2:我、絶望する
種族、らび?
そう思い改めて目の前の毛玉に目をやると、どうやらそれは丸まっていただけらしい。
よくよく見れば長い耳が生えており、手足もちゃんとある。
その姿は世間一般で兎と呼ばれる生物に相違ない。
……ない、のだが。
種族:ラビ、と書かれているという事はこの毛玉は兎でなくラビという生物だという訳で。
と、いうかそもそもこの正体不明の謎ボードが浮かび上がっている時点で……。
(ああ、これは夢か)
と、我は判断した。
現実逃避? ナニソレおいしいの?
~三日後~
我はまだ毛玉のままであった。
兄弟姉妹と思しき毛玉達と身を寄せ合って丸まり眠りに着き、腹が空いたら毛玉マザーの乳を吸う。
日の大半を睡眠で過ごす中、偶に姿を見せる毛玉ファザー。
どうやらこれがごわごわで湿った謎生物の正体らしい。
姿を見せると兄弟姉妹(含む我)に顎下を擦り付けてくる。 うむ、今日も非常にごわごわ湿り臭い。
あれである、諦めの境地に至れば臭いのも己の頭部が湿るのも我慢できるものである。
……さておき、流石にこれだけ時間が経つと我も認識を改めざるを得ない。
これ、夢チガウ。
謎ボードの表記を見るに多分ファンタジーな世界か何かっぽい。
少なくとも我の知ってる世界はこんなゲームゲームしてない。
もこもこ毛玉な己の姿、そしてなんだかゲームゲームしたこの世界。
これはあれだろうか、所謂一つの "異世界転生" とかいうアレであろうか。
だとしたら我、非常にまずくない?
我の姉妹であろう毛玉を見た時に浮かび上がったあの謎ボード。
あれに記載されていたステータスは悲しくなる位に低かった。
この世界の常識的なステータスが分からない我でもあれは酷いとはっきり理解できる。
だって一桁オンリー、それも半分以上が1である。
これは果たしてラビという種族そのものが弱いのか、それとも生まれたての姉妹毛玉が弱かったのか。
前者ならその時点でお手上げ、後者であればこの幼年期さえ乗り切れば可能性も……?
後者であれと念じつつ我は毛玉マザーに目を向けボード出ろと意識を集中させてみる。
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名前:『 』
種族:ラビ(♀)
状態:正常
称号:なし
Lv :8
HP :16/16
MP :1/1
筋力 :3
耐久 :2
敏捷 :7
魔力 :1
幸運 :4
【スキル】
逃げ足
ラビキック
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……あ、我詰んだ。