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87:我、また生命の危機。


 「御義父殿、お嬢さんを余によこされよ」


 ガオルーン皇国、会議室。

 皇帝ウシュム=ガオルーンを筆頭に重鎮が居並ぶその場に現れた真紅の鎧に身を包む金眼の美女。

 背筋は鉄骨でも通っているが如く垂直に伸ばされ、歩行時においても一切の姿勢の乱れがない。

 その身に宿した覇気と鋭い眼光も相俟り、ウシュムから見たその女はまるで人の形をした一振りの刃であった。


 室内に居並ぶガオルーンの重鎮もその姿に気圧され、痛い程の静寂が支配するその空間にごくりと誰かが息を呑む音がやけに大きく響いた。

 他国の城内、その用途から城の奥に設けられた国家の舵取りを行うその部屋で、居並ぶ他国の重鎮になんら臆するどころか不敵な笑みを浮かべる威風堂々たるその姿。

 彼女にとってこの程度の事など些事でしかなく、圧を感じるどころか逆にこちらが圧に屈している有様。

 なるほど、これがかの氷炎帝かとウシュムは感嘆の眼差しを眼前の美女に向ける。


 金と黒という、およそ人の瞳とは思えない配色は()の血族が祖が悪魔と人の交わりにより産み落とされた証明。

 その背に背負われる魔剣グラフ。 王祖の名を冠する2メートルを超える長大なそれは、トリュケシアの血統以外には決して触れる事叶わないと聞く。

 今は鞘に収められたそれは、鞘のような黒鉄でなく闇をそのまま刃の形に押し込めたような漆黒の刀身を持つらしい。 ウシュムも直接見たことはなく伝聞でしかないが、その刀身は命を刈り取るが如き禍々しい形をしているとか。

 身に纏う真紅の鎧は恐らく魔法銀(ミスリル)、鋼以上の硬度を持ちながらも金属とは思えぬ程に軽いそれは魔力を帯びる事によって変質した合金であるといわれている。

 剣一本分で金貨数百枚は下らないその希少金属で造り上げた全身鎧、一体どれほどの価値があるのか考えただけで眩暈がしそうである。


 (金は、あるところにはあるものだな…)


 羨ましいやら妬ましいやら、と呟きながらその姿を眺めていたウシュムの目が、ふいに止まる。 と、いうより何故今まで気付かなかったのかと己に呆れる。

 顔に見惚れていた、剣に注意を払っていた、鎧に目を奪われていた、そのどれもが言い訳でしかない。

 鎧の胸元で組まれた両の手と、その手に抱きかかえられた白い小さな毛玉(ラビ)

 そのあまりにもちぐはぐで場違いな姿にウシュムの思考は完全に停止し、辛うじて再起動するもエラーメッセージが脳内に頻発する。


 「あー、その…なんだ……? カミラ殿、その、それは…?」


 盛大に空回る脳に渇をいれ、なんとも王らしからぬおぼつかぬ言葉を紡ぐウシュムに美女はおお、と思い出したかのように声を漏らし…──。


 次いでその口から零れ落ちた言葉が冒頭の一言である。

 ウシュムの頭がオーバーヒート(フットーしそうだよお)したのは当然であろう。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 我、DIEぴ~んちっ。


 金目美人さんに抱きかかえられたままお城の廊下を移動すること暫く。

 やってきた場所にはなんかいっぱい人がいました。 …知ってる顔もいぱーい。

 筋肉さん(おーさま)ごっついさん(おーひさま)、グリーンアフロクリーチャー、縦ロールさん(おーじょさま)、そしてちみっこ皇女と一緒にいたハゲしく眩しい人と七三メガネな人。

 そして、毎日のように顔を合わせている我の飼い主(シェラさん)


 我に気付いた瞬間からシェラさん、急に笑顔になったんだけどもね?

 なんかその笑顔の裏におどろおどろしい気配を纏ってらっしゃってですね?

 そのお顔に我がびくっ、と怯えたのに気付いたのか口がぱくぱくと動いてらっしゃったのですけれども。


 『ア・ト・デ・オ・ハ・ナ・シ・ガ・ア・リ・マ・ス』


 …ボスケテ。


 「む? 何を震えている?」


 がくぶるしているのに気付いたのか金目美人さんが我の首根っこを摘まみ上げる。 なんか心配してくれてるみたいだけど今の我、それどこじゃないのですよ金目さん。

 あーう~、たとえ後で疑われたり警戒されたりする事になってもやっぱり途中で逃げるべきだったか~。

 でも人間辞めた枯れじぃいたし逃げられるものか怪しかったしなぁ、ぐすん。

 そんな事を考えながら身悶えているとなんだかべしっという音と共に我の身体が揺れる。


 「姫、阿呆な事を言っとらんでガオルーン皇に挨拶をされては如何ですかな?」


 そう言った枯れじぃを見て察する。

 どうやらさっきの音は枯れじぃが手にした杖で金目美人さんを殴った音で、我の身体が揺れたのは殴られた金目美人さんの衝撃がきたっぽい。 いやまぁ我の知ったこっちゃないんだけども。

 今の我は背後から飛んでくる怒気がたっぷりと籠められた視線からのプレッシャーでマーライオンしそうです、おぇっぷ。


 「ええい、姫と言うなというに。 …まぁいい、久しいなガオルーン皇よ。

  此度は招待感謝する。 で、このラビだが」


 他国のおーさま相手にそれはどーよ、って我でも思うような挨拶っぽい何かに枯れじぃからは溜息が漏れていますね、心中お察しします?

 枯れじぃが再び杖を振るおうと振りかぶるのを見て慌てて対衝撃体勢をとるが、それが振り下ろされる前に後方から声、次いで足音。


 「カミラ陛下、申し訳ありませんがそれは私の私物ですのでお譲りする事はできません」


 …視線どころかご本人も近づいてきたでござる。

 気配察知とかそーゆー素敵スキルなくてもはっきり分かるくらいにプレッシャーが、プレッシャーがががっ。


 「貴様は…フォーン(・・・・)か?」


 「はい、今代のフォーンを勤めさせて頂いております、シェラと申します」


 なんかふつーに挨拶してるっぽいけど、我騙されないよ?

 だって我に襲い掛かってくるプレッシャー、どんどこ強くなってるもん。 金目美人さんと話しながらもシェラさん、我の事ターゲットしてらっしゃるもんっ。 ガクブル。


 「で、これが貴様のモノだと?」


 金目美人さんが我を持ち上げくるりと手首を返し、予想以上に近い距離まで来ていたシェラさんと目が合う。

 いやん、我と目が合った瞬間にこりと微笑を浮かべましたですよシェラさん!?

 しかもそれが引き金になって更にプレッシャーが増しましたですだよっ?!?!!


 「はい、ですがどうにもやんちゃで私も手を焼いておりまして。

  何をどうやったのか、部屋から抜け出していたようですし」


 その言葉と共に視線に険が混じりギロリ、と我を()め見やる。

 …まぁそりゃそーですよね、まさかこの金目美人さんがシェラさんの部屋に押し入って我を捕縛する訳もなし、それなら我が部屋及び鳥籠モドキからヒキタテンコーしたに決まってるもんね。


 「カミラ陛下のお気持ちは理解できます、私達(・・)のような存在からすればその子は正に奇跡であると」


 うな、奇跡? 我が?

 え、なになに? まさか我がトンデモラビだっていう事バレテーラ?

 いや、でもそれならシェラさん達みたいな存在からすればってゆーのはどーゆー事ぞなもし?

 一兎(ひとり)頭上に疑問符を浮かべるも答えなど返ってくる訳もなく。


 「…理解しているのであれば、快く譲ってくれてもよいのではないか?」


 ふぁっ、なんか金目美人さんからもプレッシャーがががっ。

 あ、でもこれは我には向いてないっぽい。 …ってゆー事は余波でこれでつか。


 「カミラ陛下が私の立場だとして、譲ってくれなどと平然とほざく輩にはどう対処しますか?」


 あ、シェラさんからのプレッシャーが我から金目美人さんに逸れたっぽい。

 なんか二人とも 『ゴゴゴゴゴ・・・・』 って擬音を背負ってそうな雰囲気でござる、我を挟んで争うなし、離せし、我を解放してから喧嘩でもなんでもしろし。


 「愚問だな、迷わず首を刎ねるのみ」


 「それが(・・・)私の答(・・・)えです(・・・)


 「ほぅ…」


 あ、なんか前後から襲い掛かってきてたプレッシャーが棘々した殺気に変わった。

 笑顔が張り付いたシェラさんの顔の中、目だけが一切笑っておりませんね。

 背後の金目美人さんも最後に溢した声、絶対零度でござーましたですの事よ?


 互いに無言で視線を交わしてるっぽいシェラさんと金目美人さん。

 シェラさんの顔からは笑みが零れ落ちて能面みたいな無表情になってますねー。

 とっても怖いです、でも視線が外せないです。

 だってなんか行動起こしてこっちに意識が回されたら視線だけで我ぽっくりいきそうなんですもん。

 筋肉さん、枯れじぃ、どっちでもいいからへるぷみー。

 か弱いラビのぴんちDEATHヨ~?


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