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6頁目 在日宇宙人マトリョーシカ

今回のカウンセリングは、会社で産業カウンセリングを受けた後に個人的なカウンセリングを受けた。


メインテーマは、ありのままの自分で生きる事。


私が嘘をつき、ありのままの自分を出す事ができないのは、アスペルガー故に「変だと思われたくない」「劣っていると思われたくない」という思いを持って育ってきたからでもあるが、それよりも根深い問題がある。


虐待と、それによるアダルトチルドレン化。

もっと言えば、インナーチャイルド(大人の中に住んでいる子どもの部分)が傷ついた為である。


とはいえ、私は虐待を受けた実感があまり無い。

カウンセリングを受け始めてから8年位迄は、悲劇のヒロインぶって「なんて可哀そうな私!」(だから私に構ってほしいし私を見て!)という考えを引きずって来たが、毒親関連の漫画や本に出てくるような、壮絶な扱いを受けた覚えは無い。


父親から暴力があったのも、記憶の中では2回位。

まあそれすら普通の家庭ではあり得ない事なのだが、「2回って不幸ぶるのにはビミョーだよな」とどこかで私は思っていた。


「正直、何で殴られたか覚えてないんですよねぇ。時期は多分、中学生か高校生。あまりにもすごんで怒って殴ってくるから、『殴るの早く終わらないかなぁ……』って思ってました。でも殴られた反動で私が壁に当たって、当時の私にしては結構気に入っていたゲーム雑誌の付録のポスターが破けちゃって。『代わりを弁償べんしょうしてくれるわけでもないのに、勘弁かんべんしてくれよ……』とぼんやり考えてたのを覚えています。」


「それは……虐待を受けていないと言いますが、それは立派な虐待です。貴女あなたのお父さんからは暴力を、お母さんからは言葉の暴力を受けています。それに、普通の人は親から殴られて、ぼんやり関係ない事を考えたりしませんよ。貴女あなたが覚えていないだけで、ずっと殴られて育っているからでしょう。」


「んー……、そうなのかぁ……」


正直本気で覚えていないのだが、考えてみれば自分の気に入らない事があるとすごむ父が、そんなに怒りをコントロールできるとは思えない。

彼もまた発達障害を持っている疑いがあり、統合失調症をわずらっていて、亡き祖母が「コレステロールの薬だ」と父をだまして飲ませていたような状態の人間だ。


「今更なんですけど、父が統合失調症ってことは、私もなりやすいんですか?遺伝するって聞いたんですけど。」


「……統合失調症は、子供よりも孫なんかに症状が出ることが多いですね。血が薄くなると、不思議と発症する子供が産まれやすくなるんです。」


それを聞いて、私は少し安心した。

現状でもしんどいのに、更に統合失調症になってしまったらやってられない。


貴女あなたはそんな家族から離れる為に、本当はもっと真剣に仕事に取り組まないといけない状況なんですよ。できないことを、できると嘘ついている場合じゃないんです。トラブルを少なくする為に、現状をもっと把握して仕事に取り組まないと。貴女あなたのお父さんとお母さんは、貴女あなたが帰ってきたら喜ぶでしょうね!今までの事は全部忘れて「家族で住みたい」と言いながら、ほとぼりが冷めたら自分の言うことを聞かそうと圧力をかけるんです。……カウンセリングを通じて、貴女あなたが見て見ぬふりをしている「やらなければならない仕事」をやらないと駄目ですよ。」


とはいえ、簡単にやる気が出るわけもない。

だから私は、やる気が出ないなりの自分の気持ちを、なんとかカウンセラーに伝える。


以前は、カウンセラーの言う前向きな言葉に「はい!やってみます!」と言わないと、治療という名目で話を聞いてもらえないと思って嘘をつき続けていた。

だがその結果、効果的な治療ができず、カウンセリングを始めてから10年もの時間が経ってしまった。


──そう現在では思えるものの、今でも無意識に嘘をついてしまうのだが。


「そう言われても、前向きにはなれません。私、本当に何もやりたくないんだなって実感したんです。現実逃避になることばかり考えているし、被害者の側として見られてよしよしってして欲しいといつでも考えてしまってます。家に帰りたくないけど、先生にカウンセリングを続けてもらって構い続けてほしい。真面目にカウンセリングをするつもりはないんです。いつでも、良いとこどりをしたくて、できないとすごく嫌な気持ちになる。」


カウンセラーに言葉を引き出され、私は何とか自分の思いを吐き出した。


「それは、貴女あなたの中の2,3歳の貴女あなたが、暴れているからです。家族に大切にされたことの無い貴女あなたは、大きくなっても子供の時の貴女あなたに振り回されているんです。小さい貴女あなたは、今でも「私を見て!」「私を大切にして!」と言っていますよ。それは、貴女あなたのお母さんが貴女あなたの幼少期に大切にしてこなかったからです。」


そう言われて、私は納得した。


「私が人の言うことを素直に聞けない時、私は相手に親を見ているんですね。そんな接し方を変えることができれば、私はもっとできることが増える……」


「何も私は、すぐに変われと言うわけじゃないんです。そこも貴女あなたは、親とのいびつなコミュニケーションのために、思い込みで反応してしまいがちです。ゆっくり、自分のペースで変わっていきましょう。」


「はい。」


こうして、今回のカウンセリングは終了した。

ここ数回のカウンセリングは、自分の嫌な部分と向き合う内容が多く、かなりしんどいのだが、確実によりよく変わっていっているのが実感できる。


結局、自分が変わらなければ人生は好転しないのだ。

でも自分で変化を起こせない私は、このカウンセラーに力を貸してもらえてつくづく良かったと感謝してきている。

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