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40:我、やっと一息つく

 ありのまま、今起こった事を話しますると。

 両前足を合わせて合掌、そのままちみっこに黙祷を捧げ目を開いたらシェラさんが長大な武器を片手で構えてた。

 何これ怖い、なにが起こったし?


 持ってるのは~……なんだっけアレ、バルディッシュ?

 2メートルを軽く上回るバケモノサイズ、斧頭も1メートル強という人類が使用する事を完全に放棄したジョークグッズチックな戦斧。

 数十キロはあろうかと思われるどう考えてもまともに扱える代物でないそれをシェラさんってば片手で持ってます、割と平然と。 もう片方の手? 我を抱きしめたままですが何か?

 なんだ、やっぱりこの人もアカン枠か。


 見た目なんだかきらっきらした銀っぽいんだけどまさか銀製?

 いやでもそれだと硬度的な意味で武器として役に立たないだろうしファンタジー金属ってやつかしら?

 などと我が首を傾げる間にも事態は常に進み続ける訳で。

 ひょい、と後ろ首を摘ままれたと思ったらそのまま持ち上げられ、メイド服の胸元を軽く摘み上げたシェラさんが我をそこに突っ込む。

 晴れて両手がフリーになったシェラさんは満面の笑みを浮かべ、戦斧を片手にゆっくりと筋肉さん(おーさま)へ歩み寄る。

 筋肉さんは顔面が青を通り越して真っ白になって小刻みに震えている。

 シェラさんが一歩踏み出す毎にビクッ、と身体がビクついている辺り躾? 教育? 兎に角こういう状況下に陥った経験は一度や二度ではなさそうである。

 とはいえ胸元に突っ込まれて身動きができずにもうどーにでもな~れ状態の我には何もできない訳でして。

 筋肉さんの悲鳴をBGMに凄惨な光景が繰り広げられるのをただじっと見ている事しかできませんでしたとさ。


 ごっついちみっコンビ? 顔面蒼白で抱き合ってプルプル震えながら目を閉じて互いの耳を塞いでましたよ?

 助けてあげてよー、と思わないでもなかったけど今のシェラさんに立ち向かうとか我にも無理なんで思考を心の底に沈めて蓋をしときました。

 筋肉さん、安らかに眠りたまい。 なむなむ。




 数時間にも感じられる数分が経過し、筋肉さんの悲鳴が絶叫に変わり、嗚咽から懇願へと移り変わり、やがてそれも途絶える。


 「…ふぅ」


 不自然に痙攣する筋肉さんを見下ろしながら一つ息を吐き、構えを解くシェラさん。


 「これ以上待たせて折角の料理を冷めさせてしまっても申し訳ありませんしすぐに運ばせますのでお二人は席へどうぞ。

  話の続きは後程改めて、という事で」


 なんだかサラッと死刑宣告織り交ぜながらシェラさんはごっついちみっコンビを立たせ、席に着かせ。

 後は任せるわ、と使用人さんズに申し付け、床に伏せる筋肉さんの襟首を掴み退室するシェラさんの胸元で。

 そういえば、元々あのふたり(ごっついちみっコンビ)が怒られたのって食堂で暴れて埃立てたりしたのが原因な訳で。

 それなら筋肉さんに説教(物理)をかましたシェラさんも盛大に埃立たせたんじゃなかろうかしらと我は首を傾げるのだった。



 厨房へ赴き旨を伝え、その足で今度は厨房の隣に併設されたさっきまでいた食堂と明らかに違う、使用人用っぽい簡素な造りの食堂へ。

 壁の一部が取り払われ食堂と厨房を繋ぐカウンター越しにおばちゃんに注文、しばしの間をおいて差し出された膳を手に手近なテーブルへと腰を下ろし。


 「あっ」


 そこでやっと思い出したのか我を胸元から摘まみ出すシェラさん。

 良かった、本気で忘れられてるのかと思った。

 ここに来るまでに擦れ違った人達も厨房の人達も明らかに我を凝視したり二度見したり目を擦ったりとリアクションとってたのにスルーしてたんでちょっと不安でした。

 さっきまでの様を見せ付けられた後じゃ下手に暴れて機嫌損ねるとか恐ろしすぎて真っ平ゴメンだったからこっちからアクション取るわけにもいかなかったし。

 ちなみに筋肉さんは移動途中に中庭にリリースしてました、ぽいって。 無残。


 仮にも一国の王で上司…っていうか雇い主をあんな扱いでいいのかしらと思わなくもないんだけども。

 ついさっきそれ以上の扱いをこの目で見たしきっとこの国じゃあれが平常なんだと思おう、うん。

 下手につついてヤブヘビとかヤです、我面倒事はもうのーさんきゅーだもん。


 そんな我の思考など知る由もないシェラさんは料理にフォークを刺し、それを我へと寄せてくる。


 「はい、あーん」


 あ~ん。 ……がちっ。


 大きく口を開いてさぁ齧ろうとした瞬間シェラさんがフォークを引き。

 結果、我の顎は空を齧り噛み合わせられる。


 ・ ・ ・ ・ 。


 「 ・ ・ ・ ・ 。 」


 ジト目を向ける我と、悪戯っぽい笑みを浮かべるシェラさん。

 抗議の足ダンをするとクスクスと笑いながら人差し指で頭を撫でてくる、我的には笑顔(はな)よりお料理(だんご)なんですが?

 撫でられながらじーっと料理に目をやっているとやっと察してくれたのか再度シェラさんがフォークを差し出してくる。

 大丈夫だよね? 流石に天丼はしないよね、と思いつつ警戒心マックスでシェラさんの動きに注視しながらおそるおそるフォークへと顔を寄せ、一気に齧り付く。

 差し出されていたのはジャガイモ的な何か。

 鉄板でおいしそうな音をたてるハンバーグ的な…もういいやハンバーグで。 この世界の名称とか知ったこっちゃないです。

 さておき、そのハンバーグさんの付けあわせとして盛られていたのが今食べてるおジャガさんなんだけど。

 おジャガさんよりその隣にある赤い野菜の方が我は気になるんですけども?

 それ、キャロットグラッセ様じゃございませんですか?

 兎と言ったら人参ですよね? なんでそっちくれないの? おジャガさんより普通そっちくれるものじゃないの、兎には?

 もしかしてラビって人参食べないの? 実はおジャガさん大好き生物なの?


 口の中のおジャガさんをもぐもぐ、ごっくん。

 うん、普通におジャガさん。 可もなく不可もないノーマルおジャガさん。

 舌も体も特に喜んでないし多分おジャガさんがラビの好物説はないんじゃないかと思う。

 我が普通じゃないからとか知識に引っ張られてるだけとかの可能性もあるかもしれないけど言い出したらキリがないし検証しようがないのでその辺はないないしましょう。


 今度はシェラさんもフォークを引っ込めたりしないので口内が空になると再度フォークに刺さったおジャガさんに齧りついてもぐもぐ。

 人間なら一口で食べ終わるんだろうけどこの体だと一口分ずつ齧ってもなかなかなくなりやしませんね、いい事です。

 沢山食べれてその間ずっと味わい続けられるとか幸せです。

 ドクダミ風味の寒天(スライム)食べてる時は終わりの見えない地獄だったけどおいしい食べ物なら大歓迎ですね、うん。

 けど人参様が控えている今、いつまでも君に付き合っている訳にはいかないのだよおジャガさん。


 と、ゆーワケで早速ペースアップ。 はむはむ、もぎゅもぎゅ、ごっくん。

 よし、食べ終わった。 シェラさん早く次ぷりーず。

 カカッと掻き込んで催促するようにふんすふんすと鼻を鳴らしフォークを前足でつつくとこちらの意を理解したのかシェラさんがまた笑い、手にしたフォークを突き刺しそれを再度我の元へと寄せてくる。

 …どう見ても刺さっているのはおジャガさんですね、こんちくせう。

 がっついたから好物とでも思ったのか、それとも単純にラビ=おジャガさんがこの世界の常識なのか。

 どちらにしてもこのままじゃ埒があかないしここは行動あるのみっ!!

 フォークを差し出すシェラさんをスルーして一直線に器目掛けてダッシュ、そして器に手をかけて人参様をゲッ……と?


 ジュッ!


 …そうですよね、じゅうじゅうと空腹を加速させる音を立てる鉄板なんですよね料理の盛り付けられた器って。

 で、人参様しか頭になかった我は一直線に走って前足で思いっきり器に触った訳で。

 結果? 言うまでもないよね?

 氷入りの水の入ったコップの(ふち)に張り付いて両前足を水中にさらすコップのラビ子さんが爆誕しました、とだけ。

 ちなみに結局人参様は貰えませんでした、ぐすん。




 その後、食堂を辞してこのお城に来てから最初にシェラさんに連れ込まれた部屋へと再び連れ込まれる。

 どうやらシェラさんの部屋だったっぽいそこでまた果実水を振舞われてやっと一息。

 よくよく考えたらこの部屋を抜け出してから迷うわクリーチャーに狩られかけるわ悪魔の果実(キャロットンガラ)食べて死ぬわごっついさんに玩具にされるわで肉体的にも精神的にもまるで休まる暇なかったね。

 ファザーマザー兄弟姉妹ズと一緒にお家で暮らしてた頃とじゃ一日の濃さが違いすぎるですよ。

 え、何? ほとんどが自業自得じゃないかって? アーアー聞コエナーイ。


 我は果実水、シェラさんはワインで喉を潤しながらのんびりする事暫く。

 どちらともの器が空になったのを合図に湯を張り、湯殿に沈んで一日の疲れを溶かし。

 推定風魔術(ドライヤー)とブラッシングでさっぱりした所でベッドにダイブ、シェラさんの胸元に擦り寄る。

 産まれた頃から寝る時はマザー相手にこれだったのでなんだかんだでこの格好が一番落ち着くのです、これも乳離れできてないって言うんだろうか?

 などと下らない事を考えている内に上と下の瞼さんがどんどん仲良しになってきたので思考を中断、更にシェラさんへと擦り寄りその温もりを確かめながら体の力を抜き、胎児のように体躯を丸めまして。


 でわでわ皆様、おやすみなさ~い………ぐぅ。


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