super excuseme(超すみません)
「ふあ〜〜あ〜〜〜。」
前日に気を張りつめていたせいか、
思った以上にグッスリ眠る事ができた。
「………………。」
おはよう代わりに俺を睨んでいるのは
この宿の主でもある、ハーピーのレピィ。
「朝っぱらからなんて目で人を見るんだよ。
せっかく爽やかに目が覚めたのに
台無しだからな?」
「キミが呑気すぎるんだよ……。
よくモンスターの巣で、しかも巣の主が隣に
いるのに爆睡できるね? ある意味恐ろしいよ。」
「昨日は本当に色々あったからな。
それに、主人の知り合いの寝首を掻くほど
不義理なヤツにも見えないし。」
「ま、まあね!」
「………おい、なんか様子がおかしいな。
何をやった? 言え。」
身体のあちこちを触って安全を確かめる。
「な、何もしてないよ!……ただちょっと
人間の体って、どんなかな〜って……。」
………こいつ!
「つまりお前は、無抵抗な俺の身体を
穴が空くほど見つめ、妄想を楽しんでたんだな
見た目通りのドスケベモンスターが!!
どんな卑猥な事を考えた!? 言ってみろ!」
「ドスケベモンスターとか言わないでよ!
ただ自分との体の違いを見てただけなのに
なんでそこまで言われるのさ!」
「どうだかな! そんな卑猥なものをぶら下げてる
ヤツの言う事がそう簡単に信じられるか。」
「じゃあ人間の女はみんなドスケベじゃん!
もういいよ! 隠すから!!
いい加減にしないと、シルフィー様の所まで
連れて行かないからね!」
そう言って近くにあった布で胸元を覆って
しまった。
「悪かった悪かった、謝るから仲直りしようぜ。
それと今日は暑いだろ? 無理に着込んで体調を
崩したらよくない。ほら、脱ぎなさい。」
「親切にするフリして胸見たいの
バレバレだからね!? ほらもう行くよっ!」
そう言って巣穴から飛び立つレピィ。
後を追って降りると、昨日暗くて見えなかった
谷の周辺が視界に広がった。
「ふわ〜〜、広いな!
こりゃ明るい内に来ても余裕で迷うな。」
「当たり前だよ、そもそもここに来る物好き
なんていないもん。来た所で魔物のご飯に
なるのが関の山だね。」
その言葉にブルッときた
「あの……レピィさん、なるべくモンスターの
いない道通ってもらってもいいですかね?」
ん、分かったー、と返事をするレピィについて
行って数時間。
ずっと我慢している事がある………。
「なあ…昨日から気になってたんだけどさ、
やたら臭くないか? この谷 不当投棄場所
にでもなってんの?」
先ほどから風に乗って尋常じゃない臭いが
鼻孔を蹂躙している。
「……ああ、これね。私もどうにかしなきゃなー
って思ってるんだけど、あんまりにも重たくて
ほとほと困ってるの。」
なにそれ? 大量のベト〇トンでも密会してんの?
「少し前に私が追い回された時、シルフィー様が
リングフォレストまで追っ払ってくれたんだけ
どね、交尾の為に戻ってきちゃったの。
それで発情してる時の雄叫びにぶちギレた
シルフィー様が惨殺しちゃって…、死骸が残っ
て こうなるから、滅多に殺さないんだけど」
なんだかえらく物騒な話になり、不穏な空気を
察知した俺は
「…おい、何の話をしてんだ? この匂いの原因が
何だって?」
「だからこれだよ、ホラ。」
そうして少し広い場所に出た俺達の目の前に
とても巨大な獣の死骸が現れた。
「なっ、なっ……!?」
何だこれは……? いや、死体の大きさも驚いたが
それよりも目についたのは
「首が……、一刀両断されている……?」
達人の切り口なんて見たことが無い俺でも
この死体が鋭利な刃物でバッサリいかれてる事が
分かった。
「これが私が追いかけ回された
この峡谷の魔獣、「ハウリングウルフ」だよ」
死体の腐敗からしても、2、3日前に死んだもの
だろう。そして今、この谷に来るまでに起こった
不可思議な事に納得がいった。
ギルドの異臭調査も、昨日の夜も
この魔獣の腐臭が原因だったのだ。
そして恐らく…_。
「昨日、この峡谷に来る前リングフォレストの
入り口付近で まる呑み鳥に襲われたけど
ひょっとして……。」
「うん、たぶんこの子がシルフィー様に
追っ払われた時、森の方に行っちゃったん
だろうね。そこで まる呑み鳥に会ったんじゃ
ないかな?」
そのせいで俺は襲われたのか……! てことは…!
「全部その精霊のせいじゃねーか!
ちくしょう! 絶対に許さねえからな!!」
__「アタシがどうかした?」
不意に耳元で聴こえたその声に、鳥肌が立った
「うおあっ!?」
__こっちよ。
別の場所から聴こえた声に、俺が振り向くと
「珍しいわね、こんな所まで人間がやってくる
なんて。ここにはお宝になるような物は何も
無いわよ?」
見た目は10代あたりだろうか。
緑の髪に白のワンピース。そして一つ人間と違うのは彼女の体に常に風が纏っている。
間違いない……こいつが……!
「シルフィー様、こちらソラ様です。
オパールの町から遠路はるばる、シルフィー様
にお会いになられたそうです。
シルフィー様に人間のお知り合いがおられる
なんて、このレピィ初めて知りました。」
レピィにそう紹介されて
目と目が合うシルフィーと俺。
「…………………アンタ誰よ?」
「ソラさん、ちょっとお話が」
「断る」
さあて、化けの皮が剥がれちゃったなー。
「断る。じゃないよ!! 騙したの!?
酷いよっ!!!」
簡単に人間を信じるモンスターさんサイドにも
問題があると思います。
「騙したなんて人聞きの悪い。
ちょっと難聴気味でな、「シルヒーさん」と
聞き間違えたようだ。いやあ人違い人違い、
間違いは誰にでもある。ドンマイ、次頑張りゃ
いいさ。」
「何で私が励まされてるのかなあ!
てゆうか絶対ワザとでしょ!? あんまりだよ!
私初めてで怖かったけど、キミを信じて
たくさん頑張ったのに!!!」
「アンタ………。」
「い、いや待て違う! おい、誤解を招く言い方
すんな! ただ同じ木の中で一緒に寝ただけ
だろうが!!」
「だ、だって! だってぇ!!!」
「……なんだかウチのコが随分お世話になった
みたいね。でも 止めときなさい、人間と魔物
では子供はできないわよ?」
「え、マジで!?」
「何でちょっと残念そうなのかな!
はっ倒すよ! 何も無かったでしょうが!?」
「あら、そうなの?」
「いやまあ、そこはご想像にお任せすると
いうか……ねえ?」
「だから何も無かったって言ってんで
しょおおおおおっ!!!」
「し、絞まってる! 首絞まってるから!!
悪かったよ、ゴメン! ゴメンなさい!!」
満を辞して登場しました!
みんなお待ちかね 風の精霊シルフィーちゃん
ですよー。
レピィちゃんの方がカワイイ?
ハッハッハッ!
だから正論はやめてもらおうか。




