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プロローグ
わたしの頭の中には、別の人の人生があります。
わたしにはその人の顔も名前も分かりません。
でも、わたしにはその人の記憶があるのです。
地球の、日本で生まれ育ち、そして死んだ人の記憶。
わたしのこの言葉が、その証明。
ね、ちゃんと日本語でしょ?
わたしという意識に付随したその人の記憶という情報は、わたしが生まれたその日から、わたしに自己を認識させました。
その模倣子が、わたしの自我を形作りました。
記憶が感情によって想起される情報であるならば、その人はもう一人のわたしと言ってもいいのかもしれません。
でも、生まれ変わりとは、ちょっと違うと思うのです。
わたしはわたし。
わたしはアンデュロメイア。
ここは海の星、エウロフォーン。
ここは風と水の島、ゼフィリア。
南の海にぽつんと浮かぶこの島で、わたしは生まれました。