27:我、兎生初入浴-②
我、いんざばするーむっ!
…すいません、ちょっとハイテンションになっただけです、ほんの出来心なんです。
だってお風呂ですよお風呂、英語で言うとO・FU・RO。
今まで巣穴の隅に湧いてた湧き水でぱちゃぱちゃするだけだったけど今我の目の前にあるのは湯殿です。
そしてお風呂ならある筈、間違いなくある筈なのだ。
今生において半ば諦めていた石鹸がっ!!
水でぱちゃぱちゃ洗うだけだとやっぱりホラ、色々とね?
それに体を洗って汚れを落とした後にお湯に浸かって脱力するあの瞬間の喜悦。 忘れられる訳がありませぬ。
欲を言ったらお風呂上がりのこーひーぎうにう(瓶入り)が欲しいトコだけどもまぁ贅沢にも程がありますよね。
てゆーか正直水で洗われると思ってたんだけどわざわざお湯を沸かしてくれるなんてこの人怖いけどいいひとだ。
沸かす、で分かるようにこの世界のお風呂は蛇口を捻って…ないですね、センサー? を使っても出てくるのは水だけっぽい。
湯沸かし器とか素敵アイテムないっぽいのでわざわざ湯殿に水を張って沸かしてくれてたみたい。 こんな毛玉の為にわざわざありがたいですね。
で、今は沸いたお湯を桶に張って、そこに我を投入して石鹸をお湯に溶かしながらじゃぶじゃぶしてくれてる訳なんですが……。
この石鹸、匂うです。
いや、臭いとかじゃなくて薔薇の匂いなんですけどもね?
そもそも我的に体を洗うって汚れや匂いを洗い落とすっていう印象な訳なのですよ。
石鹸そのものの匂いならまだ仕方ない、で納得できる。
けどわざわざ香料入れた石鹸だのシャンプーだので洗って香りを付けるとか意味不明であります。
それ体洗う意味あるのか、と。 匂い落としたのにまた別の匂いを付けるとか本末転倒なんじゃないか、と。 そんないらない事しなくていいからその分値段を下げなさい、と。
問いたい。 問い詰めたい。 小1時間問い詰めたい。
まぁあくまでも我の主観であって一般の人の意見は知らないけどもね。
兎角、そういった香料入り石鹸という代物が理解不能で全力拒絶姿勢な我にとって現状は天国と地獄の合わせ技でありまする。
体を洗ってもらう、綺麗になる=天国。
洗う端から香料の所為で我の体から薔薇の香りが=地獄。
そもそも香水とかにも拒否反応出てたしね、我。
………ん? ん~~~?
…むぅ、駄目だ。
ふとした弾みに前世の記憶っぽいものが思い起こされるんだけども、どうも部分的なものだけで我がどんなだったのかとかはまるで思い出せない。
駄女神は 「記憶を消しても知識は残したままで転生させるのは~」 って言ってたから我に記憶はない筈?
なのに時折ふと思い浮かぶ前世っぽい記憶。
アレかしら、魂的なナニカにこびり付いてるのかな我の記憶の断片的なシロモノが。
そんな調子で我が頭を悩ませてたらシェラさんに持ち上げられて泡風呂と化した桶から浴室の床に移動させられる。
で、我の耳に手を被せるように覆ってもう片方の手で構えた手桶からお湯を降り注がせる。
あ、我があーだこーだ脳をフル回転させてる間に洗い終わってたのね。
二度、三度と降り注ぐお湯が我の体から泡を洗い流す、う~ん爽快感。 ただし体に纏わりつくふろーらるな香りは洗い流されない、がっでむ。
我慢、我慢我慢~~…………。 うん、無理。
纏わりつく香りよ消し飛べ、とばかりに全力でブルブルし僅かに石鹸の残るであろう全身の水滴を吹き飛ばす。
うん、完全に香りが消える訳はないがとりあえず多少はましになった。
ふぅ、とひと息ついてさぁ次はお湯に浸からせてくださいと期待を篭めて見上げると…――――。
視線の先にはびしょ濡れのメイド服を肌に張り付け、顔中に水滴と泡を纏い笑顔を浮かべるシェラさん。
ただし目は一切笑っていない、そして背後には鬼のオーラを背負っている。
我にお湯をかけるシェラさん、その最中に我慢の限界がきて全身をブルブルと全力で震わせる我。
さぁ問題です、その場合我に降り注いでいるお湯と我の毛に纏わりつく水滴はどうなるでしょうかっ!
その答えが今我の目の前で笑顔を浮かべるシェラさんな訳で。
理解すると同時に即座に仰向けになりお腹を見せて降伏の意を示すもお構い無しに両足を掴まれ逆さ吊りにされた上で上下左右にシェイクされました、おぇっぷ。
その後、全身びしょ濡れで諦めたのかはたまた自棄になったのか、服を脱ぎ裸になったシェラさんと二人仲良く入浴タイムへ。 ただし水深の関係で我は湯殿に浮かぶお湯張り桶の中です。
染みの一つもない水を弾く玉のお肌、メリハリのきいたわがままぼでー。
うん、同じ女として羨ましいやら妬ましいやらですね。 まぁ毛玉なマイボディには玉の肌だろうがわがままぼでーだろうがあんまり関係なさそうだけども。
お風呂上がりにタオルで全身を拭かれた後にシェラさんのかざす手から吹く風にしっとり湿った体毛を乾かしてもらいながらブラッシングをして貰った。
その後もっふもふになった我をもう耐えられない、とばかりにシェラさんが抱き上げて頬擦りしてきたのは我とシェラさんだけの秘密です。
「ほかの人には内緒ですよ?」
なんて頬を朱に染めつつつぶやくシェラさんは非常に愛らしかったです、まる。
「もし万が一誰かに漏らしでもしたら全身の毛を一本一本毟りますので」
その後真顔で刺された釘はめっさぶっとかったです。
ラビ相手に冗談とかシェラさんってばお茶目さんなんだから~っ☆
………冗談デスヨネ?




