59:我、落ち込んだり立ち直ったり焦ったり。
いや、我もその可能性がーって考えて焦ってたよ? 焦ってたんだけどさ!
普通一回呼ばれただけで名前として定着する!?
ノーカン、ノーカンだからっ!
やり直しをよーきゅーする~~~~っ!!!
と、心の中で叫んでみても現実さんはとっても残酷で。
うちのめされた哀れな我は兎耳っ娘の腕に抱かれたまましょんぼり落ち込むのであった、ちくせぅ。
なんかよく見たらレベルも上がってるけど多分さっき首ちょんぱした雀っぽい鳥のお陰かな? 今はそれどころじゃないけど、ぐすん。
「ペットだとしたら飼い主さん心配してるのかな? まさかその人もシロちゃんがお城に忍び込んでるなんて予想も出来ないだろうけどね」
くすくすと笑いながら我のおでこを指でつん、とつつきそのままぐりぐりしてくる兎耳っ娘。
すまぬが娘さんや、我は今反応してあげられる程余裕がないんですだよ。
そりゃまぁ名前とかあった方が便利といえば便利なのかもしれないけどさ、シロって、シロって……。
見た目そのままやん、毛玉とかちびもふとか呼ばれるのと大差ないやん。
そんなんが名前として定着するなんて……。
あァァァんまりだァァアァ。
と、心の中で暑苦しい漢泣き。 ちなみに精神ダメージで体もぷるぷる震えてたりしまする。
「どうしたの、シロちゃん? 震えてるけどもしかして寒い?」
違う、そうじゃない。
否定するもそれを伝える術もなく、勘違いしたままの兎耳っ娘の両手に抱かれて胸元に押し付けられましたとさ、むぎゅ。
しかしほんとにどうしよう、名前って一度付いたら固定なの?
役場に書類提出したら改名認められたりしない? 魔物が書類提出したとして受け入れられるのか知らないけど。
諦め悪く謎ボードの名前の項目を睨め付けるもそれで何かが変わるでもなし。
これから先、我はシロなんていう見た目そのままな名前で生きていかなきゃいけないのか~、と考えると絶望ががが。
え? 毛玉ファザーや毛玉マザーの名付け親が何をほざいてるのかって?
生まれたての乳幼児の失敗くらい大目に見て許してくれてもいいと思うデスダヨ?
それにホラ、名乗らなければバレやしない……ってそっか、名乗らなければバレないのか。
確かルカは鑑定スキルは我以外持ってないってゆってた。
つまり我が自分からバラさない限り我がシロなんていう見た目そのままな名前なのを他者が知る事はまずない訳で。
…いや、そもそもラビが名乗るとかどんな冗談よって話ではあるけども。
さておき、そう考えれば別に名前が付いたとしても実はそこまで問題でもない?
ステータスボードなるものに触っちゃうと表示されるかもしれないけどなら触らなきゃいいじゃんって話だし。
そもそもそんな代物に触れ合う機会があるのかどーかもわかんないしね。
なんだ、そう考えたら別になにも問題ないじゃないか。
精々ルシェルとかルカとかにからかわれる程度でー…って、それはそれで問題だよこんちくせう。
むぅ、最悪ルシェルに土下座して改名してもらうことも視野に入れとこう。
しかしアレですね、こー悩み事が解決してほっとしたりするとなんか急にお腹が減ってきたりしない? 少なくとも我はする、ってゆーか今がまさにそう。
今日のお昼は何かな~? 野菜たっぷりのサラダがあったら嬉しいな~。
…ん?
…おひ、る?
はた、と気が付き抱き潰されている現状から無理矢理身じろぎして隙間を作り、自身のお腹を撫でてみる。
状態:えんぷてぃ、そろそろお腹の虫が大合唱。
これが示すところはつまり………。
時間がピンチでお部屋がシェラさんでヤバイがお昼で戻ってくる?!
顔面真っ青、滝汗状態で慌てて兎耳っ娘の抱擁から逃れるべく必死でもがく。 ふぉおぉぉ、は・な・せーーっ!!
「わっ!? ど、どうしたのシロちゃん?」
兎耳っ娘がびっくりした顔でこちらを見ているが今はそれどころじゃござーませぬ、今はただひたすらに時間が惜しい。
右へ左へと体をゆさぶり隙間を作り、渾身の力を籠めて兎耳っ娘の腕の中からセルフ射出。
飛び出した勢いを着地後ころころと地面を転がる事で無力化し、すちゃっとポーズと共に起き上がり姿勢を正す。
そのまま即駆け出したい衝動を抑え振り返り、ぽかーんとした顔でこちらを見つめる兎耳っ娘にびしっと片前足で敬礼。
我へのぼでーうぉっしんぐ等の奉仕、感謝する。
また今度時間ができたら遊んであげるから今日のところはこれにて失敬。
そんな意を籠めた敬礼を終えた我は一目散に部屋へと向けて駆け出していった。
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後に取り残された少女は、しばし呆然と駆け去っていった白い毛玉を見送った後…───。
「…あ、お洗濯しなきゃ」
突然の事に理解が及ばず、フリーズした脳は再起動後本来の目的を掬い上げ体へと指令を下し。
どこか心ここに在らず、といった呆然とした表情とまんまるお目々のまま、少女は気もそぞろにのろのろと行動を開始したのであった。
…洗濯が遅かった事と微妙に洗い方が雑だった為先輩に怒られる羽目になったのはご愛嬌。




