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61:我、ルカと仲直りする。


 昼食を終え自室に戻り、仕事へと赴くシェラさんを見送った後、五分ほどじっと待機。

 ……よし、戻ってくる気配なし。

 転移で鳥籠から脱出、ベッドの上にぽふんとダイブ。

 柔らか~なその感触が我を眠りに(いざな)うがその誘惑をどうにかこうにかギリギリ払い除け、取り出だしたりまするは収納バインダー。

 静かにベッドの上に置き、開くタブは 『大事なもの』。

 9ポケットバインダーの一番左上にルカのカードがあるのを再確認後、身体構造的にか~な~り~厳しいが正座の体勢に移行しようとしてふと思う。

 これで我の謝意が通じるのか? 否、この程度で通じる筈が無いっ!

 急遽体勢変更、正座から五体投地に。

 土下座など生温い。 これが我の全力謝意の証、土下寝であるっ!


 では、いざっ! 当方に謝罪の用意あり!!

 ルカ大明神様、どうか怒りを鎮めてお姿をお見せ下さいませ~。

 ナマンダブナマンダブ~。

 はらったまっ! きよったまっ!

 エロイムエッサイム! エロイガブッサイク!

 …なんか間違ってる気がするような気がしなくもないけどきっと気のせい、なむなむ。




  三分後…──



 Zzz……なむ…、にゃむ……Zzz.....。


 「…本当にどうしようもないポンコツですね、これ」


 むにゃ…なんか、聞こえ…た……気………Zzz。


 「 ・ ・ ・ ・ 。」


 ゲシッ。


 おうふっ?!

 突然脇腹を襲った一撃に跳ね起きる。 何、何が起こったの!?


 「おはようございます?」


 すわ何事かとキョロキョロ周囲を見回していた我ととても素敵な笑顔を浮かべるルカのお顔がご対面。

 なんか額に青筋が浮かんでる気がするけど気にしない、そんなん今はどうだっていい。


 ルカ、キターーーーーーッ!!


 万感の想いを込め、全力でルカの顔に飛びつき抱きつき頬擦りをする。

 うおォン、我は今もふもふフェイスハガーだ。


 「…今すぐ離れろ、さもなくば(えぐ)る」


 その声は、今まで聞いた事のあるルカの声と違ってドスの利いた冷たい、とってもこわい声音でした。 (毛玉、後に述懐す。)




 「…それで、用件は?」


 高速離脱からのムーンサルト土下座を敢行し床にひれ伏す我とベッドに腰をおろし絶対零度の冷視線でそれを見下ろすルカ。

 主従関係? ナニソレタベラレルノ?

 前回に続きやらかしちゃったのは完全に我の方なので主従だとか関係なしにこの状態が当然なんだけども。

 まぁそれはさておくとしましてですね、本日ルカさんをお呼びしたのはですね。

 そろそろご機嫌を直して頂きたいな~、とまぁそんな風に思いましてですね。 えー、つきましては……。


 「…長い、要点」


 ごめんなさいがしたくて呼びましたですっ!?


 「先までの前振り、いりました?」


 ごめんなさいいざとなると心の準備的なアレがアレで素直にお喋りできないお年頃だったんですごめんなさい。


 「とりあえず混乱しているのは理解しましたので落ち着いて下さい?」


 はいっ、落ち着きまする。

 とりあえず深呼吸、吸ってー吸ってー吸ってー吸……ゲフォッ!? ゴホ、ブホッ!!?


 「…はぁ」


 なんか溜息っぽいのが聞こえた気がしたけど今はそれどころ違うます。

 ゲホッ、ゴホゴホっ…。 あ、誰か背中さすってくれてる、コホッ。

 けふ、こふっ。 …ふぅ、やっと落ち着いた。

 本音を言えばちょっとお水でも飲んで喉を潤したいところなんだけど、水を飲みに鳥籠(へや)に戻ると土下座体勢が維持できないから自重中。

 流石に今回は許して貰えるまでしっかり謝意を示さないといかん場面なのですよ、多分。


 「構いませんよ、別にもう怒っていませんから」


 ほえ? マジで??

 頭をあげ~…た程度じゃ見えないから上半身を反らせて上を見やるとなんだかもの凄く微妙な表情を浮かべたルカのお顔が。


 「ええ、本当です。 今はこんなポンコツを相手にいちいち腹を立てていた自分が心底情けないと猛省している所です」


 …わちき許された? それともアウトオブ眼中?

 どちらにせよあれです、哀れまれるくらいならいっそ怒鳴られたり殴られたりした方がましです。

 丸い刃はなお痛いんですよ?! …oh、またなんか妙な電波ががが。


 「とはいえ、ただ許すというのもマスターの今後にとって良いものではありませんし。

  お詫び代わりに以前厨房でくすねたワインと木箱を頂きましょうか」


 わいん? …あぁ、パラセアのよdへぷちっ!?


 「わざわざ名前を言わなくても結構です」


 い、いえすまむ。

 十分に理解できたので踏んづけた上にぐりぐりするのはやめて下ちぃ。

 ところで数本あるんですけども何本渡せばいいのでせう?


 「全部です」


 …アッハイ。

 あ、ところで気になったんだけどパラセアってルシェルのご同輩?


 「この世界の人間が造り出した架空の神ですね」


 そーなのかー。

 疑問が一つ解決、いやはや疑問に対して答えが返ってくるって素敵に無敵ですね。

 謎ボードさん鑑定だと抽象的過ぎたり言葉が難しくて今イチピンと来なかったりすることもあるんだけどルカはちゃんと我に理解できるように説明してくれるから実にグッドです。


 「脳みそスポンジのポンコツを相手取るには適当な応対が原則です、詳しく説明してもどうせ理解できないでしょうから」


 …うん、泣きませんヨ? だって否定なり反論なりをしてもきっとあっさり論破されるもん。

 あんまりおつむが上等じゃないのは我自身自覚しているのですよ、ぐすん。


 「多少なりと、自覚があって何よりです」


 フォローのないお言葉ありがとう、それでこそルカですねこんちくせう。

 まぁでもこんなやり取りができるような状況に戻れただけでも万々歳ですね、はい。

 …でも、たまには甘やかしてくれてもいいんじゃよ?


 「寝言は寝てどうぞ」


 ちくせう。

 いいもんいいもん、後で一兎(ひとり)寂しく不貞腐れるもん。


 「ご自由に?」


 ちくせう、ルカなんか嫌い……じゃないけどキライだー。 うそだけどキライだー。


 「…マスターのそういうポンコツな所はどうしようもありませんねぇ」


 ええい、その微笑ましい四割、憐憫五割、見下し一割の表情をヤメロォッ。

 収納バインダーを開いて食べ物タブをぺちり、パラセアの涎(ワイン)と甘い匂いのする木箱のカードをぺちぺち。

 …ところでこの木箱って結局なんぞ?


 「中身はクイーンビーの蜂蜜ですね、ひと匙で大金貨一枚の価値があると言われています」


 ダイキンカ?


 「この世界の通貨のひとつです。 石貨、鉄貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、宝貨となります。

  各貨幣十枚で大貨、百枚で一つ上の貨幣一枚分ですね」


 ほみゅ、仮に石貨を一円と考えて~……金貨だといちおくえん?

 大が付くと十枚分だから更にゼロを足して…………ひとさじでじゅうおくえん?

 なにそれこわい。


 「クイーンビー自体が希少な存在である事と、この蜂蜜の持つ薬効からそれだけの価値があるとされています。 尤も私やマスターには特段効果のない薬効ですが」


 ちなみにその薬効ってなんでせう?


 「若返りですね、ひと匙で十年は若返るといわれています」


 …せんせー、なんでそんなトンデモな代物が厨房なんかにあったとですか?


 「この城の主にでも聞いて下さい」


 ご尤もで。

 けど蜂蜜って木箱に入れるものだっけ?


 「この木箱の中に蜂蜜を収めた壷が入っているようですね。 逆に言えばそれでも尚遮断できない程に濃厚な香りを持っている訳ですが」


 床の上に現れた木箱を持ち上げ、鼻先に近付け嬉しそうに微笑むルカ。

 その様子からどうやらあの中に入ってる蜂蜜、相当に素敵な代物みたいですな。

 薬効はどうでもいいみたいに言ってたのにあの反応、我のおいしいものレーダーがびんびんに反応するとです。

 ルカさんや、その蜂蜜我にもひ── 「お断りします」 ──とくち、ってせめて最後まで聞いてから反応しようよ。


 「どの道お断りしますから大した違いはないかと」


 せ、せめて交渉くらい……。


 「譲る気は絶無ですので時間の無駄です?」


 ひと舐めだけでいいから……。


 「確実にそれで満足する訳がないのでお断りします」


 そこまでっ!? そこまで素敵な代物なのそれっ!!?


 「ひと口味わえば以後普通の蜂蜜は口にできないと言われていますね」


 ・ ・ ・ ・ 。


 「そんな潤んだ瞳で媚を売っても無駄です、マスターの性根は既に知っていますから」


 うわーん、ルカのばかーいじわるー。

 ほんとはそんな気一切ないけどキライになってやるーっ!!


 「はいはい」


 で、でも今なら特別にキライにならないであげなくもないデスヨ?

 具体的に言うとその蜂蜜をひと口くれればそれで…──。


 「マスター」


 はい?


 「マスターは、私に謝るためにこうして呼び出したのですよね?」


 うん。


 「そして、これとそこのワインはお詫びの証として差し出した。 違いますか?」


 …違わないです。


 「なのに、それを自分にも寄越せと?」


 …うっ。


 「マスターがどうしても、というのであれば吝かではありません。

  が、マスターの言う謝意とはその程度のものだったのですか?」


 …うぅ。


 「…それで、どうします?」


 …う、うぅ~……。

 ええい、もってけドロボウッ!


 「はい、よくできました」


 ニッコリ笑顔で我の頭を撫でてくるルカ。

 蜂蜜は心底惜しいけど、この笑顔を拝めたなら安いものだと思いました、まる。











 …今度また厨房に忍び込もっと、あれがもいっこないか探しに。


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