

「頼りにしてくれてありがとう。だけどここがギルドとして活動する場合、依頼に来る街の人はそういうわけにはいかないだろ?」

「あ、そっか。ギルドに行きたいけど怖いトラブルに巻き込まれたくなくて、誰も【エル・プルート】に来てくれないかもしれないってこと?」

「そういうことですよね、ブラオさん?」

「ああ、冒険者が大勢集まればそれが抑止力になってチンピラも減るだろうが、今はまだそんな規模じゃねえからな。何か対策を練る必要があるってわけだ」

「はい。アイシャにいい考えがあります」


 ブラオの話を聞いたアイシャは、ピンと右手を挙げて提案する。


「この辺りの悪い人たちを、みんな【エル・プルート】の仲間にするのはどうですか?」

「うーん、アイシャちゃんらしい良いアイデアだとは思うんだが、そうなると元チンピラだらけの物騒なギルドになっちまうし、そんな大人数を雇うだけの資金はあるのか?」

「ないです……」


 しょんぼりと肩を落とすアイシャ。

 実現すれば一番素敵なアイデアはあるものの、現状では選べない選択だ。


「なんとかして共存する方法を考えないといけないですよね」

「おうよ、相談したかったのはそこだ兄ちゃん。もしかするとそれを両立する方法があるかもしれないんだ」

「どういうことです?」

「いいか? まず、このギルドは王都第七通りの外れにあるわけだ。で、ここからしばらく行くと第七通り。俺やヴァイスが店を構えてる場所だな。だから当然、逆の方向には第六通りがあって――そこには【イオランテ】のギルドがある」

「【イオランテ】ですか……」


 僅かに、エデンとアイシャの顔に緊張が浮かぶ。


「ぶっちゃけた話、ただのチンピラなら大して怖くねえ。【エル・プルート】の人間が強いって噂が広まればそう簡単にはちょっかいを掛けてこないだろう。だが、この辺りは【イオランテ】に世話になってる輩が割といるからなぁ。いざこざが起きないとも限らねえ」

「なるほど、だとするとやはり【イオランテ】との関係は清算しておいた方がいいですね」

「だが話し合いが通じる相手じゃねえぞ。ギルドをデカくするために裏でコソコソ良くねぇ商売をしてるって噂もある。だから最近は王都にも目を付けられてるらしい」

「じゃあ、その暗躍の証拠みたいな物があれば【イオランテ】を失脚させることができるわけですか?」

「そりゃそうだが、噂程度の尻尾しか出しちゃいないから難しいだろうな。いっそ正面からぶつかってどっちが『上』か分からせてやんな、ガハハ!」

「あはは、それは流石に……」


 選んだら一発でゲームオーバーになる選択肢だよなぁ、とエデンは苦笑いを浮かべる。

 彼らが裏でやっている商売というのは、メナトが色々と買わされたアレも含んでいるだろう。それ自体は氷山の一角に過ぎないかもしれないが、やはり噂が真実味を帯びてくる。


「つまり状況を整理すると――」

「はい、アイシャに今度こそいい考えがあります」


 そこで再びアイシャが挙手した。

 なにやら自信ありげな様子だ。


「【イオランテ】の商人さんと接触して、その大元に辿り着いて悪事の証拠を掴む。それを王都に提出すれば、この辺りにいる【イオランテ】の息が掛かった人たちも後ろ盾を失う。そうすればアイシャたちのギルドに悪さをしようと思う人も減る。だからアイシャたちはこれから、その糸口になる商人さんを探す必要がある。ですね?」

「……うん、完璧」


 ギルドマスターなだけあって、幼いのに見事な状況把握を見せるアイシャ。

 彼女が状況を整理してくれたので、エデンは特に言うべきことがなくなってしまった。


ここまで読んでいただきありがとうございました!

★5をいただけると作者の励みになりますので、もしよろしければぜひ!


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