33:我vs空間魔法『収納』
気付けばいつの間にかあの謎空間から先程の部屋に。
ただし頭が割れるように痛い。 触ってみたらたんこぶができてました、ぐすん。
人を呼びつけておいてしばき倒して追い返すとかお嬢あまりにも酷すぎない?
…いやまぁ口を滑らせて怒らせた我が悪いって言われたらそれまでなんだけども。
ぬぅ、しかし結局ほとんど何も聞けず終いである。
スキルの事とか魔法と魔術の違いとか我のお家の場所とか前世の記憶とかまおーとか聞くべきことは山程あったんだけどなぁ。
お怒りが鎮まるまでそっとしとこう、仕方ないね。
でわでわ、改めて意識を集中しまして。
収納収納収納収納……。
あ、なんか出た。
宙に浮くバインダーが沸いて出た。
はて、駄女神はなんにもない空間から出し入れしてたよーな?
なんぞ、このバインダー?
首を傾げつつ前足で突くとゆっくりと開かれていく。
まさか噛み付きはしないだろうと覗き込んでみればバインダーの中には9ポケットのカードシート。 内2ポケットにはカード入り。
あまりにも予想外な光景に我硬直、なんぞこれ。
…いや、落ち着け我。
脳内から常識と先入観をポイしよう、ここは異世界で我は謎生物、ふぁんたじ~な事象なんて起こって当たり前と思え。
うん、大丈夫、我は冷静我は冷静。 深呼吸して思考を切り替え、改めてバインダーと向かい合う。
先ずは気になる二枚のカードを観察してみる。
{黄金桃}
{サポートデバイス 個体識別名称:ルカ}
以上二枚、どうやら空間魔法で収納したらカード化するっぽい?
上半分にイラスト、下半分に名称が書かれて右下に▽マークが点滅している。 ▽の隣に小さく詳細って書いてるから詳しく見たければここに触れればいいのかな?
行方知れずだった黄金桃は自動的に収納されてたらしい。
食べてまた妙なスキルが生えても困るし非常食として保存しとくけど、時間経過で腐らないよう願いつつ。
で、もう一枚のこのサポートデバイス。
お嬢をデフォルメしたようなイラストが描かれているっていう事はこのカードはお嬢を示している訳で。
つまりお嬢は空間魔法の収納の中にいる?
と、いう事は取り出せばこっちに呼び出せるのかしら?
もしかして人の街とかうろつく時に出てきて貰えば物の売買もできたり?
我、期待しちゃうよ? 期待しちゃってもいいの?
目を閉じ高鳴る胸を深呼吸で黙らせ、ゆっくりと瞼を開き。
期待が裏切られぬよう希い、おそるおそるお嬢のカードにタッチ。
……結論から言うと、我の期待は見事叶った。
カードにタッチで取り出す、という動作もどうやら正しかったらしく、推定お嬢を呼び出せたと思われる。
え、なんで断言しないのかって?
カードが眩く光り輝いた後、バインダーから飛び出して宙に舞った。
うん、そこまでは我はちゃんと目視したんですよ。
その直後柔らかくない硬質な、ぬくもりのぬの字もない何かに押し潰されて卓上に全力でキスをして。
意識を取り戻したのがつい今し方でございまする。
多分、あれ踏んづけられたんだと思う。
机の上に履物履いたままで立つとか兎様を足蹴にするとか駄女神どんな教育したし。
え? 怒りが鎮まるまでそっとしとくんじゃなかったのかって?
我は過去を振り返らないのです。
決して期待に思考を奪われて綺麗さっぱり抜け落ちてたとかそういう事実はありませぬ、いいね?
それにしてもお嬢、なんだかんだで我の提案した名前名乗ってくれてるんだなぁ。
あれですか、つんでれってやつですか。
けどあれですね、な~んにも思い浮かばなかったから『イルカ』と『ヘルプ』を前後でバラしてみただけの案を採用されたと思うとちょっぴり胸がいたいです。
今度甘味が手に入ったらお嬢改めルカにあげよう。 女の子だしきっと甘いものは好き、な筈。
願わくばそれで機嫌も直ってくれれば更によし。
で、とりあえず取り出す方法は分かったっぽいんだけどもさ。
これ、収納ってどうやんの? バインダーに押し付けたら吸い込まれたりするのん?
上位水霊の逆鱗を両前足で抱きかかえて、バインダーに押し付けてぐ~りぐり。
うん、吸い込まれないね。
案その2、念じてみる。
収納収納収納収納…………。
復唱し続け過ぎて "しゅうのう" が "しゅうぞう" に変わっちゃった辺りで諦めました。
じゃあどうすればいいのさっ!
後ろ足でダンダンとスタンピング、実際はてふてふ位の悲しい音だけどそこは気にしたら負け。
なうすたんぴんぐ&ぶ~たれ眼でバインダーを睨み付ける事少々。
よく見たらこのバインダー、上部にタブがありますね?
『ALL』 『食べ物』 『大事なもの』 『収納』
以上四種、それぞれタブの色も違うから見易くていいね。 ちなみに今はALLのタブで開かれている状態っぽい。
食べ物を突いてみるとページが切り替わって黄金桃だけが収納された状態に。
大事なものを突いてみれば案の定と言うかルカのカードだけが収納されたページに切り替わった。
今はすっかすかだからいいけど収納してるものが増えたら便利そうね、このジャンル分け。
放り込んだものによってタブがどんどん追加されていくのかな、これ?
…はい、現実逃避はここまでで。
肩を落とし、溜め息を吐きつつ収納をつん。
今までの9ポケット式のカードシートから切り替わって羊皮紙っぽいページに。
なんかミミズがのたくったような珍妙な文字っぽいものが各所に書かれて、中央に魔法陣が描かれてますね。
あ、なんか魔法陣が赤く光り輝きだした。
ここに突っ込めっていうのかな?
上位水霊の逆鱗を魔法陣に押し当ててみると吸い込まれるようにバインダーの中へときえていった。
…大丈夫だよね、なくなったりしないよね?
我、ミヅチさんに怒られるのやーよ?
とか思ってたらバインダーが一瞬光ってタブが増えました。
え~、と何々?
『ALL』 『食べ物』 『防具』(NEW) 『大事なもの』 『収納』
………防具?
上位水霊の逆鱗が?
このバインダーのプログラム作った神、何考えてんの?
なんだかこの世界を知れば知る程神様への敬意とかそーゆーのが霧散していく気がするよ、我?




