31:我、打ちのめされる
心を読めるとかズルいと思います、インチキだと思いますっ。
「私以上に出鱈目なスキルを持っているマスターの台詞ではないと思いますが」
首ちょんぱ?
「確かにそっちも大概ですけどもっと凶悪なスキル、ありますよね?」
神様でも殺せるスキルよりもっと凶悪……ああ、ラビ・ソバットですか。
「そっちも確かにある意味出鱈目ですけどね……。
私が言っているのは "見定メル者" の事ですよ」
謎ボードさん召喚スキル?
便利だとは思うけど出鱈目とか凶悪なんていう言葉とはちょっと違くない?
「…まぁ、マスターですしね」
なんでため息吐くです?
そして何故にそんな可哀想なモノを見る目で我を見るですか?
「まず、考えてみてください?
『相手を見るだけでステータスからスキルまで把握できる』、どう思います?」
ずるっこだと思います。
「鏡に向かってもう一度どうぞ?」
別にそれ我だけじゃないやん、我以外の鑑定使える人だってそうじゃん。
そもそもステータスとかスキルとか見れた所でへ~そうなんだすご~い、位にしか思わないし。
あれですよ、スキルとか名前だけ見ても効果がイマイチぴんと来ないし、そもそも魔術ってなんなのさって話です?
「そこで更にスキルや魔術についてを詳しく見ようという発想が出てこないマスターは本っっっ当にポンコツですね」
笑顔で言うなし、泣くぞ我。
て、ゆーかさ? ぶっちゃけその辺調べて理解したとしても我的には結局へ~そうなんだすご~い、で終わるですよ?
「…なんといいますか。 マスターは本当に転生者なんですか?」
そのルビやめやがられなさい、我プログラムじゃなくてちゃんと生きてるんだぞ。
第一転生とか言われても以前の記憶なんてロクに無い上にこの有様じゃだからどうしたって話なんですが。
「確かにマスターが少々ほかの転生者と異なるのは認めますけど、普通転生者ってもっとガツガツしてますよ?
簡単に死んでしまわないよう加護と特殊なスキルが与えられますからそれを基に鍛え続けて世界最強を目指したり、はたまた技術や知識をバラ撒いて地位や名声を求めてみたり、傍から見て何を考えてあんなに生き急いでいるのかと首を傾げたくなりますし。
挙句そうやって目立ち過ぎた所為で厄介事に巻き込まれたり無駄に崇め奉られたりして、言うに事欠いて静かに暮らしたい? 周囲が騒ぎ立てて煩わしい?
神々の間でも転生者は理解不能な謎思考の珍生物扱いですよ?」
人ってね、特別っていう言葉に弱い生物なんですだよ……?
人生っていう自分が主人公の物語の中でさ、本当に主役になれるだけのモノを手に入れたらそりゃ張り切っちゃうよ、後先考えないで。
「自分の力に責任を、だなんて暴論を推すつもりはありませんが。
少しくらいは後先を考えて行動しないとお先真っ暗なのは至極当然なのでは?」
厨二病なんです、責めたげないでください。
後で頭を抱えて転げ回る羽目に陥るとしてもその瞬間が来るまでは当人は絶頂の最中なんです。
「やはり理解不能です?」
分からなくてもいいです、でもせめて転生者を生暖かい目で見たりしないよう神様に伝えてください。
あと、この話題はここで打ち切らせてくだちぃ、我的にもなんだかお胸が痛いので。
「もう少し掘り下げて話題を続ければマスターの痴態を拝めそうではありますけれど、あまり脱線して本筋を忘れても事ですしね」
やだ、やっぱりこの子腹黒い?!
けど下手に突いて藪からスネークはご免蒙るので本筋の続きどうぞ。
「…ところで、何をどこまで話してましたっけ?」
をゐコラ。
「冗談ですよ、冗談」
相変わらずの笑顔でこの発言である、我この子に勝てる気がしませんです。
従者っぽいモノに尻に敷かれるマスターとかどうなのさと思うけど元々威厳とか微塵もない我だと妥当な扱いなのかしら?
「お尻に敷かれたいだなんてマスターはえろすびとですね」
ほ・ん・だ・いっ!
「はいはい、え~っとマスターはぽんこつだっていう話でしたね。 え、違う?
マスターがぽんこつなのは事実でしょう? はいはい拗ねない泣かない蹴ろうとしない、また叩き落としますよ?
それでぽんこつ盆暗マスターが先ほど言っていた自分以外の鑑定を使える人も~、という発言ですが」
駄女神さんや、何考えてこんな毒吐き娘造ったし。
我の繊細なハートはもうぼろっぼろですよ? 慰謝料請求すんぞこんちくせう。
「まず訂正を一つ、鑑定スキルを持つヒト種は存在しません。
と、言いますか鑑定スキルを所持している存在はマスターを除けば神のみです。 神属ですら持っていません」
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ は い ?
「まず、この世界にはステータスボードというシステムが造り出した神具がありまして。
このステータスボードは触れた対象のステータスを示すと同時にプレートと呼ばれる個人の能力を示すアイテムを産み出しますので、この世界のヒト種はそれを用いて自身のステータスを把握しています。
他者の能力を知ろうとすれば相手のプレートを見る以外にはありませんね」
まって、りかいがおいつかないの。
「ヒト種がスキルとして持っている "鑑定" は物質を調べるためのスキルであって生物には使用できません。
言うまでもなく神々やマスターの持つ "鑑定" とは別物ですから、もしマスターのスキルが知られでもしたら空間魔法どころではない騒ぎになりますよ?」
地雷二発目ェ!?
我の正体合わせたら三発目とか駄女神何してくれてんのさ? 馬鹿なの? 死ぬの? 寧ろ死なせますわよ?
「ちなみにマスターの持つ "欺ク者" 、マスター本体だけでなく対象を指定すればそちらにも効果を及ぼせますよ?」
はい四発目~、もーどーにでもなーれっ☆。
「それらすべてが霞むのが神授ですけどね、しかもマスターの場合二柱の加護持ちですし」
ごめんなさい、ナマ言いました。
土下座でもなんでもしますからこれ以上の死体蹴りは勘弁してください。
「大丈夫ですよ、今の所はそのくらいですから」
…今のところとな?
「マスターの持つ "魔眼" は邪眼、呪眼の更に上位に位置するスキルなんですけれど。
所持しているのは魔王種、それも最上位クラスの中のほんの一握りだけです?」
それ、既に厄なんじゃないですか?
「主と共に成長していくスキルですから? 現状では毒にも薬にもならない無害なスキルですし」
我、皇宮の子になって植物の心のような平穏な兎生を送りたいと思います。
「家族はどうするんです?」
うっ……。
「そもそも、道化神に目を付けられて平穏な兎生が望めるとでも?」
ううっ……。
「世の中、諦めが肝心ですよ?」
うぼぁー……。
打ちひしがれ、床に突っ伏す我を撫でる毒舌おぜうさんの手は、少しだけ優しく感じられた。




