30:我、毒舌おぜうさんと相対す
ニコニコと笑顔を浮かべ我を持ち上げながら毒を吐いたこのおぜうさん、一体どこの誰子さん?
顔の造りは純日本人風ですね、美人っていうより可愛いが似合う。
て、ゆーか我がこの世界に来てから会う人会う人どれもこれも整った顔立ちばっかりなんですけどどうなってるワケ?
可も無く不可も無い一般ぴーぽーフェイスとか作画崩壊な人は存在しないのかしらん?
「普通にいますよ?」
あ、いるんだ。
「単純にマスターが今まで当たりを引いていただけです。
良かったですね、気がついたら髭もじゃ傷顔の山賊に覗き込まれてるとかじゃなくて」
もしそうだったら迷わず顔面に蹴り入れて逃げましたですハイ。
て、ゆーかどうせそうだろうなーとは思ってたけどやっぱり君も心読めちゃうのね。
「読めないとマスターの役に立ちませんし?」
まぁ我意思の疎通とかできないしね、念話とかてれぱしー的な素敵能力とか持ってないし。
ところでさっきから気になってたんだけどマスターって何さ?
「道化神から貴女のサポートをするよう、と命を受け創造されましたので。
敬う気持ちは微塵もありませんがとりあえず形式上だけでも、と?」
ものすっごいひっかかりを感じるけどとりあえずそれはさておくとして。
サポート、って我のお世話とかしてくれるの?
それとも我を護ってくれたり?
「どちらも違います。
基本的にアドバイスや質問に応答するだけで直接支援は期待しないで下さい」
世の中そんなに甘くありませんですよね、はい。
ちぇ、自分で歩かなくても抱っこされて移動できると思ったのに。 食材集めて料理してくれたり我の前に立ちはだかって襲い来る魔物を千切っては投げ千切っては投げてくれたりするかと期待してたのに。
「あなたを千切って投げましょうか?」
やめてください死んでしまいます。
「耳の一つや二つなくなっても早々死にはしませんよ、安心ですね?」
笑顔で黒い事言わないでくれやがられなさいまし。 ってゆーか我の耳を摘んでぴこぴこするのやめて、さっきの台詞のお陰でめっさ怖いから。
時折指に力を篭めたり軽くクイッと引っ張られる度に背筋がひゅんってするのですよ。
「ほんの冗談ですからそんなに怯えなくていいんですよ?」
じゃあ耳を摘むのやめてください。
「目の前でぴこぴこと動いていたら、つい摘んでみたくなりません?」
その気持ちは分かるけどされる側に回るのはヤです。
「我侭ですねぇ」
残念そうな顔でそう呟くとやっと耳を解放してくれた。 ……のはいいんですけれども。
何故に今度は我の両前足を指先で摘むですか?
「本当に肉球ないんですね、残念」
代わりに毛がもっふもふですけどもね、足裏。
「知ってます、堪能中ですから」
こそばゆいんでやめて下さい。
あとこの格好もどうにかして欲しいです、F○Iに連行される宇宙人状態って結構きついのですよ?
てゆーか本気できついんですけども、意識がぼや~ってなってきたですよ?
「ここでひとつ雑学をば。
兎の背骨は基本カーブを描いた構造になっていて、まっすぐ伸ばしたりすると背骨を痛めたり内臓を圧迫する原因になります。
非常に危険で兎、特に生まれて間もなくの体ができていない小兎にとっては生命の危機に直結しますので良い子は決して真似してはいけませんよ?」
殺す気っ!?
「五日も放置プレイを強いられたのでちょっとした仕返しです?」
ちょっとした仕返しってレベルじゃないよね?
殺意てんこ盛りだよね?
そもそも我、君の存在知らなかったんだしノーカンじゃね?
「まぁそれもそうですね」
そう言ってあっさり我の両前足を解放する純和風おぜうさん、いつもの姿勢に戻りひと安心の我。
なんとな~く視線を交わしたまま空白の時間が過ぎる。
「…改めて見たら本当にちみっこいですね、マスター」
そんなしみじみ言わんといて、兄弟姉妹ズと比べても明らかに小さいの気にしてるんだから。
成長したらきっとおっきくなるもん、ファザーみたいに小型犬クラスの体躯になるんだもんっ!
な、生暖かい目で見つめてくんなしっ!
慈愛の眼差しで慰めるように撫でたりしてくんなしっ!!
「いいですか、マスター。 人の夢と書いて儚いと読むんですよ?」
よーしそのケンカ買った。
本邦初公開、喰らえ転移からのゼロ距離ラビ・ソバット!!
「……心を読む事のできる相手に不意討ちが通用すると、何故思ったんですか?」
片手で叩き落とされ地面に突っ伏す我に降ってくる憐憫混じりのため息と声。
正直に忘れてましたテヘペロなんて答えた日には間違いなくため息第二段がくる、それも初撃以上の憐憫を混めて。
何かないか、この状況を覆せるだけの素敵な言い訳は…───。
「ですから、心が読めるんですってば……」
oh....。
「サポートのし甲斐に溢れたマスターで私は幸せ者ですね」
憐憫の声やため息以上にその棒読みの一言が何よりも我のハートを傷つけましたとさ、ぐすん。




