風の谷のナウソラ
リングフォレストをなんとか抜け出し
モンスターにエンカウントしないよう細心の注意を払いながら、大峡谷へと辿りついた。
「すごく…大きいです。」
圧倒されるような広さと複雑に混じり合う道が
視界全体に映りこんだ。
ここが精霊のいる谷……、この谷の何処かに
風の精霊がいる…ハズだ。でもなぁ…。
俺は天を仰ぎ悩んでいた。
まる呑み鳥から逃げ回っていたせいで
とっくに日が暮れてしまっている。
今から谷に入るのは、あんまりにも危険だ。
暗い道ではモンスターが何処にいるのか
わからない。かといって火をつけて進むのは
baby boy私はここにいるよとモンスターに
アピールするみたいなものだ。
「そもそも火をつける物も無いし、しゃーない…
野宿するか。こっちに来て1年目くらいは
よく町の外でやってたしな。」
そこら辺の草を集め、簡単な寝床を作った俺は
この2年間が少しでも役立った事にまた涙が
出そうになった。
「幸い心地良い風が吹いてるし、すぐ眠れ
そうだ………? 何か臭っ! 何この匂い!?」
何かが腐ったような匂いが、風に乗って
鼻に入ってきた。
そういえば、ギルドの依頼で異臭調査の
クエストがでてたな、これの事か?
「オゥエ……。さっき食ったヒールキノコ
吐きそう…。最悪だ………。」
あまりの異臭に眠気がふっ飛んだ。
少しでも体を休めたかったのに、これでは
ここに居ることもできない。
「回復も ろくにできないとか
鬼畜ゲーすぎるだろ……。」
仕方ないので、寝ることは諦め
これから先の事を考えることにした。
正直、何処にいるのかもわからない精霊を
闇雲に探すのはよろしくない。
何か手がかりでもあれば、やりようは
あるんだが……。…………?
そう考えていると、頭上でハネが羽ばたくような
音が聞こえた。
また、か………。
このパターンに慣れてきてしまっている自分に
腹が立つ。
これはどうせアレだろ?
俺が顔を上げたら、人食い鷲なり 小型の
ワイバーンが居て、目と目があって見つめあって
素直にお喋りできなくて
「いやあああああっ!!」って俺が泣き叫んで
一晩中追いかけっこする天丼だろ?
はいはい、分かった分かった…。
やりますよ、やればいいんでしょ?
はい、せーの
「ねーねー、何やってんの? 死んでんの?」
「ふぁっ!?」
唐突に聴こえた人の声に、すっとんきょうな
声を上げた俺が見たものは…
マシュマロ。
転生してからは初めて見たマシュマロ
しかもモロなので、生マシュマロだ。
「ねー、きいてる?」
「おっぱ、…お前……ハーピーか?」
そう、ハーピー。
両手両足が鳥の見た目に人間の女のような顔と
丸出しのマシュマロ。
RPGでは時折見かける幻話の生物。
そのハーピーが俺の目の前で翼をはためかせて
いた。
「うん、そうだよ〜。………ねえ今 おっぱいって
言おうとしたよね?」
「何か問題が?」
「ありまくりだよっ!!」
だってしょうがないじゃん。
現世ではumazonや鶴河屋で いくらでも
手に入ったけど、こっちに来てからは
とんとご無沙汰だったんだから。
「ちょっ! 見すぎ! 見すぎだから!!」
「おい隠すなよ。まだ網膜に焼きついて
ないんだぞ、別にいいじゃん
普段から何げなく、そのドスケベボディで
そこら辺パタパタしてんだろ?」
「言い方!! 初対面なのに遠慮なさすぎだよ!」
そう言って、すぐ傍の木に身を隠してしまった。
くそっ! ミスった!! 平然としてたら
いくらでも見続けられたのに!
「ンッンンッ! コホン、はじめまして
美しい羽を持つお嬢さん。こんな夜更けに
お散歩かな? 恥ずかしがり屋さんなんだね。」
「よく今の流れで持ち直そうとしたね!?
どう足掻いても、もう無理だよ!
羊の皮がズル剥けになってるよ!!」
「ズル剥けとかまたそんな卑猥なことを…。
分かった分かった、お前の気持ちはよく
分かったから。じゃあもうそろそろ
…………いいよね?」
「何が!? ちょっ、待っ!
いやあああああああああーー!!!」
そのセリフは俺が言う側だと思ってたよ。
お待たせしました。
ようやく きゃわいい女の子が登場しましたよ。
(人外じゃないとは言ってない。)
まあ、最初の女の子キャラクターですから
少しソフトめに、虐めてあげましたよ。
モンスター娘は種族的にはアリな私です。
ハッハッハッ!
……………何を引いているのかね、今のはほんの
挨拶代わりだよ?
ではまた、次のお話で〜〜。




