桃太郎。
いったい何がどうなっているんでしょう!?
逃げている私の後方には、こん棒を持った鬼が襲ってきていますし、そもそもここが何処なのかも分かりません。
分かっていることは今の状況が非常にピンチであるということだけです!
「はぁ...はぁ...はぁ...」
息が切れてきてしまいました。
鬼というのは意外に足が遅い生き物だったのですね...。
体育ではいつもビリケツだった私でも何とか逃げれています...。
いっそのこと、チータのように早ければ諦めもつくのですが...。
いやいや!!ネガティブになっては駄目です、私!
必ず逃げ切ってみせます!
と、思った矢先、限界に達した私の足は意思とは真逆に動きを止めてしまったのでした。
それなりに離れていた鬼との距離がどんどん縮まってきています。
5m...3m...1m...。
鬼の腕が私の方へと近づいて...。
あぁ、神様...。いや、桃太郎さん...。
もし、居るというのなら私をお助けください...。
鬼の手が私の頬に触れそうなほどまで近づいたその瞬間...
何かが鬼の後ろを凄い速さで遮りました。
そう思った矢先、さっきまで恐ろしい形相で襲ってきていた鬼がぐったりと倒れたではありませんか!
一体何が起こったというのでしょう!?
「やはりこの辺りにも鬼達が現れるようになってしまったか...」
鬼に代わって私の前に立っている少年。
もしかしてこの子が助けてくれたのでしょうか??
「大丈夫でしたか??お姉さん。」
話しかけられました。どうやら私を心配してくれているようです。
「はっはい...。お陰さまで無傷です!!」
「それは良かった。急いで駆け付けた甲斐がありました。」
急いで駆けつけてくれていたようです。
「あっあの、貴方は一体...??」
「私の名前は桃太郎。この周辺に住んでいる者です。」
「桃太郎!?」
これには鬼以上にビックリです!!
桃太郎ですか!?
確かにこの少年はそう言いました!!
まさか本物の桃太郎さんなのでしょうか!?!?
「ははは...。私の名前でそんなに驚かれたのは貴方が初めてですよ。」
「すみません...。」
とりあえず謝っておきましょう。
しかし、この少年の言っている事が本当ならば、もしかしてここは...。
「しかし、悲鳴を聞いたときは驚きました。この辺りには私とお爺さんとお婆さんしか住んでいませんから...。」
なるほど。しかし、桃太郎さんの発言にはちょっした疑問があります。
「私、悲鳴なんてあげた覚えありません...よ??」
みるみる桃太郎さんの顔が青ざめていきます。
「そんな!! 若い女性の声だったので、てっきり貴方だと!!」
若い女性の悲鳴...。もしかして、私が最初に聞いたあの悲鳴のことでしょうか...。
「もし、貴方の言っている事が本当なら大変です!
この瞬間も悲鳴の主が鬼に襲われているかもしれない!」
桃太郎さんは深刻な顔でそう言うと、私の方を向いて早口で言いました。
「私は今すぐ悲鳴の主を助けに行かなければなりません...。
しかし、貴方をここに置いてきぼりにするのも危険だ...。」
確かにまた鬼に襲われてしまっては逃げ切れる自信は皆無です。
「この道を真っ直ぐ進むと私が住んでいる家があります。
貴方はそこで休んでいてください。
私のことを話せば、快く入れてくれるはずですから。」
桃太郎さんに会えただけでなく、家にまで行けるとこになるとは...。
なんて私は幸運なんでしょう!!
「はっはい!分かりました!!」
私がそう言い終わった時には、すでに桃太郎さんは悲鳴の主を探しに走り出していました。
悲鳴の主さんが無事であることを祈ります...。
さてと...。
私は桃太郎さんの家へと向かうことにしましょう!!
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....あ!!!
最初の所におばあちゃんがくれたペンを忘れてきてしまいました!!