6:我、迷い込む?
周囲を見渡せば風に舞い散る花びらの海。
色とりどりに咲き誇る薔薇の園の中に我はいた。
……ココドコ?
我、ついさっきファザーが落としてくれた木の実に齧りついたところだよね?
木の実ドコ?
さっきまでいた草原ドコ?
てゆーかファザーと兄弟姉妹ドコー?
兎は寂しいと死んじゃうんだぞー?
「それ、迷信じゃなかった?」
―― 後方から、声。
少なくとも我は孤独死する自信がある。 産まれて一週間、ずっと兄弟姉妹+マザーと一緒だったし。
「そんな、自信満々に言われてもねぇ」
なんだか呆れられたっぽい。 我的には死活問題なのに。
と、いうかそもそもここはどこで。 マイファミリーはどこに行って。 何より我の木の実はどこにやったぁぁぁぁーーーっ!!
「家族より木の実の方に力が入ってない?」
我、オナカ スイタ。 ぜりー モウ ヤダ。
「…リンゴ、食べる?」
よこしやがられなさいましお願いします。
「何語?」
リンゴ、早よ。
「…はぁ」
溜め息と共に空気が揺らぐのを感じ振り向くと、そこには薔薇のアーチに囲まれた東屋があった。
断言してもいい、さっきまでこんなものはなかった。
何ここ? 我、不思議の国にでも迷い込んだの?
「どっちかと言うとキミは誘い込む側なんじゃない?」
失礼な、我の誘い込める場所なんてマザーのいる巣穴くらいのものだし。
理解不能の謎園美少女添えなんてどうやれば辿り着けるのか寧ろ聞きたい位である。
そう、美少女。
我が今まで会話をしていた相手は前髪ぱっつんの腰まである長い銀髪の美人さんであった。
着ているのは紫色と黒を基調にしたゴスロリっぽい着物? 和風っぽいゴスロリ?
とにかくそんな感じの、フリルとリボンがあちこちに飾り付けられたひらひら~で派手なおべべである。
脱ぎ着や手入れが非常に面倒臭そうであるな、うむ。
「否定はしないけど、そういうのも含めて楽しむのがファッションだよ」
我、兎でよかった。
ボディソープがないのが不満だけど。 シャンプーがないのが不満だけど。 リンスが(ry
「全身せっけんでいいんじゃない?」
酷い言われようである。 けど悔しい、言い返せない。
って、あれ?
そういえばなんでさっきから会話が成立してるの?
我、テレパシー的な何かに目覚めた?
「ないない。 ボクが心を読んでるんだよ」
ぷっ、ぷらいばしーの侵害だーっ!?
「仕方ないでしょ、そうでもしないと意思の疎通できないんだし。 そしたらリンゴ食べられなかったよ?」
なら許す、存分に読み取って我を甘やかして下さりやがられませ。
「はいはい、仰せのままに」
苦笑しながらリンゴの皮を剥く美少女。 む、勿体無い。
薔薇のアーチを潜り抜け、東屋へと駆け込む。
そして見様見真似、エアジャ~ンプッ。
地面を蹴ってぴょんっ。 空中を蹴ってぴょん、ぴょん、ぴょんっ。
あ、これ結構きつい。
卓上に辿り着いた時には息も絶え絶えでした、ぜーはー。
だがしかし、なんのこれしきっ。
「何してるんだか」
リンゴを剥きながらジト目で我を見る美人さん。
その視線を無視して途切れることなく剥かれ続けるその皮を卓上に待機して齧る我。
うむ、美味なり。
「…えい」
皮剥きをするその手を一旦止め、リンゴを持ち上げる美人さん。
皮に齧りついたまま吊り上げられる我、ぷら~ん。
「りりーす」
我の咥えている位置から少し上の部分の皮をナイフで切断する美人さん。
結果、我は卓上に落ちる訳で。
けたけたと笑う美人さん、睨む我。 人様で遊ぶな。
後ろ足をだんだんと鳴らして抗議する。
「ごめんごめん、お詫びにいいものあげるから」
そう言って美人さんが出したのは……桃?
直径5センチ程でなんだか金色だが見た目は確かに桃っぽい。
これ、齧り付いて大丈夫な代物?
歯、欠けたりしない?
「見た目だけだから大丈夫、身体に害はないよ」
ふむ、なら早速。
かぷっ、しょりしょりしょり。
うん、これも非常に美味。 じゅーし~。
〔特殊技能:魔眼を取得しました。〕
・・・・ほわっつ?