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55:我、殺意の波動に目覚める?


 よく考えたら元々ロクでもない危険生物じゃん、我。 という事実に思い至った瞬間あっさりと眠りについた我です、おはようございまする。

 お目々くしくし、軽くのび~、そしてシェラさんに片前足を挙げてご挨拶。

 うん、今日も一日元気に頑張ろ~!

 え? 昨日の疑問とか思い浮かんだ危険がピンチなアイデアはどーしたのかって?

 首刈り兎(ヴォーパルバニー)が今更そんなん気にしても、ねぇ?

 おぎゃーと生まれた時点でどう考えてもワールドエネミーじゃん、我。

 今更厄ネタの一つや二つ増えたところで変わりゃしないし、バレなきゃただのらぶりぃな仔らびです。

 どれだけとんでもない能力持ってたって、基本はおこちゃま相手でもあっさり殺されちゃうのがラビクオリティなのですよ、ルシェルから聞いたドラゴン種より強いラビとかだったら話は別かもだけど。


 と、いう訳で深く考えるのはやめて単純に使わなきゃいいだけの話じゃんってことです。

 家族と再会、平穏な日々、我の望みはそんな所である。

 ぶっちゃけ家族と再会後、改めてここに来て家族ごとシェラさんに保護して貰えれば全部達成しちゃいますな。

 お城に住み着く番犬ならぬ番兎、主な仕事は愛想を振り撒くこと。

 …あれ、最高の兎生(じんせい)設計なんじゃないコレ?

 番してないじゃんって? 毛玉に無茶ゆーなでごぜーます。 番兎と書いてペットと読むとかなんかそんな感じで。


 などと考えながらシェラさんとお風呂、ブラッシング&推定風魔術(ドライヤー)、朝食とここに来てから恒例になった流れを経て、しばらく愛でられた後。

 昨日と同様、我はまた鳥籠の住兎(じゅうにん)となり。


 「お昼には戻ってきますから、それまで大人しくしておくように。 いいわね?」


 次はお昼だけじゃなく夕飯も抜くわよ? と恐ろしい事を言い残してお仕事に向かうシェラさんを片前足を振って見送りつつ脳内でカウントを開始。

 カウント数が百になった所で出入り口の扉の前まで転移、扉に耳を押し当てて物音がしないかを探り。

 問題なし、と判断。 シェラさんが戻ってきてたりしていない事を確認し今度は窓枠目掛けて転移する。

 窓の外には陽が差し、綺麗に刈り揃えられた芝生。

 お城の正門周りとかの人の目につくところなら兎も角、こーゆートコまできっちり手入れするって相当な労力かかってそうだなーなどと考えながら左右確認。

 右よ~し、左よ~し、前方よ~し、上よ~……くないわ、なんか鳥さん飛んでる。

 まさかあの鳥、我を襲ったり食べたりしないよね? 見た感じ中型犬くらいのサイズあるけどシルエットは雀だし大丈夫だよね? ……あれ、雀って雑食だっけ?

 うん、きっと大丈夫。 仮に襲われても我の方が早いだろうし部屋の中に逃げ込めば追ってはこれない……筈。


 そんな感じでちょっと尻込みしたりもしたけど、暫くしたら鳥さんどこかへ行っちゃったんで覚悟を決めて窓の外へと転移。

 芝生に着地後、周囲……特に上方に気を張るが気配も姿もなく耳に届くのは風に揺れる草花と木々の大合唱コラボレーションのみ。

 ほっと一息、胸を撫で下ろし前足で頬をぽむぽむ、と軽く叩き気合を入れる。

 シェラさんが戻ってくるのはお昼頃、あんまり時間はないんだからさくさくいかないとね。

 今回の目的はずばり…── 、今まで放置してた厄スキルの最たるもの、 "首刈リ兎" さんのスキル検証でございます。

 正直我としてもこのスキルは使いたくない、というかぶっちゃけ無かった事にしたい気持ちはあるんだけども。

 家族捜索中にまたあの根っこゴーレムみたいのに襲われる可能性を考えるとホラ、ね?

 と、言うか身も蓋もない話根っこゴーレムどころかゴブリンに捕捉されただけで死ねるのである、そりゃ自衛の手段は必要ですよね。

 ファザーみたいに戦闘能力ないもんなぁ、我。 せめて索敵とかそーゆースキルでもあれば話は別なんだけどねぇ。

 後はまぁ、何の気なしに使ってた謎ボードさん召喚とか空間魔法の方がよっぽど厄いスキルっぽいんで我の中の危険度メーターがぎゅーんと下がりました。

 代わりに謎ボードさん召喚スキルと空間魔法の危険度メーターが爆上がりしますた、いやそれでも使うけど。


 そういった諸々の事情により晴れて解禁と相成った "首刈リ兎" だけど、じゃあ早速試そうかという訳にはいかないのがこのスキルの厄介なところ。

 相手を一撃で葬るスキル、である以上対象がいないと使えないっぽいのよね、この困ったちゃん。

 なのでさてどうしたものかと頭を悩ませていた我の目の前をぶーん、と通過した羽虫さん。

 なんとなしにそれを目で追っているとふと思い浮かんだ訳です、生物であるなら虫でもいんじゃない? と。

 その時は既に羽虫はどこかへ飛んで行っちゃってたけど、いくらメイドや執事が侍る王様の住むお城だろうと探せば虫なんていくらでもいるのは間違いない。

 いやまぁ虫ケラ侵入絶対許さん結界とか存在するなら話は別だけど、現にあのとき我の目の前を飛んでたしね。

 よって虫を探して "首刈リ兎" の実験台にしよー、というのが今回お部屋を抜け出した理由でございまする。

 きょろきょろと周囲をよ~く見渡してみればあっちの花が咲いてる辺りには蝶、足元に広がる芝生の中には蟻、近くに生えてる木の葉には毛虫っぽいの。 …なんかきらきら輝いてオーロラっぽいのを周囲に振り撒いてるけど毛虫だよね、あれ?

 …うん、深く考えたら負け。 この世界の毛虫はあーゆーのもいるっていう事にしておこう、主に我の精神衛生上。


 こほん、と咳払い。

 気を取り直して足元をちょこまか動いている蟻に視線を向けて。

  "首刈リ兎" 発動ッ!!





 …何も起きないね?

 転移とか収納バインダー呼び出した時みたいにスキルを使った、っていう手応えとゆーか感覚は訪れず。

 蟻は相も変わらずちょこまかと移動中。

 発動、と念じてからたっぷり十秒程待ったけど何も起こる気配はござーませぬ。

 何これ、どゆ事?

 ただ念じるだけじゃ駄目なの? それとも何か発動させる為の動作とかポーズとかそういうものが必要なの?



 蟻を指差して発動ッ!!


 声は出ないけど "首刈リ兎" と叫びながら発動ッ!!


 なんかかっこいいポーズをとりながら発動ッ!!


 蟻に全神経を集中し凝視しながら発動ッ!!



 結論、蟻は何事もなくちょこまか移動して巣穴に潜っていきました。 がっでむ。

 ちょっとルシェルさーん、こんな欠陥スキルくれるとか何考えてるワケ~?

 せめて発動方法くらい教えて~……ってその為のルカか。 我の頭上にぴこんと電球が灯る。

 でわでわ収納バインダーを取り出し~の、上部のタブを大事なものに切り替え~の、ルカのカードにタッチし~の。

 って、おや?

 ルカのカード、なんか真っ赤なバツ印がついてますね?

 つっついてみるとー……痛ッ!? なんかバチィッっていった。

 おまけにルカがカードのままのところを見るにこれはあれですか、使用禁止とゆーか呼び出し拒否とゆーかそーゆーアレですか。


 …ルカ、いくらなんでも怒り過ぎじゃない?

 いい加減機嫌直してくれてもいいと思うですよ、我?

 そりゃ確かにお胸様ももねもねした挙句シェラさんよりちっこいとか評したのは悪かったと思うけどもさ、我だってちゃんと謝っ…て………?

 ……今気付いた、我謝ってないわ。

 呼び出して即踏み潰されて気絶したあの時は仕方ないにしても、破廉恥痴幼女のところで再会した時に謝る機会はあったのにまるで思い至らなかったし。

 それどころかルカにあの破廉恥痴幼女同様ラメ入りショッキングピンクな褌装備疑惑ぶつけちゃってるし……。


 やヴぁい。

 我、まったくと言っていいほど許される要素が無い。

 ご機嫌伺いの賄賂とか言ってないで即謝ればよかったのに何してたし、我。

 そんな風に思考が負のスパイラルに陥り頭を抱えて転げまわっていたのが悪かった訳で。

 バサリ、という羽音にはっと気付いて見上げたそこにはさっき見た雀っぽい鳥が一直線にこちら目掛けて急降下している姿。

 我のばかー、で埋め尽くされた脳裏に咄嗟に転移で逃れる、という思考が生まれる隙間もなく。

 スローモーションのように、雀っぽい鳥の鋭い嘴が自身へ目掛けて迫ってくる様子をただ目に映す。


 僅かに空いた思考の空白に生まれるは死にたくない、という言葉。

 同時に、その言葉を中心に思考を埋め尽くす他の言葉を塗り替える勢いで様々な言葉が生まれていく。


 『生きたい』 、 『家族に会いたい』 、 『おいしいものが食べたい』 。


 『何故死ぬ?』 、 『殺される?』 、 『誰に?』 、 『どうして殺されなければならない?』 。


 『ふざけるな』 、 『死んでたまるか』 、 『ならどうすればいい』 、 『決まっている』 。



     『 オ マ エ ガ シ ネ 』 。



 次々に湧き出る言葉に塗り潰され、文字の識別すらできない程に黒く染まっていく思考の中。

 それらを更に塗り替えるかのように滲み出る、漆黒の思考。

 それは容易く我を侵食し、湧き上がる衝動は殺意という姿を得て最早目と鼻の先に迫った嘴の主へと奔り…─── 。




 雨が降った。

 真紅の、生暖かい雨が………。


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