14話 絶賛ギルド改装中ー2
「おぉ……」
壮観だった。
生まれ変わったギルド内には、見渡す限りに真新しいテーブルやイスが並んでいる。
カウンターやクエストボードは元のままだが、磨かれて格段に綺麗になっていた。
「半分はクエスト受付用のカウンターで、もう半分は食事や宿泊用。でも今はまだ人手が足りないから、ヴァイスの要望でね、当分は冒険用の商品を売るスペースとして使うの」
「あれ以上働いて大丈夫かアイツ……ところでさ、言うタイミングを逃しちゃったから今になってしまうんだけど」
エデンはそこで、もう一つ大きな変化が起こっていた存在に目を向けて言った。
「アイシャ、その服どうしたんだ?」
エデンが視線を移したのはアイシャである。
以前は黒のラフなワンピースだったが、今は白を基調とした何やらお高そうなヒラヒラの服を纏っていた。
アイシャがずっと身に付けている赤い宝石も今の彼女の可憐さに張り合おうとしているのか、その輝きは以前より増しているように思える。
その姿はまるで貴族のご令嬢のような雰囲気で、ギルドマスターとしても不足はない。
「これはね、お洋服屋さんの人にプレゼントしてもらったの。どう? に、似合ってる?」
「ああ、すごく可愛いと思う」
「そう? えへ、えへへ……」
アイシャは顔を赤くしてニコニコしている。
やっぱり女の子は服にこだわりがあるんだなぁ、とエデンが何気なく心の中で思っていると、
『ハァ。こうも鈍い使用者を持った【括弧】は不幸です。アイシャ嬢は服ではなく使用者が褒めてくれたことに対して喜んで――』とかなんとか聞こえてきたが、とある事情により交信を中断した。
ギルドの外から何やら深刻そうな話し声が聞こえるのだ。
「ロート、そりゃ本当か?」
「はい。近隣の森で問題があったらしくて、しばらくは木材の調達ができないと」
「そいつは困る。まだ二階は完成してねえってのに」
外に出てみると、通りの通路沿いでブラオとロートが話し込んでいた。
ヴァイスが言っていた通り、やはり木材のことで困っているらしい。
「アイシャ、ちょっとここで待っててくれ」
「……? うん、わかった」
エデンは会話に加わるべく二人の元へ向かう。
「あの、ブラオさん、もしかして木が足りないんですか?」
「おお兄ちゃんか、そうなんだよ。俺らがいても肝心の材料がなきゃ工事が進まねえ」
「だったらコレ使ってください」
そう言って、エデンは【魔究空間】を開いて保管していた木材を取り出す。
せっかく調達したのだからあるだけ出してしまおうと、空間内の木材を全て出し切った。
「う、病み上がりだと結構キツいな」
ギルド前のスペースが積まれた木材の山で埋まってしまい――ブラオたちはそれを見てあんぐりと口を開ける。
「なんだこりゃ、どっから出てきた……? 見てたかロート?」
「いえ、ブラオさんが分からないなら僕にも……」
「おい兄ちゃん、何が起こったかは分からねえが……この木、全部使っていいんだな?」
「もちろんです。修繕してもらっている身ですから、これくらいのお手伝いはしないと」
それを聞いたブラオはニヤリと笑った。
「ようし! だったら最高の建物に仕上げてやる! おい、準備はいいかお前ら!」
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