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美形Hunter  作者: 神隠し
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第二話【アタシと学校】

ドクンドクンと心臓が暴れ回り逃げ場を求めて口から出そうになる。


アタシは教室の前の扉を穴があくほどに凝視していた。

やがて扉はカラカラと音を起てて開き扉から中年のスーツを着たハゲが現れた。


……現れたのはハゲだけだった。


視界を360度まで拡げ10メートル先まで透視をしてみても、

いやそんな事は出来ないけれども、とにかくいたのはハゲ担任だけであった。


アタシはがっくりとうなだれた。計何回目の失望だろうか?

美少年もしくは美少女転校生はお約束の筈なのにアタシは15年間一度も出会った事が無い。


ハゲはホームルームで抜き打ちテストが明日行われる事と家庭科の先生が産休に入った事を告げ教室から出て行った。


「ヒナリン!、なんでそんなに平然としてんだよ。

そんなんじゃ地球が滅亡しかけたとしても緑茶とかをゆっくりと飲んでそうだな」


ホームルームが終わった後、すぐにアタシは話かけられた。

中性的でセーラー服が《月の女子高生戦士》より似合っているコイツに。


「そんな事無いわ!アタシは珈琲の方が好きだもの。

それにこう見えてもアタシ落ち込んでいるのよ?」


コイツは全く分かっていない。

アタシが毎日美少年もしくは美少女転校生に出会えなくどれ程嘆いているのか。

それに珈琲の味わいも……。


「やっぱりショックだよな。抜き打ちとかありえないっての」


「は?テストの事?そんなのどーでもいいわよ!」


本当にどーでもいい。過去の忌むべき産物のせいで学力だけは無駄にあるのだから。


世の中で最も重要なのは容姿なのだという宇宙の真理に気づく前のアタシはバカだった。

学力を磨けば幸せになれると思い込んでいて勉強に明け暮れ徹夜もザラで日々の平均睡眠時間は45分ていどだったと思う。

その時の産物としてアタシには無駄な学力とパンダのようなクマがある。


「テストだぞ?どうでもいいわけあるか!」


コイツはアタシの頭をスパコーンと叩いてきた。

微妙に痛いし、鬱陶しい。


「ああ……そうだったよな。ヒナリンには一般生徒の苦労なんか分からないよな」


「そりゃアタシは天才だからね」


嫌味に対しては嫌味で答える。

目には目、歯には歯、が相応しい。


ハンムラビ法典は昔の法律ながら今の時代でも見習うべき所がある。

勿論法典にも身分差による不平等はあったが、それは時代柄仕方がないとも言える。


「そっか、ヒナリン様は天才だったよな! だから……オレに勉強を教えてくれないか?」


ここまでの開き直りは逆に素晴らしく思えた。意地より実を取る。

コイツは社会に出ればどこまでも通用しそうな人材だ。


それにアタシとしても美少女に勉強を教えるという構図は望む所だ。

キレイな女性は同性から見ても目の保養になる……しかし。


「アタシは美男子でも美少女でも受け入れられるけどオカマだけは無理なのよ。

なんかイメージからして気持ち悪いわよ」


「は!?オレのどこがオカマだってんだよ?」


「鏡を見てからもう一回そのセリフ吐いて欲しい物だわ。

どこの世界にセーラー服で登校してくるノーマルな殿方いるっていうのかしら?」


そこで、うっ…とコイツは言葉に詰まる。

当然のことである。今コイツが鏡を見れば美しいセーラー服姿の自分が映るのだから。


「し、仕方ないじゃないか!」


「確かに仕方ないわよね。ユウコはアブノーマルなんだから」


「違うてぇの!!それにオレの名前はユウマだよ!」


八木原悠真(やぎはらゆうま

それがコイツの本名だ。


「恥ずかしがる事ないわよ。立派な趣味じゃない」


ユウマは顔を真っ赤にしながら地団太を踏む。可愛い。半端無く可愛らしい。

これがオカマだと思うと萎えるのだが見た目だけなら80点越えは堅い。

本当に勿体無いものだ。


「だからぁ、違うってんだ!ヒナリンは知ってる筈だろ?」


ええ、勿論知っている。

知っていてからかっているのだ……可愛いから。


ユウマの両親のモットーは≪家には娘しかいない!息子はいらない!≫なのだ。

多少の同情はするがアタシ自身も被害者だ。

三次元の希少種である美少年がこの世から一人消えたわけだから世界恐慌並みの大打撃である。


「はいはい、そんなに怒らないで。今度勉強みてあげるから」


「おっ、マジでいいのか?ラッキー」


なんという切り替えの早さ。本当にユウマは社会で成功するタイプだ。

意地やプライドより実を取る……だからこそ両親の言うがまま女装させられてるのだろう。

アタシは尊敬半分呆れ半分の眼差しでユウマを眺めていた。


    □

        □


学校から家に帰ってすぐにアタシは≪アタシ専用の部屋≫の前に向かった。

それからポケットにある黒みがかっている銀色の鍵を取り出し開錠し魔法円が描かれている部屋に入った。


この部屋には≪パンドラの箱≫や≪禁断の間≫という異称もあるのだが実際はある目的の為の実験研究部屋だった。ある目的とは≪二次元へ行く事≫だ。


なにせ三次元(よのなかには美形が少なくアタシの御眼鏡に適うのはクラスに一人だけだった。

しかもその一人が昔馴染のオカマちゃんではもうどうしようもない。

三次元(よのなかの美形エンカウント率に呆れて理想郷ユートピアに行こうとするのもごく自然の流れなのだ。


初めは空間のゆがみを利用しワープで二次元に行こうとしたが現実の壁にぶち当たってしまった。


次に神隠しを利用して二次元に行けないだろうかと考えて青森県の天狗岳に行ったりもしたが徒労だった。


その後に魔法円を利用した召還を考えたのだ。

アセイミーという黒柄のナイフで直径9フィートの二重円を描き、ふたつの円の間の帯状のスペースに神の御名や天使名を記し、内側に六芒星などの魔術的シンボルを配し、円の周囲に4本のろうそくを立てた。


元々アタシはこういった知識や工程を全く知らなくて三ヶ月を要して昨日ようやく完成させたのだ。


そんな数々の苦労もあったのだが今日やっと夢が叶うわけだ。

万感の思いを噛み締めながら魔法円の中心に立ち逆召還の手順を始める。


四方に置かれたロウソクの炎が不規則にゆらゆらと揺れ、部屋一体を怪しく照らし、書かれた文字は蛇が這うようにぐるぐると動き回り、シンボルの六芒星がカッと発光した。


そしてアタシは二次元に運ばれる―――事は無かった。

アタシはいまだ魔法円の中心に立っており部屋に起こっていた怪奇現象はピタリと止んでしまった。


「ああ……今回も失敗だわ」


ワープ、神隠し、に続き魔法円も二次元ユートピアへの道を開いてはくれなかった。


何故失敗したのだろう?


何故二次元に受け入れられなかったのだろう?


逆召還の設定は三次元から人間一人を送り込むことにした。、

人間たった一人の増減なら世界に大した影響を及ぼすはずもない……失敗した理由が分からない。


ポケットに入れていたケイタイを取り出し召還について検索をかけた。

これで分かるとも思っていない。もっと専門的な書物まで読み漁ってから召還の準備を始めたのだから今更ウェブページを閲覧しても役に立つ情報なんてないと分かっていても諦め切れなかったのだ。


……ケイタイ?ふいに思った。

二次元の世界にケイタイなんてあるのだろうかと。

もし、その世界に存在しない物を持ち込んだとしたらそれは多大な影響を齎すだろう。

ケイタイどころか今アタシが着ている制服ですら化学の結晶であり技術的進展の度合いによってはある筈が無い。


「念の為に試してみようかしら」


≪アタシ専用の部屋≫の鍵をキッチリと閉めてから制服のポケットにあるボールペンやハンカチやティッシュを机の上に置き服を脱ぎ始めた。

抵抗や恥じらいもあったが完全密室に作られた部屋なので安心ではあるし何より夢の為と我慢し生まれたままの姿になってから魔法円の中心に立ち、再度逆召還を始める。


先ほどと同じく部屋には怪奇的な現象が起こり始め、ロウソクの炎から六芒星の発光まで終えた瞬間にアタシの視界がフッと暗くなった。


闇の中の闇。外にある人工の光も無く、夜空にある自然の光も無く、ただただ暗い黒。

辺りが漆黒と呼ぶべき色に包まれ驚いている内に黒の中に一点の穴が開き柔らかな白が滲みだしふわっと広がっていく。


黒と白が混ざり合いミルクを入れた珈琲のような色になると急に辺りを包む色が消えていき自然な光景が目前に広がった。


……ああ、自然な光景だ。森なんて自然の象徴では無いだろうか?

ただアタシからすると不自然な自然である……アタシの部屋に当然森なんて無いのだから。

これはモバゲーで私が執筆しているのを纏めた作品(モバゲーでは美形☆Hunterですが)です。

ある程度溜まったらこっちに投稿する形を取っておりますが故に執筆ペースが酷くノロマな駄作ですが読んで頂けるなら幸いです。

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