77:我、不貞腐れる。
「……その、ごめんなさいね?」
ふんだっ、いくら謝られたって許さないもん。
時を追う毎にどんどん仲良しになっていく我のおなかと背中、空腹を誤魔化す為に飲み続けたせいでほぼ空っぽになった水皿、陽の沈みと共に徐々に室内を支配していく暗闇。
ものっそい心細かったんだからねっ、めっさ怖かったんだからねっ!!
どれだけ頭を下げられたって簡単には許してあげないもんっ!
「その、ほら……。 厨房でサンドイッチを作ってきたからこれでも食べて機嫌を直して? ね? ねっ?」
…サンドイッチに罪はないから貰うけど、それでも許さないもん。
けぷっ、ぽんぽんが満足であります。
だからって許さないけどね、ごはんのゆーわく程度で懐柔されたりしないけどねっ!!
「お腹もいっぱいみたいだし、遅くなったけれどお風呂にしましょうか」
わーいお風呂~♪ ……ハッ。
かっ、懐柔しようったって我は負けないもん、そー簡単に許したりしないもんっ。
「痒いところはないかしら?」
ありませ~ん。 あっ、そこそこ、その耳裏をコリコリするのもちょっとお願いします。
……許してないよ? ただ償いをしたいっぽいからごほーしさせてるだけだもん。
「はい、もう一口」
ほふぅ、全身うぉっしゅにマッサージ、お風呂上がりの推定風魔術とブラッシング、さっぱりした所によく冷えた果実水で喉を潤す。
余は満足でござーますよ~……♪
(私の主がチョロインだった件)
チョロくないもん。
(と、あっさり誑かされた毛玉が何かほざいていますね。
寝言は寝具の中で言わないと駄目ですよ?)
寝言ちがうもん、我チョロくないもん、まだシェラさんの事許したわけじゃないもん。
(等と訳の分からない事を口走っており、警察は対応に頭を悩ませているとの事です。 さて、次のニュースです……)
いや、警察もニュースもこの世界には存在しないから。 ……存在しないよね?
ルシェルの性格考えたらついやっちゃったんだ的に悪ノリしてそうだけどないよね?
(自走する自動販売機は存在しますけど、警察機構やニュースは少なくとも私は知りませんね)
自走式自動販売機っ!?
(この世界では金銭と引き換えに様々な物品を入手できるゴーレムの亜種として扱われていますね。
ちなみに襲われたら反撃もしてきます、現し身の一種ですから敵対イコール死と考えて間違いはないかと)
…ルシェル=ルュスト、ばかじゃないの?
つい真顔でそう言ってしまったけどこれ絶対我は悪くない、と思う。
(何を今更?)
デスヨネー。 うん、やっぱり我は悪くないっぽい。
ルシェルのばーかばーか。
『毟るぞ毛玉』
ひゅいっ!?
今なんか地の底から響くようなおどろおどろしい声がものっ凄い悪寒とセットでやってきたよっ?!!
(…マスターに一言物申す為だけにルシェル=ルュストがこの世界に干渉してきたようですね)
ふぁっ!? …あれ、確かルシェル達ほんとーの神様がこの世界に干渉したら世界の魔力がどーとかでよろしくないんじゃなかったっけ?
(世界の崩壊<マスターへの殺意だったのでは?)
世界の方を重視しようよっ!?
(ルシェル=ルュストはイラッときたらつい殺っちゃうんだ♪ といった所では?)
つい、で済ませていい問題と違う思うとです。 そして勝手に殺すなし、我生きてるし。
(生かされている、の間違いでは?)
アーアーキコエナーイ。
「さ、それじゃそろそろ寝ましょうか」
こっちの声は聞こえていないんだから当然と言えば当然だけど、唐突に話題振ってくるよねシェラさん。
まぁ扉を蹴りっ放しで疲れたし我も寝るのは大賛成だけども。
さっきの会話の続きが怖いから打ち切れて大歓迎だけども。
さてさて、それじゃ新しいマイルームへ~……。
…あり、そいえばシェラさん新しい鳥籠持ってったっけ?
そう思いながらシェラさんの方へと顔を向けるとにこにこ笑顔のシェラさんが我に両手を伸ばしているところで。
そのまま抱き上げられてシェラさんベッドへ運送、枕元にぺふっと下ろされる。
あるぇ~? と首を傾げるもどうにも伝わっていないっぽくシェラさんはベッドへ横になり、我に手を添えて優しく横たわらせて。
「それじゃ、お休みなさい」
そう言ってにっこり笑顔で我の頭を人差し指で撫で、そのまま瞳を閉じ、しばしの間を経て寝息が零れ始める。
…っておーい、シェラさんやー?
起き上がってほっぺたをむにむにとつついてみても反応はなし。
振り返って室内を見渡してみても、目に付くのは忌々しい鳥籠モドキだけ。
これは、あれですか……?
(どうやら、忙しくて鳥籠の手配ができなかったようですね?)
…つまり、もしかして、我ってば明日もあの鳥籠モドキの中に閉じ込められる系?
(おそらく?)
~~~~~~………っ。
天を仰ぎ、両手を口元に添え、腹の底から空気と共に…──。
シェラさんの、ばかーーーーーっ!!!
我の声なき絶叫が、静かに室内に響き渡った。




