逃げるは恥ではないが、俺は役立たず
あるひ〜〜♪
もりのなか〜〜〜♪
そんな歌が頭の中に流れた俺は、そういえば
あの童謡の子供は あの後どうなったんだろうと
考えながら
「オギャアアアアアアアアアアアア!!!!」
「グエーーー!! グエーーー!!!」
その結末を自分の身体で体感しないように
全速力で逃げていた。
ーまる呑み鳥ー
オウムのような見た目に、自身の肉体よりも
3倍は大きいであろうクチバシを持つ大怪鳥。
その安直なネーミング通り、小型の肉食獣、
牛や山羊などの家畜、果ては自分の体格に近い
生物までペロリと平らげる大食漢。
調理すれば絶品の肉料理になるため
ギルドを通して、料理人達から常に捕獲依頼を
出されている。
そんな恐ろしくも、ぜひ味わってみたい鳥さんに
「ああああああ!!
おかしいだろ!? 何でいきなり何の脈絡もなく
現れるんだよ!! ゲームだったらエンカウント
したら、画面が暗くなったり不穏な音楽が
流れるハズだろ!? 少しは様式美を考えろ!」
言葉が通じないと分かっていても 叫ばずには
いられない。
「お姉さーーーん! お姉さーーーーん!?
話が違いますよーー!! 目撃情報は森の奥じゃ
なかったんですかーー!? めちゃくちゃ森の
手前でお会いしましたし、尋常じゃなく
荒ぶっておられますよーー!!!」
「グエーーー!! グエーーーーー!!!
グエエエーーーーーー!!!!!!」
グエグエうるせえ! くそっ、落ち着け!
パニックになったら終わりだ。今こそ狩りゲーで培った
知識をフル稼働するんだ!
全力で逃げ回りつつ、まずは装備の確認をした。
武器は無い(買ってない)
回復アイテムはヒールキノコのみ
(クエストの納品用※使ったら報酬減る)
各種アイテム&捕獲用トラップ(あるワケねぇ)
詰んでんじゃねーか。
いや、諦めるな! そうだ、モンスターの行動の
隙をついて逃げればいいんだっ!
よく観察しろ! 怪鳥系ならまず_
「左右に首を振り乱しながら
俺に突っ込んで__」___こない。
「クチバシを全力で地面に突き刺すから
ちょっとの間だけ抜け__」__ る。
「走り回って体力が減ってきたので
死んだふりを___」____しない。
やっぱり詰んでんじゃねーか!
オワタ! 俺オワタ!!
完全に万策尽きて絶望している俺に
「グエアアアーーーーーーー!!!!!!」
「うおおおおっ!!! ああっ!!?」
荒ぶる まる呑み鳥は、バランスを崩した俺から
なけなしの荷物を奪いとった。
「ああっ!? 俺の道具入れがっ!」
もうとっくに食料は入ってないが、唯一 神様に
貰えた特典(NOチート)が!
「くそっ! 返しやがれ!」
まる呑み鳥のクチバシに引っ掛かったその袋を
必死で取り返そうと、辺りにある石を手当たり
次第投げまくった。
「グエアッ!?」
「しめたっ!」
投げた石の一つが運良く鳥の目に当たり
開いたクチバシから袋がこぼれ落ちた。
素早くそれを回収し、距離をとった俺に
「クコココココ……!ギエアーーー!!!」
キレちまったよ……と言わんばかりに
声を荒げ、身を震わせる まる呑み鳥。
そりゃあ怒るよなあ……。わかります。
当てた張本人の俺が言うのもなんだが。
さあて、どうしたもんかなあ………。
もし、転生特典で欲しいものが何でもいいと
言われたら 迷わず美少女を選択したい。
もう少ししたら、この物語にも きゃわいい
女の子が登場します。
え?ならさっさと書けって?
ハッハッハッ、正論はやめてもらおうか。