シンジとアカネ
いつか連載にしたいけど、今は、まだかな。
「お兄ちゃ~ん」
「妹よ、なんじゃらほい?」
「聞きたい事があるんだけどさぁ~、教えてよっ」
「何でも御座れ、と言いたいところだが、少し待って。今、出来立てホヤホヤのチャーハン食べている途中だから。20分後に再びお会いしましょう」
「了解なり~♪」
☆20分後☆
「お兄ちゃ~ん」
「はい、なんでしょ~うかっ?」
「子供くさい質問、またはアホらしいと思われるかもしれないけどさぁ、あのさ~ぁ、宇宙人っているの?」
「う~ん、その質問は上手く答えられないけどもね、宇宙人の件は一言では片付けられないという暗黙の認識を持って子供の頃から悶々としてきた事実はお兄ちゃんにもあるんだよねぇ」
「難しくて何を言っているのか分からない」
「要するに、分かりやすく言うとだね、『宇宙人はいるような、いないような感じで焦がれながら思いを馳せると楽しさ倍増でぇ~す!』ってな感じになるのかなぁ~」
「ふ~ん。お兄ちゃんでもハッキリとは分からないと」
「まあ、そうなるね」
「私の友達の優子ちゃんがね、昨日ね、『びっくらこいたわよ! 私さぁ、久しぶりにさぁ、河川敷で宇宙人を見ちゃったのよっ! 懐かしすぎだった』と言ってね、議論白熱しちゃったのさ」
「宇宙人は河川敷で何していたの?」
「ベンチに座って考え事していたみたい」
「宇宙人は1人だったの?」
「そうみたい」
「たぶんね、地球に馴染めなくてホームシックになって黄昏ていた宇宙人の可能性が非常に高いな」
「地球で暮らしている宇宙人っていうこと?」
「うん、そうだね」
「宇宙人って地球に来て、何をしているの?」
「一般的な考えとしては、地球を侵略するための下見か、友好関係を結ぶ準備をするために来ているらしいよ」
「侵略はヤバくない?」
「ヤバいけど、まだ決まった訳じゃないから」
「結構、昔から宇宙人って目撃されているんでしょ? 遺跡にある壁画に宇宙人っぽい姿が描かれていたりとかさぁ」
「そうみたいだね」
「侵略するのにかなり手間取っていて長く掛かり過ぎてない? 宇宙人って時間の使い方がヘタクソなのかもなぁ~? お兄ちゃん、何で未だに地球は侵略されていないの?」
「人間は扱いにくい生き物だと気付いたからじゃないの?」
「お兄ちゃん、どういうことなの?」
「人間って不可解な過去に囚われ過ぎていて、争ってばかりだからね。宇宙人も結構、困り果てているんじゃなかろうか。『こんなに揉め事が多くて好戦的な種族は厄介な結末になりやすいから、迷っちゃう』と思っているんじゃない?」
「確かにね」
「人間の人生は一度しかないのに、いつまでも下らない争いをして時間を費やすヒステリックな種族だとも思っているのかもね」
「本当に浅はかよね」
「反省や検証をしたわりには常に堂々巡りで自ら進んで過ちを繰り返す種族、とも思っているのかもしれないね」
「お兄ちゃん、つまりさぁ、宇宙人たちは侵略を躊躇っているという感じなわけ?」
「まあ、そんな感じ」
「お兄ちゃん、侵略が目的ばかりじゃなくて、ポジティブな宇宙人もいたりするのかな?」
「こればっかりは判断が難しいところ。侵略に来た場合なら、今は亡きホーキング博士は「もし宇宙人が来たら、絶対に勝ち目は無いから、煽ったり攻撃したら駄目だよ」って言ってたような気がする。あれ? アインシュタインだったかな?」
「お兄ちゃん、何とかならないかなぁ?」
「何とかしようと思うに至らないね。宇宙人はスケールの範疇を越えた存在だからね。もし宇宙人が侵略に来たら地球の何処に行っても逃げ場がないからね。お兄ちゃんに出来ることは驚愕しっぱなしでポカンと口を開ける事しかできんね」
「侵略されたらどうしよう? 私、怖い」
「中にはヒマな宇宙人が気分転換で地球に観光で来ている事もあり得るから、あまり警戒したり怖がる必要はないよ。多様化した社会を目指すのが主流となった現在の情勢と照らし合わせても『来るもの拒まず。去るもの追わず』の意識を持つべきかもね。宇宙人が観光地でお金を落としてくれる事も考慮しなくちゃならないしね。嫌な印象をお互いに持ちたくないでしょう? 発展するためにもピースな気持ちで迎えてあげようよ」
「お兄ちゃん、宇宙人ってさぁ、どんな姿なの?」
「知らない」
「教えてよっ!」
「知らないって」
「何でも知っているのが、お兄ちゃんの務めでしょうが! 教えてよっ!」
「見たことないから知らないって。河川敷で宇宙人を見た優子ちゃんに電話してごらん」
「それが曖昧なのよ。優子の話によると『宇宙人は、ずんぐりむっくりしていたけど、背は高めに見えたし血色は良かった。会釈を返してくれたよ』って言ったのよ。なんかこの宇宙人、気味悪い」
「う~ん。人間の姿に変身しているという話もあるからなぁ。ちょっと電話してみてよ。お兄ちゃん、優子ちゃんと話してみたい」
「わかった。優子に電話してみるね」
ぷるるるん
ぷるるるん
ぷるるるん
がちゃりんこ
「ふぁい」
「あっ、出た。優子?」
「ふぁい、そうですけど、茜?」
「そうっす。茜っす。あのさぁ、昨日さぁ、河川敷で宇宙人を見たって言ったよね? 私のお兄ちゃんが詳しく聞きたいから電話したの。お兄ちゃんに変わるね! お兄ちゃんね、シンジっていうから」
「茜、ちょっとぉ! 困るってば!」
「どうも、初めまして。シンジです」
「初めましてです」
「早速ですが、宇宙人を見たそうで」
「はい、久しぶりに見ました」
「となると、以前にも見たと?」
「はい、見ました」
「本当に宇宙人だったんですか?」
「ええ。小学2年生から中1まで習っていましたから」
「はっ!?」
「茜に上手く伝えられなくて。茜、1人で興奮して、私に、まくし立てていたから。私も言葉足らずでしたし」
「はぁ? それはそれは失礼しました。で、宇宙人なんですけれど、優子さんは人間の姿に見えたのですね?」
「迂忠陣さんは、私が通っていた絵画教室の先生なんです」
「はい!?」
「迂忠陣さんは人間です」
「なるほど、なるほど」
「河川敷でスケッチをしていたみたいで、迂忠先生に久しぶりに声を掛けて挨拶をしました」
「なるほど、なるほど。茜が勘違いをしてUFOに乗った宇宙人の方を言って、1人で興奮していたわけですかね?」
「大体、そうですねー。昨日、全然、茜と話が噛み合わなくて。あははは」
「分かりました。茜には内密に。そのまま勘違いをさせておきましょう。面白いから。では失礼致します。今後とも茜を宜しくお願い致します」
「はい、分かりました。どうもありがとうございます」
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「お兄ちゃん、ずいぶん、小声で話していたけど、どうだったの?」
「ノーコメント」
「教えてよっ!」
「わかったよ。一言だけ。確実に人間の姿をした迂忠陣はいるよ!」
「やっぱりね~っ! 絶対に宇宙人はいるんだ! 今から河川敷に行こう! 私も、この目で本物の宇宙人を確かめたい!」
「そうだね。迂忠陣はいるんだよ。茜、気を付けて行っておいで~」
「お兄ちゃんも一緒に行かない?」
「ぜっ~~~~たいに、行かない」
おわり
ありがとうございました!また読みに来てね✨