8:我、 "世界" の一端を知る?
名前はどうでもいい、種族:神も今は置いておく。
だが、称号の道化神だけは決して見過ごせない。
道化神、ヴォーパルバニー種の創造主。
暇つぶしの思いつき、というとんでもない理由で先代三匹と我を産み出した存在。
つまり、我が生を受けてより散々に酷い目に遭ってきたのはこの美人さんのお陰という訳で。
跳躍、そしてエアジャンプ。
十分な高度を確保後、今度は上方でなく前方へと目掛けて宙を蹴る。
狙うはその綺麗な御顔、恨み晴らさでおくべきか。
中空で廻旋、推進力と遠心力と恨みつらみを己の右足に籠める。
喰らえ、必殺ラビ・ソバッt…――
「刃物を扱っている傍で暴れない、危ないでしょ」
ぺちっ。
あふん。
美人さんに果物包丁の平ではたき落とされ卓上に沈む。 我、無様。
「いくらお腹が空いて気が立っているからって八つ当たりは関心しないよ?」
そう言いながら剥きあがったリンゴを乗せた皿を我の目の前に置く美人さん。
くっ、こんなエサに我が釣られウサー。
しょりしょりしょりしょり。
リンゴには勝てなかったよ……。
「よく食べるね、キミ」
自身もリンゴを一切れ摘みながら美人さん。
貴女様のお陰でこんなに飢えてるの、理解してる?
「いや、それ冤罪だし」
産んでおいて責任はないと申すか、この鬼畜っ。
「人聞き悪い言い方しないの」
デコピンはやめたまえ、サイズ的に洒落にならないから。
衝撃で視界にお星様が舞って耳がキーン言ってますよ?
「確かにヴォーパルバニー種を作ったのはボクだけど、それはあくまでもシステムとしてだよ? ヴォーパルバニー種への加護もボクの意志で付けてる訳じゃないし」
つまり?
「ヴォーパルバニーっていう存在を作っただけで、その後キミを含めた四匹が生まれたのはただの確率」
要するに初代様から我に至るまで、誕生に直接関わってはいない?
「うん、偶発的に発生した方が面白そうだったからね」
でもそれ、結局貴女が元凶なのには違いありませんよね?
「運、不運までボクのせいにされても? そもそもキミみたいに他所から来た挙句ヴォーパルバニー種に生まれるなんて予想のし様がないし」
他所から来た?
「キミにも理解できるように言うなら異世界転生ってヤツかな? そういう読み物、あの世界には沢山あるんでしょ?」
まぁ、うん。 いや、予想はしてたというか状況的に他の可能性は思い浮かばなかったけどもさ。
やっぱりそういうアレなのね、我。
「先に言っておくと別にキミが特別だとか選ばれたとかじゃないからね? システムの選定基準って基本ランダムだから」
そこは別にどうでもいいです、別に我自分が特別な存在だとか思ってないし。 ってゆーか前の我がどんなだったかまるで思い出せないし。
知識はあるけど記憶はないって変な感じだけど。
知識チート? 内政TUEEEE? モンスターに分類される掌サイズのウサギにどうしろと?
「記憶を消しても知識は残したままで転生させるのは本来それが目的だからキミはバグもいいところなんだけどね」
それ? どれ?
「知識チートとか内政TUEEEってやつ?」
なんでそんな事を?
「ん~…。 キミさ、箱庭ゲームって知ってる?」
ポピュ○スとかシム○シティ?
「うん、最近だとマイ○クラフトなんかだね」
それはタイトル位しか知らないけどもとりあえず箱庭ゲームに関しては知ってる。 けど、なんで急にそんな話題?
「 "世界" はボク達にとっての箱庭ゲームなんだ。 で、キミみたいな知識だけ残した転生者は、所謂mod?」
………え、我パッチ扱い?