第9話 激戦②
「はぁ、私に刃向かうからこうなるんですよ。さて、王女殿下貴方を連れて行きますよ」
「い、いや。嫌よ!貴方の言いなりになんてならない!」
そう言って私は走って逃げ出した。
「早く追いかけろ!殺してでもいいから、連れてこい!」
「「「っは!!!」」」
私は無我夢中で逃げた。村の外に向かって全速力で。
それ故に、集中力がなく、私はその場で転んでしまった。
「あっ!」
後ろからは騎士たちが追ってきていた。もうだめだ。と諦めかけた次の瞬間!
迫ってきた騎士たちがその場で倒れたのだ。
「お嬢ちゃん、大丈夫か?」
誰かは分からなかった。そこに立っていたのは、黒い服で全身を覆った男だった。
助けてくれたと言うことは、いい人だろうと私は、思った。しかし、次の発言を聞いて、私はさらに絶望した。
「おい、お前ら。とっとと、この村強奪するぞ。金目のものは奪い、女は奴隷として売る。それ以外は自由に殺せ!」
この人は、私を助けたのではなかった。私を売り物にしようとしているのだった。ここで私は気がついた。この人達の正体が盗賊だということに。
私はその場から、急いで逃げていった。しかし、
「おい、お前は売り物なんだ。逃げんじゃねー」
そして、手錠をさせられた。この時、私は運命を呪った。
なぜ私がこんな目にならなければならないのか。
目の前に起こっているのは、まさしく地獄。この村は、もともと小規模で、警備の人が少ない。
多くの人が、私の見ている中で、殺されていった。
もう逃げられない。救いようもない。私はこの1日で、二度も絶望した。もう生きていく気力もない。
私はここで死ぬことを決意した。
その時だった。目の前にフードを被った男と、女が現れた。
「これは、何が起こったんだろうね?」
「そーですねー。盗賊にでも襲われたのかと」
「あーそれは災難だ。まぁ、僕たちに関係…」
「あります。ししょー、やっちゃってください」
「そこはイウリがやってよ。僕はもうクタクタで」
「さっきまで、魔法で飛んでいた人が何言ってるんですか。もう、わかりました。私が行ってきます」
「うん、頑張ってー」
それは、呑気な会話だった。目の前の地獄の光景のようなものがありながら、このような、会話をする人
を私は、初めてみたかもしれない。
そんなのを見ていると、話していた男の方の人がやってきて、
「あれ、君…どこかであった?」
これは私に尋ねているのかと理解するのに数秒かかったが、首を振った。
すると、
「あ、そうなの?似てたから驚いちゃった」
と言った。そして、私はその次にかけられた言葉を生涯一生忘れない。
「君は……」
そこで、私の回想は終わった。
私は静かに目を開く。辺りを見渡すと、私の魔法によって、木々や花達は氷に覆われていた。
「剣聖は!」
そう呟いて、私は生存確認を魔法で確認する。
あたりには、敵意を持つものはおろか、生存反応すらなかった。
これが私の最大の魔法である、絶対零度の魔法。この魔法においては、ほぼ全てのものが無に帰す。
一部例外もあるけど。
「よかった。これでお師匠様に褒めてもらえ…」
そこで私の意識は飛び、私はその場に倒れた。
彼女が倒れてから少し経った、どうやら彼女は、力尽きたようだった。
やれやれと言う思いで、儂は近くづく。
「嬢ちゃんは中々の強者だったわい。まだ伸び代があると思うと恐ろしいのう。全く、まだ若くて羨ましいわい。」
「強者というのは、貴方もですよね?」
と、儂の頭上から声がかかる。
儂はすかさず上を向く、そこには、若い青年のような姿をした者が木の上にいた。
しかし、気配でわかる。肌を粟出さずにはいられない。そう彼こそが、絶対にして、最強。この世の頂点に立つ存在。
『天災』が目の前に現れたのだった。
「これはこれは、お久しぶりですね。『天災』様。先ほどのお嬢さんは、孫ですか?」
「少し違うぞ。彼女は弟子だ。全く、久しぶりだな。坊主」
「坊主とは、、、まぁ、あなた様からすれば坊主ですかな」
「うむ、この世で我と同等の者などいないからな。我から見れば、皆童よ」
儂は静かに頷いた。すると『天災』は尋ねる。
「して、この地を訪れた理由を聞こう」
「いえ、最後にあなた様にお礼を申し上げ用と思いまして」
「お礼だと?」
「もう何十年も昔になりますが、あなた様に助けていただいた者です」
「礼などよい、我にとってはただの罪滅ぼしなのだから」
「それでもです。あなた様にお礼を申し上げる為にここまで来たのですから」
「…そうか、ならば一つだけ願いを叶えてやろう」
「願いですか。そうですね。儂はもう先は短い。なので、最後にあなた様を一戦、交わりたいと思います」
「…よかろう」
「ありがとうございます。最後に名乗らせてください。儂は、、、いや、俺は『剣聖』ライン・アストラル。この一戦にすべてをかける」そう言って、握っている剣を深く握る。
「我が名は『天災』ゼクト。来るがよい」
そう言って、剣を召喚する。その姿は神々しい。
「いざ、参る!」
と、意気込んだものの、決着はすぐについた。
儂は渾身の一撃である居合斬りを放った。
そして、ゼクト様はそれを避けずに受けた。甲高い金属音とともに、儂の剣が押し込まれる。
この技を受けたものは、誰も受けきれていないと言う事実を胸に、儂は勝利を確信した。
しかし、
「ふむ、良い技だ。一つに全てが込められていて、素晴らしい。けれど、、、」
そう言って、剣同士が激突している中、急に手を離したのだ。
「!?」
儂は一瞬驚きはしたが、そのまま押し込んだ。ゼクト様の剣が飛ぶ、しかしこの後、予想だにもしなかったことが起きたのだ。
ゼクト様は予測していたかのように儂の一撃を避け、なおかつ、吹き飛ばされた剣の位置を完璧に計算して、反対の手でつかんだのだ。そして、反撃に出た。
儂は渾身の一撃を放ったせいで、一瞬だけ隙ができた。
そこを狙われたのだ。
やれやれ、本当に世界は広い。だが、最後に貴方と交えられたこと、名誉とさせてもらいましょう。そう思いながら、儂は散っていた。