36:我、数日振りに駄女神に会う。
「おお 毛玉よ! しんでしまうとは なにごとだ!」
気付けば周囲は石造りの荘厳な空間、足元には赤絨毯。
視線を前へとやれば我のいる石床より数段の段差、その頂点に玉座。
そしてそこに腰を下ろし赤いマントを羽織り、無駄に豪華な杖を片手に付けヒゲを装備した駄女神。
左右には全身鎧の兵士が二人、コンセプトは 『玉座の間』 ?
「ぶーぶー、ノリが悪いぞ毛玉~」
眼前の人物を視界からシャットアウトして周囲の状況を確認していたらなんかブーイングが飛んできた。
仕方なくわざとらしい程の溜め息を吐き視線をやればマント、杖、付けヒゲを装備解除した不貞腐れフェイスの駄女神。
「わざわざキミの元居た世界のゲームに合わせたんだからちょっとくらいノリなさいよ~」
やだぷー、相手してたらキリないし我ツッコミ役じゃないもん。
「かっわいくないなぁ」
ぽんこつ女神に気に入られなくても一向に構わんとです。
「 『さぁ蘇るのだこの電撃で~』 の方が良かったかなぁ、本物の雷落としつつ」
なんか物騒な事呟いたよこの神。
そんなん喰らったら毛玉から消し炭にワープ進化しちゃうからやめやがられなさい。
「じゃあ弱電撃で静電気帯電の爆発毛玉に?」
やめーや。
てーか駄女神がいるって事は我、やっぱ死んだのん?
「まさかトンガラ齧って死ぬなんて思ってもみなかったから我が目を疑ったよ」
ジト目でこちらを睨んでくる駄女神。
我悪くないもん、あんな紛らわしい代物つくった神様が悪いんだもん。
「確かに紛らわしいけどさ、ボクちゃんと鑑定の重要性は説明したよね?
そもそもキミ、前回の死因もその食い意地だったよね?
学習するっていう事を知らないの? 馬鹿なの? 死ぬの? いや実際死んでるけど」
食べたらダメな代物を見分けるようなスキル頂戴?
「鑑定しろこのスカタンッ!」
怒声と共に駄女神が宙空に現れた紐を引くと同時に我の頭に金ダライがくわーんっ。
おおう、頭がぐゎんぐゎんするぅ~~~。
「言っとくけど、今回は割と本気でこのまま見捨てようと思ったんだからね?」
引き続きジト目の駄女神様、我まぞぶたとかじゃないからそんな目で見られてもご褒美になったりしませんですよ?
そしてそんな事を言いながらもこうしてちゃんと復活させてくれようとしてる辺り我って愛されてるのね&つんでれさんめ。
「…ラビゾンビにクラスチェンジがお望み?」
心の底から土下座 de ごめんなさい。
「……基本的な知識だけ残して人格リセットしたら少しはマシになるのかなぁ、これ」
これ呼ばわりの上物騒極まりない発想はやめやがられなさい、我にだって兎権くらいあるですよ。
「大丈夫、人格が綺麗さっぱり消え失せればそういうこと考えに煩わされることもなくなるから」
欠片も大丈夫じゃない件。
あと真顔で言うのやめて、ほんとに怖いから。
「……馬鹿をやらかさない程度に人格を一部削ったり修正するくらいならあり、か?」
ヤメテッ、本気で悩まないでっ!?
「ま、冗談はさておくとして」
嘘だ、絶対本気で思案してた。
あの目は間違いなく実行しようとしてた。
「進歩、発展ニ犠牲ハツキモノデース」
犠牲前提でやんなし。
「次やらかしたら本気でやるけどね」
鑑定、大事。 ワレ オボエタ。
「今度は何日覚えていられるんだか」
呆れた声で吐き捨てる駄女神、どうやら我の信用は底値らしい。
まぁ仕方ないよね、欲望に負けてやらかしちゃったもんね、それも二回も。
……でもやっぱりキャロットンガラは酷いと思う、罠じゃんあんなの。
「畑の傍に植えておけば野生の獣除けになるってヒト種には割と好評なんだよ?
獣型の魔物も低位の輩なら匂いで撃退できるし」
それ、食べ物の扱いと違くない?
「キミの目にはアレが食べ物に見える?」
見た目だけならめがっさ食欲を揺さぶられまする。
実態を知った今だと毒物としか思えないけども。
「実際食用には一切扱われてないしね、アレ。
薬師とかが素材に使う他は染料の原料に使われるくらい?」
扱い云々どころかそもそも食べ物じゃなかった件。
ならなんで厨房に山盛り笊盛りされてたのさ。
「ネズミ避けか何かの為に仕入れてたんじゃない?」
ああ、そういえばあのクリーチャーネズミ嫌いっぽかったもんなぁ。
なるほど、我ホウサン団子を齧っちゃったようなものなのね。
「これに懲りたらなんでも口に入れないように」
あ~い。
その後…───。
まいぼでぃ目掛けて送り返すにしても魂を接続させる術式に多少時間がかかるとの事で我は駄女神と飲茶中。
さっきまで駄女神の両脇に控えていた全身鎧さんが卓袱台と急須、ポットと湯呑みを用意してくれて我は卓上、駄女神は座布団に腰を下ろして向かい合っている。
「その駄女神っていう呼び方やめない?」
呼び易くていいんだけどなぁ、不評なら仕方ない。
んぢゃ以後はルシェルって事で。
「…仮にも神で造物主のボクを呼び捨てっていうのもどうかと思うんだけど?」
カミサマ~、とか敬われたい?
「キミにそんなのされたら鳥肌がたつね」
めがっさ失礼だねこの神は。
まぁ我だって微塵も敬意ないしどっこいどっこいなのかもしんないけど。
あ、全身鎧さんお茶のお代わり下さい。 あとお茶請け的なものとかありません?
「気軽に顎で扱き使ってくれてるけど、そいつら一応管理用ユニットだからね?」
はて、管理用ユニット?
どこかで聞いたような~…って、もしかしてそれって前に言ってた箱庭内での神様の代用品?
「そ、箱庭の管理と運営の為に創り出した現し身だよ」
要するに箱庭内のカミサマですか、どれどれ。
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名前:
種族:アバター
状態:正常
称号:なし
Lv : -
HP :100,000/100,000
MP : -
筋力 :10,000
耐久 :10,000
敏捷 :10,000
魔力 :10,000
幸運 :10,000
【スキル】
亜神の器
自己再生 (高)
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{亜神の器:
あらゆる状態異常を無効化する。}
ブフォッ!! ゲッホ、ゴホゴホッ!!?
舐めるように飲んでいたお茶を噴き出し思いっきり咽る。
流石はカミサマというべきかなんというか……根っこゴーレムやミヅチさんが可愛く思える頭おかしいステータスデスネ。
て、ゆーか神属ってコレより強いの? そりゃ即逃げろっていう訳だわ、逆立ちしたって勝てないって。
「いや、連中そんなに強くないよ?
ぶっちゃけ一対一で管理用ユニットを倒せるようなのなんていないし」
じゃあどうやって神属になったん?
「ヒト種の伝家の宝刀、友情パワー」
ルビ自重、てかそれって管理用ユニットが一体死んだら神属が大発生するの?
「ううん、システム介入の為の鍵になる神核は管理用ユニット一体につき一つだから産まれる神属も一人だよ。
だから麗しい友情の一幕、が醜い骨肉の争いに変化するのが管理用ユニット戦後の名物風景だね」
そんな名物廃れてしまえ。
「ま、それでもそこいらの連中よりはよっぽど強いから関わらないのが一番だろうけどね。
もし倒せれば経験値がっぽがっぽで神核のおまけ付きだけど」
レベルよりも命が大事なんで関わりたくありませぬ。
ところで神核ってもし手に入れたら我でも神属になるのん?
「キミの場合ベースはボクのハンドメイドだし、多分アバターになるんじゃないかな?
神属化よりも神核の恩恵は大きくなると思うよ」
ふ~ん、まぁ縁のない話だからどうでもいいけど。
「うん、今はそう思っとけばいいんじゃない?」
…何、その不吉な物言い。
「べっつにぃ~?
あ、器との接続がうまくいったしそろそろ送り返すね」
ちょっと待った、さっきの言葉の説明を要求する。
あとすっかり忘れてたけどルカの事とかも説明しろし、あとご機嫌とるための素敵アイテムぷりーず。
「却下♪」
笑顔でルシェルがそう答えた瞬間、意識が白に染まっていく。
ちくせう、やっぱりあんなやつ駄女神で十分だ…───。
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目を覚ますと見知らぬ天井。 ……天井!?
慌てて跳ね起き周囲を見やるとなんだかごっつい美人さんと目が合う。
こちらへ向けてにっこりと心和らぐ笑みを浮かべてくる美人さん、つられて我もとりあえずにぱ~。 って違う違う。
ここは何処? わたしは我? そして貴女はどちら様?
言うまでもなくこちらの考えている事など理解できている筈もなく、我は美人さんに抱き上げられて胸元に抱き寄せられるのであった。 むぎゅう。




