第2話 楽観
「ししょー、今日はどんな魔法をつくってるんですかー」
「ん?あーいまはね。快適な睡眠ができるようになるための魔法かな」
「ししょーは、いつも気持ち良さそうに寝てるし、いらないでしょ、そんな魔法」
「まぁ、あって損になる魔法はないからね」
「いやあるでしょー。この前作ってた魔法をかけた物をなんでも二つに折る魔法とか」
「いや、あれも使う時はあるよ。まだ作ってから一回も使ったことないけど」
「……」
僕が現在いる場所は、家の地下3階にある魔法の実験室だ。
そもそも僕達の家は地下5階から、地上2階までの合わせて7階建てだ。
元々は地上7階建てだったのだけど、聳え立っていて目立つと思った為、僕の魔法で地下に沈めた。
主に、僕たちは地下3階の研究室から、地上1階のベランダがあるところまでを使って、あとは、倉庫がわりにしている。
「そーいえばししょー、今日は美味しそうなイノシシがいましたよ」
「ん?おーいいね。しっかり血抜きはした?」
「はい、今吊るしてます」
「と、言うことは今日はイノシシ鍋か」
「そうですね。けれど残念なことに野菜のストックがありません」
「!?なんだって…」
「と言うことで、ししょー!魔法で近くの町まで行って買ってきてください」
「えーめんどい、、、イウリも転移魔法使えるんだから、イウリが行ってきてよー」
「ししょー、今日の分だけでいいですから。それに、たまには陽の光を浴びることも必要ですよ」
「いや、昨日昼寝の時にベランダで寝たから日光浴びたし」
「いやいや、この辺り日光なんて魔法の霧で遮られてるじゃないですか!」
「え?違うよ。僕がつくった人口太陽の光だよ」
「あれ光ってるだけで影響ないじゃないですか!ただの発光物ですよ!」
あー、ここは霧が濃すぎて、太陽の光が遮られているから僕が新たに太陽を魔法で作ったんだっけ。まぁ、作物とかには影響を与えられないけれど、それをただの発光物とは…
やれやれ、あー言えばこー言うっていうのはこれか。
「ししょー、早く買ってこないと私、今日イノシシ鍋作りませんよ」
「わかりましたよ。行ってくる」
「はい、わかってもらえて何よりです。お気をつけて」
「ういうーい」
僕はそう答えて、変化の魔法と転移魔法を発動する。
「変装はこれでよしっと。じゃー行くか」
『転移。ガルタム。』
ガルタムは、僕たちが住んでいる場所から一週間くらいかけて歩くとある、王国の都市だ。
都市なだけあって、物の流通が良い。各地から色々集まったものが集まる。
「それにしても、本当にここには沢山の人がいるよなぁ。人混み多すぎて吐きそうだもん」
そう呟いて、馴染みの店に入る。
「お!兄ちゃん久しぶり。生きてたかー」急に奥から声が聞こえてきた。
「やあーおばちゃん。僕みたいなヒョロガリは美味しくなさそうであんまり魔物に狙われないんだよね」
「はっはー、ちがいねー」
その声の主はいつも野菜を売ってくれてるおばちゃんだった。
あと、僕はここでは、魔物退治を職業にする仕事をしているお兄さんと言う設定にしている。
魔物とはいわゆる、人間に害をなるもの達、全てに値する。だから先ほどイウリが言っていたイノシシも魔物の類だ。
「それで、今日は何を買いにきたんだい?」
「今日はね。鍋にしようと思ってるから、その具材をね」
「わかった。じゃーこれとこれとこれとこれと…」
とおばちゃんは、慣れた手つきで袋の中に野菜を入れる。いつもお世話になってます。
「はいこれで、4000ね」
「うーん、前来た時よりも値段上がってない?」
「そうなんだよ。地方でまた戦争が起こったらしいからね。安定して卸せないんだ。だから悪いけど値引きは無しだ」
「ほーん。なるほどなるほど。いーよ。ありがとー」
「このような事態の時に『天災』様がいてくれればねー。こんなことないんだろうけれど」
「おばちゃん、『天災』はたしかにすごいけど、人間の手で制御できるものじゃないよ」
「確かにねー。正しく天からの災いだからねー」
「そうそう。じゃーおばちゃんありがと。またね」
「はい。またよろしゅー。」
そう言っておばちゃんと別れ、僕は街角を曲がる。
『転移。自宅。』
そう言って、僕は光に包まれた。
光が薄まっていって、目を開けると、イウリが待っている自宅に帰ってきた。
「ふーついたついた」
「ししょー、おかえりなさい。買えましたか?」
「おー買えたぞ。ここに置いておく」
「はい、ありがとーございます」
そういってイウリは僕の買ってきた食材を魔法庫に入れる。
「あ、そーいえば、なんかまた王国の地方で戦争してるらしいぞ」
「へー。そーなんですか。でも私たちにあまり関係ありませんよね」
「それで値段が高騰してたぞ。結構関係あるんじゃないか?」
「ししょー、今お金いくらくらい持ってるんでしたっけ?」
「ん?世界各地の国の通貨を一つの国で両替したら……全財産は10の20乗くらいあるかな。」
「それぐらいあれば、高騰したところであまり関係ないと思いますが……」
「でもできることなら節約したいじゃん」
「まぁ、その気持ちはありますが…」
「尽きることはないと思うけど、、、まぁ、必要になったら僕が作るし」
「偽造通貨は犯罪ですよ!」
「大丈夫大丈夫。バレなきゃ罪に問われないから(ニコッ」
「そーゆー問題じゃないんですけど!!」
イウリは怒った顔でツッコミを入れる。
僕はまぁまぁ、と宥めながら言う。
「まぁ、そもそも僕を取り締まることなんてできないしさ」
「…そうですね。ししょーは『天災』ですもんね。」
そう僕の二つ名は『天災』。
昔々、一つの国が国々を束ねようと、とある国が神に助力を得ようとした。
けれど、神々は人の世界に干渉してはならないとして、その助力の申し出を蹴った。
しかし、騒乱の時代に入っていくと、神が干渉しなければ崩壊する寸前の状態にまで陥った。
それを止めるべく、国同士の戦いから、国々が協力してとある一つの厄災を倒す方向へと思念誘導した。
その厄災が僕である。それが僕の二つ名『天災』の由来だ。
僕は人間ではあるが、創世神によって力が備わった者だ。人々は僕を最悪と称えるようになり、僕に牙を剥いた。もちろん始めは僕は創世神を恨んだ。しかし、とある条件を飲んでもらうこと条件に僕は創世神を許し、厄災になった。
その後騒乱の時代が無事過ぎ、国々は分裂していった。その後何千年にもかけて伝わる『天災』の逸話を残して。
「はぁ、今日も眠い」