82:我、やっとこ危機感を覚える。
う~みゅ………。
脳内で唸り声を上げる我の前にはバインダーに収められた亜人図鑑から浮かび上がるメッセージプレート。
ルカが教えてくれたこの方法のお陰で本のページを捲るのに苦労したり本に押し潰されたりがなくなって非常に快適である。 …もっと早く教えろし、と思わないでもなかったが。
ところでどうでもいいけどこの亜人図鑑ってちきうだと人種図鑑とかになるのかしら?
あっちでそんなもの発刊したらいろんな所から雑音が入りそうよね、中身のない見当外れで意味不明なのがわんさかと。
まぁそれはさておき、図鑑のページを捲りながらこの世界の人種? について学んでるんだけども。
上中下の全三巻からなるこの図鑑、今読んでる上巻に載ってるのは獣人種だけである。
…は、いいんだけどね?
兎、狐、狼、虎、らいおん、ぬこ、わんわんおはまぁ分かる。
カピバラ、ナマケモノ、象、キリン、オオサンショウウオの獣人ってどんなのさ、いやまぢで。
図鑑と銘打ってる癖にこの本ってば文章ばっかりで挿絵が一切ありやがりやしませんでございますのことよふぁっきん。
写真とか贅沢言わないからせめて挿絵くらい載せろし、図鑑じゃねーでござーますよこんなん。 訴えたら勝てるんでないのかしら? どこに訴えるのか知らないけど。
ってゆーか、これ読みながら我、ふと思ったんだけど。
今まで会った獣人、ってゆーか亜人種ってあのちみっ子兎耳メイドちゃんだけなのよね?
で、我が本に目を通してる理由ってこの世界の知識を身につけるためなのね?
ふつーに考えたら一回しか会った事のない亜人種よりもっと先に学ばないといけないこと山のようにあるんじゃなかろうかしら?
スキルとか魔術とか魔物 etc etc.....。
なのになんで我、そーゆーの全部すっとばして亜人図鑑に目を通してんだろーね。
(収納した際に五十音順に整列されて、何も考えずに一番始めの書に手をつけただけでは?)
ルカちゃん大正解、花マルあげませう。
(いりません)
しょぼ~ん…。
お顔だけでなく気持ち耳もへにょりと垂れさせてみる、同情してくれてもいいのよ?
そんな感情を篭めてちらっちらっと虚空に視線をやれば呆れ顔のルカが溜息を溢しながら姿を現す。
実体? が我の中だか収納バインダーの中にあって、こうやって我の前に現れてるこのルカは幻体だとか以前説明を受けた。 意味? 知らんがな。
まぁアレです、意味が分からなくたってルカがそこにいる事に間違いはないんだから原理とかそーゆー面倒なお話はぽいすればいーのです。
(人はそれを思考放棄と言います?)
我、生まれて一月とたたないおこちゃまだから難しいこと考えるの無理。
そもそもあの時のルカの説明、長過ぎる上に難しい言葉と意味不明な単語のオンパレードだったもん。 おこちゃまな我でなくてもふつー理解できないもん。
(そこで問い返す事をしないから毛玉とか生きた素材とか見た目詐欺とか言われるんですよ?)
他の二つも大概だけど最後の酷過ぎないっ!? ってゆーかそれ言われた記憶ないんだけど? 今初めて言われたんだけどっ!?
(マスターの性根を理解すれば誰も同じ意見になると思いますよ?)
ならないし、我見た目詐欺とかじゃないしっ! 中身もちゃんとらぶりーでぷりてぃーな兎だもん。
と、両前足をぐっと握って力説する我の言葉に対するルカの応答は哀れみの眼差しと溜息でした、こんちくせう。
おにょれ、主に対する数多の不敬。 そろそろ我も我慢の限界ですだよ?
もーちょっと優しくしてくんなきゃ、延々と恨み言を呟きながら涙目で恨みがましい視線をルカに注ぎ続けちゃるぞっ!!
( ………。)
や、やめろし。
これ以上ないくらいの憐憫の眼差しを浮かべながら優しく頭撫でるなし。
私は分かってますよ~、的な微笑み浮かべるなしっ。 包み込むように優しく抱き締めんなしっ!!
哀情よりも愛情をぷりーーずっ!!!
と、まぁコントはこの位にしまして。
ルカさんや、厨房は相も変わらずでござーますか?
(さながら戦場の様相ですね。 城内に備えている備蓄倉庫にも引っ切り無しに人の出入りがあります)
む~、折角あの鳥籠モドキな牢獄から出られたのにそんな状態じゃポッケないないしに行けないじゃないのさ。
(マスターには実感がないでしょうが一応この国は現在戦争の最中なのですから至極当然です?)
その戦争が本格的になっちゃって巻き込まれる前に色々とげっちゅーしておさらばしたいのですよ、我は。
いやまぁおーさまがいるって事はここは王都なんだろうし戦禍に巻き込まれるのは当分先だろうけどもさ。
(ああ、それでしたらマスターの期待は大外れですよ。
この国の王はこの都市で相手を迎え撃つつもりで備えを行っていますし)
本土決戦とか馬鹿じゃないのあの筋肉さんっ?!
(相手の質と数が問題のようですね)
? …どゆコト?
(相手の部隊は全員がヒト種ベースの合成獣、それもあの神属が選りすぐった優秀な個体ばかりのようです。
ヒト種を凌駕する、それこそ下手をすれば野性の獣どころではない身体能力にヒト種の知能が合わさった兵士が二千強。
進軍方向から戦地を選択して布陣する敵戦力を迂回するくらいは訳無いかと?)
…もしかして、お猿さんとかみたいに木々をぴょんぴょこ跳ねたりできちゃう?
(すべてではありませんが空も飛べるようですね)
ああうん、おっけー把握した。
そんなんまともに待ち伏せとかできる訳ないよね、そりゃ目的地で待ち構えるしかないよね。
(はい、なのでその結果王都が戦場となりました?)
……我、呪われてんのかしら?
元いた巣穴ではご近所さん? の根っこゴーレムに襲われて追い回されて、挙句に上位の水精霊から吹き飛ばされて。
やっと安住の地っぽい所に落ち着いていずれはふぁざーまざー兄弟姉妹ズを招いてぬるま湯生活に浸ろうとか思ってたら安住の地が戦地に変身、しかも相手はルシェルが逃げれって言ってた神属とかもうね。
実は神様の加護って祝福じゃなくて呪詛?
む~ん、非常に惜しいけど逃げらんなくなる前にとんずらした方がいいのかしら?
(そんな備蓄で大丈夫ですか?)
大丈夫じゃない、大問題だ。
仕方にゃい、午後はどーにか食べ物げっとすべくすにーきんぐみっしょんと参りませうか。




