52:我、このセカイについてちょっとだけ学ぶ。
突然現れたルカの姿に我、びっくり。
そしてルカの口から零れ落ちた台詞で、も一度びっくり。
オネエサマ? 今ルカ、オネエサマって言った?
あ、そうか。 あの破廉恥痴幼女がオネエサマっていう名前なのか。
「俺様に名前なんざねーぞ?」
現実逃避くらいさせてよこんちくせうっ!?
しかし名前じゃないとなると、オネエサマっておねえさまでお姉様なONE-SAMA?
え? ルカって駄女神が我のサポートの為に産み出したのよね?
そのおねーさま? ってゆーコトはこの破廉恥痴幼女も我のサポート要員さん?
「違げーよ、俺様はこの箱庭の知的生命体のサポートユニット」
ほえ?
「本っつー形態でこの箱庭に生み出された、知的生命体が乗り越えられない試練の救済措置。
ぶっちゃけて言えば折角の観測対象があっさり死んでしまわないようにする為の連中の保険だな」
ルビ自重、と思ったけどルシェルが世界はぼくらの箱庭ゲーム~、とか言ってたから特に問題ない…のかな?
てゆーかそんな保険かけるくらいならもーちょっと生命が生き易い環境にするとか他にする事があったんじゃないのん?
「神々の箱庭創造は基本的に理と枠組み、後は環境などを創るだけ。
そこから先箱庭をモデリングしていくのは神々の構築したシステムですから設定環境下で存在可能な生命種とその分布の選定、生息環境や地形などは完全にノータッチです」
首を傾げているとルカが説明してくれました、疑問に答えが返ってくるってステッキーですね。 …だからそろそろ機嫌を直してくれてもいいんじゃよ?
チラリと上目遣いでルカを見ると汚物でも見るような冷たい視線が返ってきました、ぐすん。
でも我負けない、要するに世界観設定だけぶん投げて後はお任せ?
「だな、ちなみにシステムにとっちゃ生命種はどれも同じ代物だからヒト種だからって優遇したりはしないぞ。
お陰で初期の箱庭創造じゃヒト種の絶滅はデフォルトだったとかで俺様たちサポートユニットが創られて送り込まれることになったってワケだ」
しかし残念、返事を返してくれたのはルカでなく破廉恥痴幼女でした。
いや、疑問に答えが返ってくる時点で感謝すべきなんですけどね? 選り好みする資格なんてないんですけどもね? でもさ、できるなら、ね? 分かるでしょ?
そんな想いを篭めた熱視線をしかしルカさん無情のスルー、ちくせう。
…って、あれ?
「どした、ちびもふ?」
破廉恥痴幼女がイコールヒト種が滅びない様にする為の存在だとしたら。
もしかして、我がポッケないないしたらまずかった?
「いや、別にいんじゃね? 俺様たちがいようがいまいが滅ぶ時ゃ滅ぶし、ヒト種。
それにそもそも俺様たちは知的生命体のサポートユニットだぞ?
ヒト種のサポート専用ってこたねーし、ってゆーかちびもふも普通に知的生命体の範疇だろ?」
…あー、そっか。
我が元の思考に引っ張られて勘違いしてただけで、そもそもヒト種=神に愛されて救われる存在な訳ないよね。
そりゃそうだ、カミサマにせよシステムさんとやらにせよヒト種なんて多数作った生命体の内の一つに過ぎないもんね、特別扱いなんてする道理がないよね。
「知性持ってる生物だと 「オレサマ、エライ」 「オレサマ、トクベツ」 なんて考えはどいつも持ってるけど、結局ガワが違うだけで神々視点じゃ多々ある生命体の一種だしな~。
まぁ、基本非力貧弱ですぐ死ぬからこそ知恵を振り絞って環境を発展させていくヒト種は見ている分には楽しいとかで多少目をかけられちゃいるけど」
連中の生み出した道具や風習なんかを気に入ってるからこそ神々はその姿を模してる訳だしな、とからから笑う破廉恥痴幼女。
そいえば確かにルシェルといい我のリンゴを奪ったちみっこといいルカといいこの破廉恥痴幼女といい、どれもこれもヒトガタですもんね。
納得しうんうんと頷いている我に、破廉恥痴幼女が眉根を顰める。
「なぁ、その呼び名どうにかなんね?
なんか俺様が変態扱いされてるみたいで嫌なんだが」
されてるみたい、も何もどこからどう見ても立派に変態でござる。
真っ当な扱いされたいならそれ相応の格好なさいよあーた。
「うっせーなー、んじゃこれでいいか?」
言葉と共に破廉恥痴幼女の姿が一瞬光に包まれて。
光が消えた後には胸元にサラシを巻いてぶかぶかのYシャツを羽織った破廉恥痴幼女の姿が。 尚、前ボタンを留めていない為ラメ入りショッキングピンクの褌が丸出しな模様。
どう贔屓目に見ても変態です、本当にありがとうございます。
「ちゃんと胸元も隠したし上も羽織ったろーがっ!」
文字通り羽織っただけやん。
て、ゆーか何そのあざといチョイス、そもそもこの箱庭Yシャツあるんかい、と。
「おっかしーなー、俺様の知識の中にはこれが淑女の正装って書いてるんだが……」
捨ててしまえ、そんな知識。
ってゆーか創造者的に考えてそれ植えつけたのルシェルデスヨネあんちくしょう。
道化神じゃなくて愉悦神とかなんじゃないの、アイツ?
首を傾げる破廉恥痴幼女と頭を抱える毛玉、少し離れたところで我関せずとそっぽを向くルカ。
お願いルカさん、あなたのおねーさまなんだからちょっとは手伝ってー……って。
よく考えたらルカの格好をそのまま模写してもらえばいいんじゃ?
ちょっと破廉恥痴幼女さんや、そこら辺どうよ?
「かたっ苦しそう、着るのめんどくさそう、窮屈そう。 よって却下」
さっきみたいにぺかーっと光ればいつの間にか着てましたー、になるんじゃないのん?
「なるけどめんどい、今これ羽織ってるのも窮屈だってのにあんなん着てられっか」
サラシ&Yシャツ一枚ですら窮屈ってあーたどんだけなのさ……って褌一丁の裸族でしたね。
しっかしなんなんだろうねこの姉妹格差、同じ存在から生み出されたにしても違いすぎやしませんですかね。
…ん? 姉妹? 同じ存在に生み出された?
……と、いう事は?
もしかしてもしかすると、ルカもあの袴の下にラメ入りショッキングピングな褌……?
むんずっ。
そんな事を考えた瞬間我の両耳がひと掴みにつかまれ、そのまま上へ参りま~す。
そして我を掴んでいる相手とご対面。 うん、分かってたけどやっぱりルカ=サンですね。
「焼死と溺死と感電死、どれがお好みですか?」
…ゴメンナサイ。
エアジャンプで軽く跳ね、その勢いそのままに両後ろ足を畳みながら前傾姿勢へと移行、耳を掴まれた体勢のまま空中で華麗な土下座。
はぁ、という溜息と共に耳が解放されたのでどうやらお許し頂けたらしい。 ルカさんマジ女神。
「確かに同一の存在に生み出されはしましたがお姉様が悪い意味で特殊なだけです。
端的に言いますとあの馬鹿の悪ふざけの産物です」
わぁ、凄い納得。
そして創造主や姉的存在相手でも容赦ないのね、ルカさん。
破廉恥痴幼女さん、微妙に凹んでらっしゃいますですよ?
「基礎知識や性格がどうであれ、システムの根源と繋がっている以上常識や良識くらいはある筈ですから。
にも関わらずあの様では苦言の一つも呈したくなります」
ん、システムの根源と繋がってる?
「私たちサポートユニットの知識源はシステムそのものですので。
必要に応じてシステムにアクセスする事で必要な情報を随時引き出しています。
お姉様の場合は私よりも上位の権限を与えられていますので情報の引き出しだけでなく書き込みも可能なようですが」
書き込み?
「理 への干渉です」
よくわかんないけどなんだか凄そう?
「…マスターにも理解できるように言うのであれば、魔法を創造する事が可能、ということです」
マホー……そう、それですよルカさん。
魔法と魔術ってどー違うのん? 我、ずっとそれ聞きたかったの。
「… "見定メル者" で、魔法や魔術という単語について詳しく調べてみた事は?」
……え、そんなんできたの?
あの日、我を見つめるルカの切なそうな、辛そうな、憐れみの篭もった、それでいて見下すような蔑みの色をも湛えたなんとも言い難いあの眼差しを、我は生涯忘れることはなかった。
毛玉、後に述懐す。




