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56:我、ご同輩(?)に遭遇する


 …ああ、うん。 なんとなく分かった、このスキルの使い方。

 そりゃそうだよね、今回我が宿ったのが偶然で本来ヴォーパルバニーってただのモンスターだもん。

 発動に条件とか付けたら使えるわけないからシンプルに発動できるようにするよね。


 "首刈リ兎" さん、変に記憶や知識がある所為で我が穿って考えてただけで実際はものっそい簡単に発動するスキルでした。

 相手に殺意を向ける、ただそれだけ。

 あっはっは、いやーとってもシンプルで使いやすいスキルだねぇ。 ……こんちくせう、我のばかー。


 と、凹むのはこの辺にして。

 思考の海から自身をセルフサルベージし、そっと周囲に目をやれば。

 噎せ返る様な血の臭い、真紅に染まった芝生、目の前に転がる首の無い躯、刎ね飛ばされ、樹木の枝に突き刺さった雀っぽい鳥の首。

 どう見ても大惨事です、本当にありがとうございます。

 とか言ってる場合じゃないし、本気で洒落にならないですだよ?!

 後ろを見やれば壁どころか窓にまで血が飛んでるし、こんなの見られたらシェラさんどんな反応すんのさ。

 て、ゆーかっ!

 我も血に(まみ)れて真っ赤っ赤なんだけどどーすればいーのさこれっ!?


 頭を抱えて唸る事暫し、導き出された結論は。

 『我知~らない、とりあえず水場を探して我だけは綺麗にしてこの大惨事は記憶からないないしちゃおっと』でした。

 後でこれを見た人がどんな反応をするか? 知らんがな。

 矮小な我にできる事なんてありゃしませぬ。

 言葉も操れず説明もできない以上目を閉じ耳を塞ぎ我知~らないを貫くしかないのである。


 え、無責任だろう?

 逆に考えるんだ、生まれて二週間程度のモンスター相手に責任を求める方が間違っている、と。

 …よし、自己弁護おーけい。

 でわでわ早速水場水場~。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 「よいしょ、よいしょ……」


 中身のみっしり詰まった洗濯籠を懸命に運ぶ一人の少女。

 身長150にも満たぬ小柄な体躯と見た目相応の腕力では流石に辛いのか、時折籠を地面に下ろし休息を挟みながらも少女の足は洗濯場へと向かう。

 そんな彼女の頭頂部には一対の長く白い耳、そして臀部にはふわふわとした毛玉のような尻尾。

 少女は所謂獣人と呼ばれる亜人の一種族である。



 亜人。

 エルフやドワーフ、獣人などを指すこの言葉が使われるようになったのは果たしていつからだったか。

 ただ一つ分かるのは人間種が世界に繁栄しこの大陸に覇を唱えたときからであろう。

 その瞬間から人間、という種がすべての基準となり、人に似た容姿を持ちながら異なる種を亜人、と呼び自らとは違うものと定義する事となった。

 無論、亜人などと呼ばれた者達がいい顔をする訳も無く、人間種と他種は相容れぬものとしていくつもの争いが生まれた。

 エルフの持つ膨大な魔力、ドワーフの造り出す高品質の武具やアイテムの数々、獣人の圧倒的な身体能力と種族毎の特徴による身体機能。

 それらを持つ亜人と呼ばれる者達と比すれば、言うまでもなく人間という種は最弱であった。


 が、数の暴力はそれすらも覆し。

 結果として人間種がこの大陸に於いて支配種族となり、亜人種は人間種より劣った存在とされている。

 故に、亜人を見下す傾向にある者は数多く、また多くの国家において亜人種は差別や理不尽な扱いを受けている。

 が、言い換えれば多くの国家、に属さない少数の国家においては亜人は人間種と変わらぬ扱いをされている道理で。

 このガオルーン皇国も、そんな国家のひとつであった。



 「やっと着いた……」


 皇城の中庭に設けられた、井戸に併設された洗濯場。

 少女はようやく辿り着いた安堵の溜息と共に籠を下ろし、額を拭う。


 「って、駄目駄目。 これからお洗濯しないといけないんだから」


 溜息と共にやる気も漏れ、思わずその場に腰を下ろしかけた自分を(かぶり)を振り叱責し。

 再び中身の詰まった籠を持ち上げようとした少女の耳が、ぱちゃぱちゃという水音を拾い上げる。


 「?」


 周囲を見やるも人影はなし、自分のように誰かが洗濯をしに来ている風はない。

 はてな、と首を傾げた少女の耳を再度打つぱちゃぱちゃという水音。

 おそるおそる水音のした方へと向かい、水の張られた大きな(たらい)を覗き込んだ少女と。

 (たらい)の中でぱちゃぱちゃと自らの体を洗っていたらしい毛玉の目が合う。


 「「…………。」」


 次いで訪れるは静寂、互いに身じろぎする事無く目線を外すどころか瞬きすらせず見詰め合う事暫く。


 「…ラビさん?」


 こてん、と首を傾げてそう呟く少女の頭頂部では、首の動きに従って横向きになり、重力のままに若干垂れた目の前の毛玉にあるのと同じ耳がぴこぴこと小刻みに震えていた。


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