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50:我、お勉強を始める。


 右を見れば山盛りの人参、左を見ればリンゴっぽいものやバナナっぽいものを筆頭にフルーツの盛り合わせ。

 正面には昨日のお風呂上がりに飲ませてもらった果実水。

 足元には肌触りの良い布地に包まれた柔らかなふともも。

 視線を上にやってみればご立派な双丘様、そこから更に上方を見やればにこにこ笑顔を浮かべながら我を見つめるシェラさんのお顔。

 嗚呼、これが我の望んだ楽園なのね……。

 夢見心地で今生初の幸福に浸ること暫く、我再起動。 ご馳走を前にただ浸ってるだけとか失礼ですしねっ!

 でわでわ、お手々のもふもふともふもふを合わせまして……、いっただっきま~っす♪




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 ガシャンッ!!


 鈍い痛み、全身を駆け巡る衝撃、霞む視界。

 一瞬の浮遊感、そして後頭部に衝撃。

 意識が混濁し、思考は纏まる事無く脳内を幾つものクエスチョンマークが埋め尽くしていく。

 そんな中、真っ先に理解できた事は…──。


 …今の夢かよ、こんちくせう。


 痛みと悲しみを湛えた涙が一筋、我の頬をつたい足元に敷かれた布へと吸い込まれていった。




 ……ショックのあまり動くのも億劫でござる。

 倒れたままの体勢、仰向けのままで布の上に転がりぼんやりと天井を眺める。

 そんな我の脳裏を過ぎるのは山盛りの人参とフルーツの盛り合わせ。

 嗚呼、食べたかったなぁ……。

 今生初の幸福が夢オチでしたという非道に精神がまるで立ち直ってくれる気配を見せてくれませぬ、しょぼーん。

 お部屋抜け出した件でシェラさんにお説教されててお昼抜きだった所にあんな夢だもん、そりゃ落ち込むに決まってるよね。

 …あー、お腹減った。


 けたたましいアラートを鳴らすお腹を宥めすかしつつぼんやりする事数十分。

 うん、ぼーっとするの飽きました。

 横に半回転、ころりん。 そのまま足に力を篭めてすたんだっぷ。

 頬を前足でぺちぺち叩いて意識を切り替え我、復活!

 いつまでも落ち込んでても仕方ないからね、時間は有限だし。


 先ずはアラートを解除すべく空間魔法発動、収納バインダーさんかもーん。

 出てきたバインダーさんを開いて食べ物のタブをぺちり。

 ぺらぺらとページが(めく)られてゆき、開かれたページには黄金桃を皮切りにずらりと並んだ食材のカードが収められている。

 言うまでもなくすべて厨房でポッケないないした品物の数々である。

 しかし……改めて見てみると我ながら節操なく目に付く端から適当に放り込んでたんだなぁ。

 野菜に果物、調味料、燻製の肉に塩漬け魚に腸詰に瓶詰めの酢漬け野菜。

 お酒にお水に茶葉にお皿にティーポットに包丁に俎板に……なんでこんなの詰め込んだし、我。


 さておき、そういった品々のカードが分類? 何ソレおいしいの状態で無茶苦茶に詰め込まれたバインダー。

 うん、非常に落ち着かないというかむずむずするね。

 これ、カードのまま引き抜いて他のカードと差し替えたりできるのかしら?

 首を捻りながらカードをつついていると腸詰がカード化解除されて目の前にぽてん。

 …まぁ、当初の目的のアラート解除はどうにかなったしまた今度色々と試してみよっと。

 本家兎と違ってお肉も食べれるっぽいから食事で悩むことが少なくていいね、うまうま。




 腸詰を胃の中に収め、コップに張られた水を舐めついでに腸詰を(かか)えていた前足も洗ってほふぅとひと息。

 窓の外へ目をやるとまだ普通に明るいし、そんなに長い間寝ていた訳じゃないっぽいね。

 さて、シェラさんが戻ってくるまで何しよう。

 とりあえず部屋を抜け出すのはNGとして、そうなるとやっぱり読書かな?

 そうと決まれば善は急げ、再度バインダーさんを呼び出して書物のタブをぺちり。

 先ずは地理の把握、とアルロー大陸図のカードをつっついた訳なのですが。


 …うん、そりゃそうだよね。

 アルロー大陸図、普通の人間でも一抱えあるような大判の書物だもんね。

 そんなものを鳥篭の中で取り出そうものなら、ねぇ?

 結果? この鳥篭が大きめの代物だったから辛うじて損壊しなかったけどサイズが割とぎりぎりだったから空間のほとんどをアルロー大陸図が占拠して下さいまして。

 哀れちみっこ毛玉は柵と本の間に挟まれて潰されましたとさ、うぼぁー。

 バインダーさんが我のすぐ傍に付き添ってくれていなかったら、辛うじて伸ばした前足が収納用魔法陣に届かなかったら。

 多分、っていうかほぼ間違いなくまたルシェルの所にお邪魔してたんだろうなぁ、我。


 ぜーはーぜーはー、布の上に大の字になって荒い呼吸を繰り返す事暫く。

 多分きっとおそらくめいびー臓器にも骨格にも潰された影響はないと信じたい、そう願いつつ鈍痛の走る身体をどうにかこうにか起こして。

 仕方ないからシェラさんが帰ってこない事を祈りつつ鳥篭の外へ転移。

 そこから更に扉を開けてシェラさんが入ってきた場合即目に付かないよう洋服ダンスの上へと再度転移。

 埃のひとつもない辺りシェラさんぱーふぇくとなメイドさんなんだなぁ、などと益体のない事を考えつつ改めてアルロー大陸図をバインダーさんから取り出す。

 書庫で見た時も思ったけど、この世界我的には非常にありがたくない事に製紙技術がしっかりと確立されてるんだなぁ。


 つるつるの紙を肉球のない、もふもふ前足で悪戦苦闘しながら(めく)ること暫く。

 とりあえずこの大陸の大まかな地理は掴めた……んだけども。

 現在居るのがこの箱庭(セカイ)で唯一人間種の住める環境の中央大陸。 で、それ以外の大陸は暗黒大陸とか呼ばれてるとんでもない化け物どもの住む魔境で、とても人間種の住めるような環境じゃないらしいんだけどね?

 …中央大陸と暗黒大陸の割合が2:8ってどういう事なの?

 この箱庭(セカイ)、化け物天国っていうか人間種には難易度ハード通り越してルナティックなんじゃないの?

 て、ゆーかここに書かれてる化け物っていうのが謎ボードさんに書かれてた "▽◇◎" とやらの事なんだろうなぁ。

 一体どんな代物なんだろね、コレ。 いや、頼まれてもお近づきになりたくないっていうか関わりたくないけど。


 その後も悪戦苦闘しつつページを(めく)って現在地(ガオルーン皇国)の周辺一帯を調べてみたんですけれど。

 どこを見ても上位水精霊の棲む湖とかラビの棲む平原とか載ってませんでした、ちくせう。

 後者は冗談としても前者は載ってると思ったんだけどなぁ。

 早くおウチに帰りたいよぅ、ファザーとかマザーとか兄弟姉妹ズに会いたいよぅ。


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