86:我、兎生二度目の対人スキル発動。
「しかし、こうして顔を突き合わせてみても微塵も怯える様子を見せんな。
余に抱きかかえられてももがいたのは始めの暫くのみ、その後はリラックスしているとでも言いたげに身体を弛緩させている」
意義あり、首根っこ摘まむのを世間一般で抱きかかえるとは言わんです。
ずびしっ、とばかりに指指す…のは構造的に厳しいっぽいから首根っこを摘ままれた状態のまま左前足を突き出すと、金目美人さんは目をぱちくりさせながら暫しその前足を見つめた後、何も思ったか我の首を摘まんだ手とは反対の手でそれを摘まんでくる。
我、別に構ってほしいぴょん、とかそういう気持ちで前足出してる訳違うからね?
お放しなさいっ、摘まんだまま上下にぴっこぴっこ動かすんじゃありませんっ。
「ここまで人慣れしたラビ、というのは希少よな。 余の目を見ても平然としておる点も興味深い。
……譲ってもらえぬか、ガオルーン皇に本気で交渉してみるか」
やめろし、我シェラさんの備品ぞ。 筋肉さんに我をどーこーする権限なんぞないぞなもし。
そもそも我、現状に満足してるからわざわざシェラさん以外の保護者探す気もないし。 ってゆーかどこのどちら様だか分からない人に付いてってぐーたら生活がグレードダウンするとかお断りでありまする。
いくらお金かかってそうな鎧着てたっておーさまの住むお城以上の贅沢生活を満喫させてくれるとは思えんとです。
何よりシェラさん並かそれ以上に気が利いて毎日朝晩にお風呂に入れてくれる飼い主なんてSレア物件をもう一度引き当てる運なぞ我にある筈がないっ!!
「姫、気持ちは分かりますが今はガオルーン皇との謁見が優先でありますぞ。
いくら城内で放し飼いされていようと謁見の間に魔物を連れて行くなど常識で考えてもありえませぬ、ポイしなさい」
こんにゃろ枯れじぃめ、さっきからポイしろポイしろって兎様を物か何かみたく言いよってからに。
もし首根っこ摘ままれてなかったら今頃その綺麗でもなんでもない皺くちゃ顔を我が必殺のラビ・ソバットで吹き飛ばしてるところだぞー。
(間違いなく迎撃されますけどね)
なんだとこんにょろう、いくら我が貧弱非力なラビだってあんな枯れじぃくらいならどうにかなるもん。
(そう思うのであれば鑑定スキルを使われてみては?
それと、以前は指摘しませんでしたが女郎はニョロウとは読みません。 ジョロウ、もしくはメロウです)
なん…だと……。
もっと早く教えてくれていればいらぬ恥を掻かずに済んだのに、二度目の発言後に訂正を入れてくるとかキサムァ鬼か悪魔かルシェル=ルュストか。
(毟りますよ毛玉女郎)
『天罰かますぞちび毛玉 byルシェル』
ルカの底冷えする声と、唐突に目の前に浮かび上がった以前にも一度見たことのある薄紫色の亜種・謎ボードさんに綴られたメッセージ。
口は災いの元、世の中言っちゃ駄目な言葉もある。 我理解したよ、ガクブル。
ルカの言葉は聞こえる筈もなく、そしてどうやら謎ボードさんも視認できないと思しき金目美人さんは急にガクブルしだした我を驚いた目で見、次いで枯れじぃを睨み付ける。
「見よ、じいが放れなどと言うからこやつが怯えだしたではないか」
「いや、それよりも先ず我らの言葉を理解したと思われるそのラビを訝しむべきだと我輩思うのですが」
「ラビを相手に道理を説いてどうする、相手は亜種に珍種に突然変異にと十匹いれば十匹すべてが異なる種と謳われる輩ぞ。
たかだか人の言語を解する程度のラビをいちいち訝んでいてはきりがないわ」
金目美人さんのちょっと待てやと言いたくなるような発言に、「それもそうでありますな…」 と納得する枯れじぃ。
やだ、我この世界でのラビってゆー生き物に関する評価分からなくなってきたわ?
ラビ図鑑とか一覧的なものないのかしら、割と本気で我の生態が気になってきたですよ?
(無理ですね、世界の理にアクセスしてラビについて検索をしても見る度に新種が増えている始末ですから)
あれ、もしかしてラビってシステムの管理外の生命体だったり?
(どこぞの阿呆がラビという種からヴォーパルバニーという種を創造した。 …その結果、ラビという種そのものに歪みが発生してしまいまして。
神を欺く術と、あらゆる欺瞞を見破る目、更には神をも屠る可能性を秘めた殺傷技。 それだけのものを他の神々に悟られぬようラビという種の根源に植え付けた訳ですから、まぁ当然といえば当然ですけれどね)
ま た あ い つ か 。
要するに本来のラビは生きた素材で、それ以外の妙ちくりんなのは全部アレのせいで生まれた、と。
(マスターのサポートの為に急遽生み出された際にあの阿呆からヴォーパルバニーについての知識、情報を記憶に焼き付けられましたが。
それによれば、ラビという種に亜種が生まれ始めた時期は最初のヴォーパルバニーの誕生の翌日からだったそうです?)
戦犯、駄女神。
つまり以前話に聞いたドラゴンより硬くてバ火力なとんでもラビとかラビ・ゴーストなんかもあのぽんこつ駄女神のせいで生まれたってゆー事で。
思いっきり箱庭の生態系乱してるやん、何してくれちゃってんのさあのすかぽんたん。
ってゆーかそもそも一体全体何を考えてヴォーパルバニーなんぞという代物生み出したし。
(その理由は私の知識にはありませんのでなんとも。 尤も、どうせ碌な理由ではないのでしょうけれど)
超同意、聞いたら呆れるか思わずツッコミ入れるような下らない理由に決まってる、賭けたっていい。
今度会ったら聞いてみようかしら、でも絶対碌でもない理由だろうし聞くだけ時間の無駄な気がしなくもなし。
…でもまぁ、お陰で我がちょっとラビとしておかしくてもスルーされてると思えば時間の無駄でも付き合ってあげるくらいの寛容は見せてもいいカモ?
と、そんな事を考えながら何の気なしにルカの言葉通り金目美人さんとあーのこーのと言い合っている枯れじぃに目を向け、謎ボードさんかもーんと胸中で唱える。
…あれ、そういえばすっごい今更だけど人間相手に謎ボードさん使ったのってお初? あ、以前ちみっこ皇女に使ったから二回目か。
ってゆーか思い返してみれば今まで謎ボードさん使った相手ってファザー、マザー、ごぶりん、駄女神、根っこゴーレム、ミヅチさん、ちみっこ皇女くらい?
我ながら貰ったスキル全然ゆーこーかつよーしてないね、そりゃ駄女神やルカから叱られるよねとちょっと反省。 出会った相手に対してスキル発動した回数が少ないってレベルじゃねーでござーます。
次からはもっとちゃんとスキルを有効活用するぞいっ、と決意する我の目の前にポンと浮かび上がるいつも通りの透明な謎ボードさん。
さっき出た薄紫色の亜種ボードさんは駄女神からの通信とかそーゆーの限定っぽい? とかどーでもいい事を考えつつ謎ボードさんに視線を走らせる。
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名前:ロー=フォー
種族:ハイ・ヒューマン(♂)
状態:正常
称号:剣鬼
Lv :56
HP :840/840
MP :248/248
筋力 :186
耐久 :142
敏捷 :242
魔力 :108
幸運 :172
【スキル】
剣術
斬撃の理
剣鬼
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{斬撃の理:
斬撃を極めし者が至る極地。
彼の者の一撃はあらゆる耐性、性質、硬度を無視し斬るという結果を齎す。
ただし、自身と対象の技量によりその結果は確実性を失う}
{剣鬼:
自らの剣に魔力を宿す技。
宿した魔力を消費する事で強度の強化、斬撃の飛翔、剣身の延長を行い、斬ったモノの魂を喰らい剣に宿る魔力へと変える事ができる}
気になったスキルをぽちぽちしてみたらこんな答えが返ってきました。
うん、あれですね。
とりあえず以前ルシェルから見せて貰った一般ぴーぽーな成人男性のステータスを振り返ってみませう。
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種族:ヒューマン(♂)
Lv :1
HP :50/50
MP :8/8
筋力 :10
耐久 :10
敏捷 :10
魔力 :10
幸運 :10
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一般人と比べると酷いってレベルじゃねーですだよ、おまけにこのスキルとかもうね。
この枯れじぃ、もしかしたら根っこゴーレムとでもまともに遣り合えるんじゃなかろうかしら? 流石にミヅチさん相手じゃ手も足も出ないだろうけども。
そしてそんなスキルよりもステータスよりも、何より気になるのが種族でござーます。
今思い浮かべた一般ぴーぽーな成人男性の種族はヒューマン(♂)、んで今見た枯れじぃの種族はハイ・ヒューマン(♂)。
ハイってなんぞや? と思いつつ種族の欄をぽちっとな。
{ヒューマンの上位進化種。
ヒューマンの限界であるLv50の制限を失い無限の成長を得る。}
人間やめちゃった系のヤバイ生物だったでござる。




