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ウチのギルドマスターが可愛すぎる! ~一流ギルドから不当に追放されたら超弱小ギルドにスカウトされたので、ちょっと復活させてみます~  作者: 抑止旗ベル
2章 メイド襲来編

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16話 前パーティとバッタリ会う

 そして時系列は再び現在へと戻る。

 エデンが目覚めた翌日、彼とアイシャは【テオ・ジュピトリス】の前に立っていた。

 本日の目的は人材の確保である。

 ギルドの受付などを担当する職員に、クエストを解決するための冒険者。どちらも現状は不足している。

 そのため今朝の作戦会議にて――


「アイシャ、どっかオススメある?」

「うーんとね、他のギルドの近く。ギルドには困っている人がたくさん来るから、お仕事を探している人も見つかるかも」

「いいね、じゃあそうしようか」

「できるだけ人が多いところがいいと思う。【テオ・ジュピトリス】とか」

「あー……【テオ・ジュピトリス】かぁ」

「どうしたの?」

「なんでもない。確かに規模は大きい方がいいもんな。うん、行こう」


 ――という感じでこの場所が選ばれた次第だ。

 ヴァイスたちの商店からしばらく歩いてちょうど正午になる頃、二人は【テオ・ジュピトリス】へ到着した。

直近でああいう事件があったエデンにとっては複雑な思いが募る場所だ。

 やはり王都直属のギルドというだけあって、その外観は豪勢の一言。

 いくつもの建物が連なってまるで王宮のような構造になっており、正面玄関の前には大きな案内板が設置されていた。


「おっきいね」

「ああ、予想以上だ。中に入って様子を見たいけど……俺たちは他所のギルドの人間だからダメなんだっけ?」

「ううん。【テオ・ジュピトリス】はどんな人でも入っていいの。とっても優しい、来るもの拒まずのスタイルで王都一のギルドになったんだよ」

「へぇ……」


 そんな寛容なところだったのかぁ意外。そんな気持ちが内心に芽生える。

 なにせエデンが出会った【テオ・ジュピトリス】のメンバーは三人中二人が問題アリだったわけで。


(カインがいないといいけどな……)


 正面の大きな門を潜り抜け、エデンたちはギルドの敷地へと足を踏み入れる。

 青々とした木々が立ち並ぶ庭園のような場所を抜け、案内板に「本館」と書かれていた敷地内で最も目立つ建物へと入った。


「【テオ・ジュピトリス】へようこそ! クエストの依頼なら右の受付。クエストの受注なら左の受付へどうぞ! お食事は南館。ご宿泊は北館でございます!」

「あ、ど、どうも……」


 入場するなり、入り口に立っていた制服姿の女性から流暢に案内を受けた。

 館内は多くの人間でごった返しているので迷わないためだろう。有名なギルドだからこそ見られる光景だった。


「どうするアイシャ? まずクエストボードを見て、仕事を探してる人を探すか?」

「ふふ、探してる人を探すってなんか面白いね」


 と、そんなアイシャの可愛らしい言葉をかき消すような大声が――突然館内に響いた。


「そんな……話が違います!」

「違うって何がだ? ロッキー?」

「カインさんがパーティに加入しないかと誘ってくれたから、僕は前のギルドをやめてここに来たんじゃないですか!」

「ああ? 確かに言ったけどさぁ」 


 その声を聞いて、エデンは心がざわついた。

 人ごみをかき分け、騒ぎを遠巻きに見れる場所まで進んでいく。

 片方は聞き覚えのある声だった。

 騒ぎの中心にいたのは一人の青年と――やはりカイン。その横にはマリーとセラもいる。


「別に一生とは言ってねえだろ? そりゃいつかはこうやって別れる時が来るさ」

「そんな屁理屈……!」

「カインひっどーい! それならもっと早く教えてあげてよぉ」


 俯いて無言を貫くセラとは対照的に、マリーは不敵な笑みを見せる。


「ぼ、僕はちゃんと役割を全うしていました! 実力だって十分あるはず……!」

「あーもうめんどくせえな。分かったよ、本当のことを教えてやる。お前自体は及第点だったけど、お前よりも優秀な人間が見つかったんだよ」

「なっ……!?」

「同じ役割でよりハイレベルな人間がいるならそっちの方が良いに決まってる。お前だって元のギルドよりこっちが良いと思ったから来たんだ。そうだろう?」

「ぐっ……このっ!」


 カインに殴りかかろうとした青年の腕は、人混みから現れた長身の男によって掴まれた。

 そして、男はそのまま青年の腕を背中に回して締め上げる。


「いたっ……!」

「やれやれ、姿を見せたくはなかったんだけどね。君もどんな奴に自分の席を奪われたか知っちゃうと、余計に傷つくだろ?」

「あ、あなたが僕の代わりなんですか……」

「バラクだ。以後よろしく――まあ、このギルドでまた会うことがあればの話だけどね」


 そう言って人当たりの良さそうな笑顔を浮かべるバラクからは、何やら底知れないオーラが漏れ出ている。

 どこにも本意が無いような雰囲気は――まるで仮面を被っているかのようだった。


「よくやったなバラク。流石だ」

「これくらいリーダーのためならお安い御用だとも」

「ハッ、いいねぇ。よし、もう行くぞ。道を開けろ!」


 カインの叫びによって人だかりは地割れのように真っ二つになり、出口までのルートが形成された。


「今抱えてる仕事は肩慣らしにもならねえだろうが、まあいい、準備ができ次第、さっさと陰気な商売人を捕まえに行くぞ」

「いぇい、カイン頼もしいー」

「じゃあそういうわけだから、我々は失礼するよ」


 先頭を歩くカインにマリーがついて行き、青年から手を離したバラクがそれに続く。三人が出ていった後、そこから更に遅れて――


「ご、ごめんねロッキー。これ少ないけど使って。……本当にごめんなさい。周りの皆様にもご迷惑お掛けしました」


 と、セラが何度も頭を下げてギルドを後にした事で、人々は少しずつ活気を取り戻した。

 青年に声を掛けて元気づけている冒険者もいる。実力自体は折り紙付きということなら、彼にはもっと良いパーティが見つかるはずだ。

 だが。


「…………」


 許せないな。

 俺の時と同じような事を繰り返して、あれでずっとうまくいくはずなんてないのに――


「……エデン? 怖い顔してる……」

「あっ……」


 ぎゅっと手を握られた感触とアイシャの声で我に返ると、彼女は心配そうにこちらを見つめていた。


「だいじょうぶ?」

「ああ、大丈夫だよ。不安にさせてごめんな。……なあアイシャ、あんな騒ぎの後じゃ人を勧誘しづらいし、ここじゃなくてどっか他の場所で探そうか」


ここまで読んでいただきありがとうございました!

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