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69:我、自分の所持スキルをまるで理解していなかった事を知る。


 流石のシェラさん、侍女(メイド)長の肩書きは伊達ではありませぬ。

 「それじゃあお夕飯にしましょうか」 と声をかけるもベッドでぐで~と伸びてる我を見て軽く首をかしげ。

 しばし考え込んだ後、(おもむろ)に我の前足を片方摘まんで軽く持ち上げ、力無くぷらーんと垂れ下がる我の前足にようやく得心がいったご様子。


 「ごめんなさいね、気付いてあげられなくて」


 と、軽く頭を下げ謝罪をしてくる。 人間(ヒト)様が、毛玉(ラビ)にである。 なんの躊躇(ためら)いもなくこーゆー事できる人って素敵よね、いやほんとに。

 そんなシェラさんだからこそ我も信頼してるし安心して身を寄せてるとです、だからそんなに謝らなくていいのよ? とシェラさんのお手々に前足を置いて慰め……ようとしたけどそもそも前足が動かないので仕方なくシャクトリムシよろしくヘコヘコと移動してシェラさんのお手々に顎を乗っける。

 そのままころんと転がって、お手々を枕にじーっとシェラさんのお顔を見つめてみれば。

 辛抱たまらないっ! とばかりに抱き上げられて全力でむぎゅ~と抱き締められますた。

 うむり、慰め成功。

 ただシェラさんや、もーちょっと加減してくれないと我の中身が出ちゃうとですよ?




 存分に我を愛で満足したシェラさんのお手々に乗せられて食堂へ移動し食事を済ませ、現在再びシェラさんルームにてオンザベッド。

 シェラさんのお風呂準備を待っている間、ベッドの上でぐで~としている訳ですが。


 …どうやら我、ただじーっと待つとかぼんやり過ごすとかが駄目っぽい。

 手持ち豚さんだと何かしよう、何かする事ないかとさっきから首だけ左右にゆらゆらさせたり後ろ足をじたばたさせてみたりしながら脳内でプラン練り練り中。


 (一応、子供の掌に乗るサイズの豚型の魔物も存在しますよ? 鋼鉄ですら溶かすレベルの腐食毒を体表に持ち合わせていますが)


 根絶してしまえそんな危険物。

 ってゆーか突っ込んでよ、ふつーに反応されるとかボケ殺しにも程があるじゃないのよさ。


 (それを言うなら手持ち無沙汰でしょう。 ……はい、これで満足ですか?)


 …ルカ、我ひとつ学んだよ。

スルーって、実は優しさだったんだね。


 (果てしなく面倒臭いですね、貴女(マスター)


 うっさいやい。

 改める気は皆無だけど自覚してるんだから放っといてくださりやがられなさい。

 と、ゆー事でこの話はやめよう。 ハイ!! やめやめ。

 なんだか 『うわぁ…、ないわぁ……』 と言わんばかりの空気を感じるけども我は気にしない、気にしないったら気にしない。

 そんな事よりも今のこの退屈極まりない状況で話し相手(ルカ)ができたという事実の方がよっぽど大事なことである、よって雑事はポイーで。


 (…いい性格してますよね、マスター)


 褒めてくれてももうあげられるようなもの持ってねーですだよ?

 いやまぁもしかしたらあの蜂蜜みたくトンデモな代物をポッケないないしちゃってるかもしれないけども。

 でも今は、そんな事はどうでもいいんだ。 重要なことじゃない。

 ルカちゃんルカちゃん、お風呂の準備できるまで暇だから我の話し相手になって?


 (その気持ち悪い猫撫で声を今すぐやめなければ三枚におろします)


 我、魚じゃないよっ!!?

 あとそのマジトーンやめてください、ほんとにやりそうでめがっさ怖いです。


 (本当に()る気ですから当然です?)


 …今、なんか酷いルビで喋ってなかった?


 (なんの事です?)


 え、でも今なんか確かに幻視()えた気が……いややっぱりなんでもないですごめんなさい。


 (そも、私はマスターと違って暇ではありません。

  退屈を凌ぎたいのでしたら書庫から盗み出した本でも読んでいればいいでしょうに)


 いや、そりゃ確かにルカからバインダーから出さずに本を読む方法を教わったから前よりは読みやすいしページも(めく)りやすいけどもね?

 シェラさんがいつ戻ってくるかも分からないのにバインダー開いてたりして、もしその光景見られでもしたらどーすんのさ。


 ( ・ ・ ・ ・ はい?)


 ほえ?

 なんだかすごく間の抜けたルカの相槌に、つられて我も首をかしげて相槌返し。

 そのまましばし無言でお見合い。

 実際のところ、ルカは声だけで表に出てきてないから我が一匹(ひとり)首をかしげて虚空を見つめてるだけなんだけど。


 (…もしかして、マスター気付いていません?)


 何がでせう?


 (その収納バインダー、マスターと私以外には見えませんよ?)


 ………………ぱーどぅん?


 (もし見えているのだとしたら、食堂であの男性から追われた際にネズミ呼ばわりで済んでいた訳がありませんよね…?)


 おお、言われてみれば。

 お手々をぽむ、と叩きたい場面だけども前足が動かないので断念、おにょれ。


 (その収納バインダーは、飽くまでもマスターが収納を使用する際の自身のイメージの具現化した形です。

  ですからその元となる空間魔法の使用者であるマスターと、魂レベルでマスターと繋がっている私以外には見えません)


 へ~、これそういう代物だったんだ。

 ん? ってゆー事は我以外の空間魔法の使い手が収納を使う際はバインダー以外の形式ってゆー事?


 (多分そうなのでは?

  マスター以外に空間魔法、及び魔術を行使できる存在はいませんから断言はしかねますが)


 ほみゅ。

 でもよく考えてみればただの箱~、とか宙空に現れる謎空間~、とかよりこっちの方が見やすいし便利よね。


 (咄嗟に取り出すにはひと手間かかってしまいますけどね)


 普段使いの利便性と緊急時の有用性、両立させる案とか我には思いつかないし普段使いが便利な方がいいのでこれでよかとです。

 そもそも緊急時~、とかの切羽詰った状況だとどんな形式だろうと焦ってやらかしちゃう自信あるもん、我。


 (ああ、確かにその光景は目に浮かびますね)


 うん、どっかの狸型のロボットみたくあれでもないこれでもないって取り出してはポイする光景が容易に浮かぶとです。


 (タヌキガタノロボット、というのがどういった代物なのかは分かりませんが想像は容易ですね。

  攪乱、もしくは相手を警戒させるという意味では一考の余地程度はあるかもしれませんが)


 もったいないからやです。


 (…左様ですか)


 左様でありまする。

 けどまぁそういう素敵な事ができるなら早速読書タイムと参りませう。

 大量にポッケないないしたままタイミングが掴めなくて結局積ん読(つんどく)状態だし。

 でわでわ、バインダーさんかも~………。


 ガチャリ。


 「お風呂の準備ができたわ」


 あまりにも絶妙のタイミングで風呂場の扉が開き姿を見せるシェラさんに、我バインダー召喚ぽーずのままフリーズ。


 「…? 何をしているの?」


 なんでもござーませぬ。

 ただちょっと柔軟体操的なアレがソレで手乗り毒豚さんが大気圏突破中なので気にしないでくだちぃ。


 (…妙なポーズを見られて羞恥心でパニックを起こすのは構いませんが。

    マスターの声、もとい心の声は彼女には聞こえませんからね?)


 死体きっくはヤメテッ!!

 もうやめて! とっくに我のライフはゼロよ! 思考回路はショート寸前なのよっ!!


 (はいはい、分かりましたから深呼吸して落ち着きましょうね?)


 スーハー、スーハー……、よし、われはしょうきにもどった!


 「?」


 ベッドに寝転がって妙なポーズから突如腹筋で跳ね起き、唐突に深呼吸を始める毛玉(ラビ)

 うん、シェラさんから見たら首をかしげるしかない光景デスネ。

 眉根を(しか)めつつ、我を持ち上げ風呂場へと移動するシェラさん。

 まぁきっと我の奇行なんていつもの事とすぐに記憶からないないしてくれることでしょう。 ……してくれるよね?


 あ、そいえばちょっと気になったんだけども。

 我と違って暇じゃないって言ってたけど、ルカって普段なにしてるん?


 (マスターが収納している本を読んでいます。

  世界(システム)から知識を引き出す事もできますが本は書き手の思考も相俟って思いがけない発見がありますので)


 …ルカ、我のバインダーさんの中身見れるのん?


 (取り出したり収納することはできませんが、アクセスだけなら可能ですよ?)


 そーなのかー。 …我よりルカの方が我のスキルを使いこなせてるんじゃね、コレ?

 いかん、このままでは主の威厳ががががが。


 (そんな元から存在しないものを求められても?)


 デスヨネー。


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