92:我、再度禁書を紐解く。
本日のおゆはん、素材の味を最大限活かした栄養満点の麦粥。 …要するに味付け一切無しのオートミールっぽい何かである。
そりゃまぁケロケロした挙句グッタリしてる有様なんだしこういうご飯になるのも分からなくはないんだけどもね?
一切味がない上に他の具材一切使われていないお皿いっぱいのオートミールもどきとか拷問以外の何物でもなくない?
わざわざ厨房のおばちゃまに注文してくれたシェラさんやその注文に応じてくれたおばちゃまは親切心からくる善意100%の行動なんだろうけど、我的には心折モノですよ?
ぶっちゃけおうちで過ごしていた頃にゼリー状の生命体で食い繋いでいた頃を思い出してしまうレベルの苦行でござる。
ただ満腹感を満たして栄養を取る為だけの、胃にモノを流し込むだけの食事とはとても言えない作業。
自業自得、因果応報、といった言葉の意味を噛み締めつつ吐き気を堪えて無心で胃に流し込む作業に従事しながらも。
これ、むしろ逆に悪化するんじゃなかろうかと他人事のように現実逃避する我がいた。
ぐふっ。
満たされた胃袋と満たされない充足感を抱きながら倒れ込む。
流石に具合がよろしくない我を気遣ってくれているのか鳥籠モドキでなく肌触りのいい布の敷き詰められた編み籠が現在の我が寝床である。
現在この部屋にいるのは我だけ、シェラさんは我を寝床に寝かせた後どこかへ出かけていった。 まだお仕事があるのか、それとも我のお薬でも貰いに行ってくれたのか…いや魔物の我に薬とか効くのかとかそもそも動物用の薬がお城に存在するのかは知らないけどそれはさておき。
重要なのは今この部屋に我しかいない、つまり我が何かしても目撃者がいないという事なのである。
出来ればこのまま寝床に沈んで意識をログアウトさせたいところだけど、そんな誘惑を振り切り収納バインダーさんを召喚。
腸詰や瓶詰めの酢漬け野菜に食指がぴこぴこ動きかけるも鋼の意思で自制し書物のタブをクリック、大きく深呼吸し、意を決して恐る恐る開かれたバインダーに収められたカードの内の一枚に前足を伸ばす。
その前足がカードの表面に触れた瞬間、我の意識は強制ログアウトした。
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「で、俺様のところに相談に来たと?」
腕を組み、仁王立ちで我を見下ろすそれもラメ入りショッキングピンクの褌一丁の幼女。
…相変わらず痴女ってますね、破廉恥痴幼女さん。
「俺様が自分の領域でどんな格好していようが俺様の勝手だろうが」
それでも来客の時くらい着飾るべきだと我思うデス、はい。
いくら我が同性で毛玉だからって、その、女子として恥じらいは持ちましょう? 的な?
「裸族が恥じらいを説くな」
裸族言うなし、寧ろ衣服を着飾った兎とか悪目立ちってレベルじゃねーですだよ。
ってゆーか、毛皮羽織ってる? からノーカンだもんっ!
「体毛で素肌を隠したケモノ娘って逆にエロくね?」
お黙りやがられなさい?
我、割と真面目にお話があって今ここにいるのよ?
阿呆な猥談に付き合ってる暇はにゃーのです。
「真面目な話っつってもなぁ……。
要はちびもふが俺様をパチった所為で一国が滅びの瀬戸際だから助けてお願いなんでもするからっ、ってこったろ?」
なんでもするなんて口が裂けても言わないけどそれ以外はその通りだからあまり強く言えない件。
なんで知ってるのさ、とか突っ込みたいところだけどどうせ不思議ぱわーとかそんなだろうからその辺はスルーするとして、状況把握してるならお知恵ぷりーず。 併せて助力もぷりーず。
「なんで?」
なんで、てあーた……。
え? だって破廉恥痴幼女って知的生命体のサポートユニットなんでしょ?
ならこーゆー危機的状況には介入するんじゃないのん?
「別に? 知的生命体っつー枠で語るなら攻めてきてる神属とその部下も十分当て嵌まるだろ?
俺様を所有してるのが皇国の人間で神属をどうにかしたいっつって俺様を開くなら助力の一つもするけどちびもふに所有されている今じゃどっちかに肩入れする気はねーな。
ちびもふは皇国に所属してる訳じゃねーし」
え、でも神属って敵と違うのん?
管理用ユニットをヌッ殺してシステムへの介入権限を奪ったのが神属なんだよね?
ルシェルに聞いた時は敵(笑)みたいな答えが返ってきたけど同じ箱庭を管理・運営してる破廉恥痴幼女達から見たらヌッ殺ターゲットだと思ってたんだけど。
「いや、別に? っつーかもしそれが問題のある行動で箱庭の運営に問題があるならとっくの昔に神共がシステムを造り替えるか他の管理用ユニットに指示を出して殲滅するかしてるだろ。
それがなんのアクションもなく放置してる時点で神属の存在は箱庭内で許容されてるってこった」
え、えぇ~……。
でもほら、その、仲間意識とかなんかそーゆーのとかは?
「負ける方が悪い」
…あ、さいですか。
駄目だこの褌、お話になりゃせんでござーます。
「ま、あれだ、俺様はこの件に関して一切助力も助言もしねーぞ。
分かったらさっさと禁書から出てってこの国から逃げるなり食い物パチりに行くなりしろ」
そう言ってしっしっ、と追い払うように手を振る破廉恥痴幼女に役立たずー、と叫んだ辺りで視界が真っ白に染まっていき。
そのまま再度、我の意識は強制ログアウトした。
「…さて、一応ヒントはくれてやったが。
ちびもふは気付くかねぇ、俺様の力を振るう術に」
ま、気付かないならそれでもいいけどな。 とひとりごち。
褌一丁の幼女はくぁ、と欠伸をひとつ溢した。




