51:我、禁呪の書を紐解く・・?
むぅ、おうちに帰りたいとか家族に会いたいとか考えてたお陰で蓋をして考えないようにしてたファザーの安否とか兄弟姉妹ズが無事逃げれたのかとかマザーが一兎寂しく家族の帰りを待ってやしないかとかネガネガな感情がぽこじゃか湧き出て我センチメートルな気分にござる。
…うん、ツッコミ役のいないボケほど虚しいものはないね。
求む、相方。 我一兎だけじゃ微妙に間がもたんです。
ルカが機嫌直してくれれば問題解決かもだけど、あれ以来カードをつついてみても呼び出せないのよねぇ。
いやだからって出てきてまた踏み潰されるとかは簡便だけどもっ。
謝ろうにもまず対話ができないからとっかかりがないのよねぇ……ルシェルさんや、この哀れなラビにルカのご機嫌取り用アイテムとか授けてくれてもいいんじゃよ?
われは こくうに いのりをささげた。 しかし いのりは むなしく ちゅうにひびいた。
デスヨネー。
ま、いくらなんでも四六時中観察してる程暇神じゃないだろうし仮に見ててもわざわざ干渉してきてくれたりはしないよね、ふつー。
うん、馬鹿やってないで時間を有効に使おう。
端的に言うと読書の続き、ってゆーか知識の収集。
ではでは、現状とりあえず用無しになったアルロー大陸図を収納バインダーに戻して、と。
代わりに取りい出しましたるは~……色々と不安はあるけどやっぱコレだよね。
恐る恐るつついたカードが飛び出し光を放ち、収まった後に残された一冊の本。
タイトルは 『 ラビでもわかる優しい禁呪入門 』 。 作者はるしぇる=るゅすとさんという方だそうです。
……うん、我知ってるよ、これきっと開いたらろくでもない事が起きるアカン代物だって。
でも好奇心には逆らえないの、もしかしたらろくでもない事が起きない可能性だって微粒子レベルで存在してるかもしれないしっ!
あと、単純に禁呪ってゆーのに興味があります。
我の無駄に高いMP&魔力と禁断だか禁忌だか呼ばれる類の呪が合わさればきっと素敵ぱわーあっぷできる筈。
目指せ資源からの脱却、そして根っこゴーレムとかの外敵から家族を守れるスゴイパワー。
ではでは、期待を胸にページおーぷんっ!
『きさま! 見ているなッ!』
…そっとページを閉じる。
前足でお目々こしこし。
ちょっとひと息、鳥篭の中に転移してお水で喉を潤して~。
深呼吸後、覚悟を決めて再度ページおーぷんっ!!
『こっちみんな』
…嗚呼、これは紛れもなく駄女神の作った代物デスネ。
て、ゆーかこの本、こっちに反応して文字が変わってる?
・ ・ ・ ・ ・ 。
パタン、ペラッ。
『ナズェミテルンディス!!』
パタン、ペラッ。
『このラクガキを 見て うしろをふり向いた時 おまえは……』
ほぇ?
ついつられて振り向いた我の目の前には50センチ程の真っ黒な球体。
なんぞこれ、と首を傾げる我の前でその球体に横一文字の裂け目が現れ、それがゆっくりと開かれていく。
上下に歯があり、舌までもある。 一言で言えば、それは巨大な口であった。
呆然とする我の目の前で大きく開かれたそれが、唐突に襲い来て。
反応する間もないまま、我はそれに呑み込まれていった。
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「ほれ起きれ、ちびもふ」
ゲシッ。
頭に衝撃。
「早よ起きんと全身の毛を毟るぞ~?」
ゲシ、ゲシッ。
更に衝撃、しかもさっきよりも強い。
「…分析しとらんでさっさと起きんかいっ!」
ドゲシッ。
先程までよりも強い、というか強過ぎる一撃を受け我の身体があいきゃんふら~い。
って何しやがられますかっ!
宙空で姿勢制御、そしてエアジャンプでブレーキング。
地面に叩きつけられるのを回避し地に足を付けた我が視線を巡らせると、そこには人か、げ………?
「よーやっと起きたか」
視線の先には右腕を曲げ握った拳を腰に当てた一人の少女。
ウェーブのかかった、まともにブラッシングしていないのかあちこちに跳ねたクセのある長い紫髪。
右目には猫足スタンプの描かれた眼帯、左目は閉じられており上下の瞼が細い紐で縫い止められている。
それだけでも十分過ぎるほどにインパクトがある訳だが、それ以上に問題なのが。
…何故に、褌一丁? それもラメ入りショッキングピンクの。
「ラクだから」
恥じらいくらい持とうよっ!?
「いや、基本ここ俺様しかいないし。 恥じらい? 何ソレおいしいの?」
今は我がいるでしょうがーーーっ!!?
後ろ足でダンダンと地を叩きつつ叫ぶと少女がお前は何を言っているんだ、と言わんばかりの顔で溜息を吐く。
「雌のちびもふに見られたところで、なぁ? そもそも凹凸のない俺様の身体に欲情する輩なんぞいなかろ?」
そういう趣味嗜好の輩も世の中存在するからね!?
「いや、そんなんここに呼ばねーし」
…そういえばここどこっ?!
言われて改めて見渡してみると周囲は白い空間、宙空を見やればあちらこちらに巨大な半透明の文字群が浮かんでいる。
ほんとにここどこさ!?
「反応遅くね?」
それどころじゃなかったんだよ悪かったね!?
ってゆーか原因アンタだーっ!!
「いや、俺様別に悪くないだろ? おまえが勝手に妙な反応してただけやん」
容姿から服装から存在そのものに至るまで突っ込みどころの塊が何かほざいてるでござる。
「人様の格好にケチつけるとかおまえどんな育ち方してんだ?」
そんな格好した輩に育ち方がどうのと言われる筋合いはありませぬ。
「それ言ったらおまえなんて素っ裸じゃねーか、俺様より酷いだろそれ」
毛玉に裸とか言われても?
てゆーか我用の服とか存在したら逆に困るデス。
「探しゃあんじゃね、ラビ用の服。 おまえが以前いた第329023観測用箱庭にだってペットに服を着せる頓珍漢な輩はいたろ?」
まぁ確かにいたけどさ、そういう人種も……ってはい? 今なんて? 第32うんちゃら観測用箱庭?
「ん? ああ、地球って言った方が分かりやすいか? こっちにくる前はそこにいたんだろ?」
なんで知ってるし!?
ってゆーか何? 地球もあのあーぱー駄女神と愉快な仲間達が作ったの?!?!
「なんで、って……もしかして俺様が何か分かってない?」
破廉恥痴幼女?
「それ、チョウジョって読めばいいのか?
まぁどーでもいーけど。 兎角、俺様はあれだ、おまえんところにいる……」
少女がそこまで言葉を紡いだ所で、不意に収納バインダーが我の意思とは無関係に現れ、勝手にページがめくれていく。
やがてお目当てのページが開かれたのかそれは止み、代わりに開かれたそのページから一枚のカードが飛び出し光を放ち……。
「お初にお目にかかります、お姉様」
光の中から現れたルカが一礼し、開かれた口元からはそんな言葉が零れ落ちた。




