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84:我とルカとお昼ご飯うぉーず


 やっと戻ってきたね遅いよシェラさん我お腹がペコちゃんだよさぁ行こうやれ行こういざ魅惑の食堂へ~。

 と、歓喜の舞を踊りながらシェラさんを熱烈歓迎していた我だったのですけれども。


 「ごめんなさい、これからすぐに戻らないといけないからお昼はこれで我慢してね?」


 そんな言葉と一緒に、鳥籠モドキの中に差し入れられるのは大きめのお皿にずらりと並んだサンドイッチ。

 水筒っぽい筒から果実水を水皿に注ぎ、鳥籠モドキの中にあった水皿と交換したシェラさんはそのまま扉を閉めて施錠をする。

 こんなおっきなお皿が丸ごと入る辺り無駄に扉大きいよねこの鳥籠モドキ、とか我的にはもっと山盛りでもいいのよ? とか考えている内にシェラさんは背を向け部屋を出て行こうとする。

 その後ろ姿に言い様の無い焦燥を覚え、鳥籠モドキの柵をぺしぺし叩いてシェラさんの気を引くと、その音に気付いたシェラさんが振り向いて苦笑をする。


 「お夕飯までには戻るから、大人しく待っていてね?」


 そう言い、柵の隙間に指を滑らせ我の頭をうりうりと人差し指で撫でるとシェラさんはこちらに小さく手を振りながら部屋を出て行った。



 ぽつん、と一匹(ひとり)残された我と、作りたてっぽいまだ柔らかなパンに挟まれた色とりどりの具材。

 それを見るときゅるり、と我のお腹が鳴るのだが、なぜか食べようという気が起きない。

 むぅ、と暫くサンドイッチと睨めっこ。

 言うまでもなくなんの反応も返ってこないサンドイッチに溜息をひとつ。


 …ルカさんや、一緒に食べない?


 (急に何を言い出すのですか)


 我の言葉に呆れ顔で姿を見せるルカ。 その目には困惑の色が見え、本気で我が何を考えているか分からないっぽい。

 あ、とか言ってたらなんか目の色に猜疑の色合いが混ざってきた。

 別に我なにも企んでないよ、ただぼっちご飯寂しいからルカに声かけただけだもんっ。


 (…子供ですか、貴女は)


 困惑と猜疑の色が消え、代わりにジト目と相成りました。

 けどルカちゃんや、我まだ生後二週間ちょいのちみっこだからね?

 紛うことなきおこちゃまですよ?


 そもそもさ?

 我、ばぶーと生まれてから今までご飯時って必ず誰かと一緒だった訳ね?

 ふぁざーまざー兄弟姉妹ズとかシェラさんとか食堂で我の魅力にやられて群がってくるウゾー&ムゾーとかとか。

 それが当然の環境で育ってきて、いきなりぼっちご飯とかそりゃ寂しくない訳ないと思うでござーますよ。

 どんだけおいしいご飯だってひとりもそもそ食べるのは全然味気なかったもん、あんなのもーヤでありまする。


 (…味気、なかった?)


 うな?

 なんか我の言葉にルカがフリーズしたよ?


 (…マスター。 貴女、今までに一人で食事をした事が一度でもありましたか?)


 いや、それさっき我言ったじゃん。

 生まれてから今まで必ず誰かと一緒に食事してたー、って。

 なにさ、ルカってばその若さ(?)でもうボケが始まっちゃったの?


 (でしたら先程の一人の食事がまるで味気なかった、という発言は…?)


 つっこみなかったよ、しょぼ~ん。

 ちらっちらっとルカに視線を送ってみるもなんか真顔でこっちをじーっと見てらっしゃいますね、これじゃれ合う空気と違うって我でも分かるよ。

 んじゃ気を取り直して~、と。


 『ひとりもそもそ食べるのは全然味気なかった。』


 うん、確かにさっき我はそう言ったね。

 けど、我の記憶にひとりでご飯食べた記憶ってまるでなっしんぐですね。

 え、家族が寝静まってる時にマザーミルクを飲んでただろうって?

 周りに家族いるんだしノーカンでしょ。

 キャロットンガラ?

 あれを食事と言い張る君はドラゴン・ブレス・チリを丸齧りするといいと思うよ?


 うん、記憶と睨めっこ完了。

 やっぱり我、ぼっちご飯経験って皆無ですね。

 じゃあさっきの発言は一体なんだったのかって? 知らんがな。

 寧ろ我が聞きたいくらいでござる。


 と、ゆーワケでルカさんや。

 さっきの我の味気なかった発言って一体なんだったん?


 (まさか、記憶が……?)


 ん? ルカなんか言った?

 声が小さくて聞こえなかったんだけども。


 (…マスターは本当にぽんこつですね、と言ったんですよ)


 ひっど!?

 我ぽんこつ違うもん、ちょっと記憶が曖昧でなんか変な事口走っちゃっただけだもん多分きっとおそらくめいびー。


 両前足をじたばたさせながら必死に自己弁護する我を見、しょうがないなぁとばかりにふっと微笑んで。

 ルカは鳥籠モドキの鍵を開け、扉を開き、そのまま中へと入ってきた。

 って中ぁっ!!!??


 (どうしたんですか、ラビがアハト・アハトでも喰らったような顔をして)


 それ、跡形も残んねーですだよ。

 ジト目でそう返しながら目の前のルカの姿をじろじろと眺める。

 身長はー…ふつーに我よかおっきいね、多分10センチくらい?

 家具とかと見比べた感じ、多分縮む前は150センチくらいだと思われるからめっさコンパクトになってるね。

 伸縮自在とかどーゆー身体構造してんの、ルカ?


 (以前、この身体は本体でなく幻体だと説明しましたよね?)


 あー、うん。 なんかそんなん言ってたね、聞いた覚えあるです。

 言ってる事の一割も理解できないワケ・ワカ・ラン♪ 状態だったけども。


 (…まぁ、マスターですしね)


 おおう、なまじっかサイズが我に近くなって全体像が見えるお陰かジト目だけでなく全身から滲み出る呆れオーラまでも認識できてしまうっ!?


 (この姿は本体の記憶を元に魔力で形成しているだけですからサイズを変える程度は容易い事です?)


 更に縮めばマスターに騎乗もできますよ、などと最後に付け足す。 いらんわ。

 しかしそうか、ルカはそんな事もできたのね。

 我ってば仮にも主なのにルカのこと全然知らないよね、何ができるかとかも含めて。


 (気が向いたら教える可能性も皆無ではありません?)


 そこはちゃんと教えてよ…ってこら、何故にサンドイッチを頬張ってるですか。


 (食事に誘ったのはマスターでしょう?)


 そりゃ確かに誘ったけども、だからって我より先に手をつけるのは如何なものかー…、ってもう二個目?

 しかもそれ他のと比べて明らかに数の少ないフルーツサンド!?


 (これ(フルーツサンド)は全て私が頂きますので、マスターは他をどうぞ?)


 ザッケンナオラー!スッゾオラー!


 (できるものならどうぞ)


 ってあ゛ーっ、三個目~~っ!!

 こにょやろふ、ゆ゛る゛さ゛ん゛。


 (私は女です、野郎ではありません)


 こん女郎っ!!


 (はい、よくできました)


 ぱちぱち、と真顔で手を叩いたルカは言うべき事は終えたとばかりに視線をサンドイッチに戻して四個目に手を伸ばす。

 って四個目?

 皿に目をやればフルーツサンドっぽい代物は品切れ状態。

 そしてルカの手には果物と生クリームの挟まれたサンドイッチ。


 そうかそうか、ルカちゃんってばフルーツサンドだけを狙い撃ちして全部胃袋ないないしちゃう気ですかそーですか。

 …うん、よし。

 オレァクサムヲムッコロス!!


 (埃が舞うので暴れないように)


 地を蹴り、前方目掛けて飛び出した瞬間見えない壁にぶつかりあえなく我、撃沈。

 ルカの言動を見るに、今の見えない壁的な何かはルカが発生させたっぽい?

 痛む顔面を押さえながらよろよろと身を起こすと、そこには四個目のサンドイッチを食べ終え満足そうに何かを飲むルカのお姿。

 あのグラスどこから出したし、とか隣にあるあの瓶って以前我から強奪したワイン? とかそもそも今の見えない壁どーやったし、とか疑問が脳をぐ~るぐる。


 したけどそれらはルカが次のサンドイッチに手を伸ばした瞬間綺麗さっぱり霧散した。

 それは我のお昼ご飯だ~~っ!!!











 …え? お昼ご飯うぉーずの顛末?

 我はお皿に乗っていたサンドイッチの三分の一も食べれなかったよこんちくせう。


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