18:我vs根っこゴーレム らうんど2
此の身に傷を負わせ、宙空を跳び跳ねる虫けら目掛けて。
掌の表面の根を緩くほどき、掠めるだけでその矮躯を引き裂けるように調節し。
殺意と怒気を篭めて振るった一撃はしかし、目測を違え虚しく空を切る。
己と比べあまりに矮小すぎるが故に攻撃を当てられぬ苛立ちも加味し再度振るった掌をしかし、虫けらは身を捩り避けてみせる。
更に募る苛立ちに気を乱されながら、しかしその連撃の余波で巻き起こった風に翻弄され宙を漂う虫けらを見てニヤリ、と笑み。
渾身の力で叩き合わせたその手の内にも、虫けらの躯はなかった。
慌てて周囲を睥睨するもその姿は見えず。
見失ったその姿を捉えるべく瞳を開き。
次の瞬間にその瞳に襲い来た激痛にたまらず悲鳴をあげ。
バイオプラントガーディアンの巨躯は大地に沈んだ。
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い、今のは本気で死んだと思った。
根っこゴーレムが倒れ始めたのに気付いて慌てて逃げようとしたら風圧さんのお茶目で球根に押し付けられて身動きができなくなっていた。
あのままうつ伏せに倒れられたら間違いなくのしイカならぬのしウサになってたとです。
根っこゴーレムの体が更に傾いで右半身から大地に叩きつけられたお陰でぺちゃんこは免れた。
衝撃で吹っ飛ばされて顔面から地面に着地したけどねっ。
ちくせう、お鼻が痛いよぅ。
ひりひりとする鼻を両前足で押さえつつ涙目で振り返れば文字通り大地に沈む巨躯が一つ。
右腕辺りは完全に陥没してるし起き上がるのにちょっと苦労しそうだねあれは。
今のうちに兄弟姉妹ズ、ファザーを連れて避難してくれないかなぁと視線を外した瞬間メキメキ、という嫌な音が背後から。
慌てて振り返ってみれば根っこゴーレムの巨躯は消え失せ、後に残るは球根さん。
ほわい? と首を傾げる我の視線の先で球根さんに縦一文字の筋が入り、再びグパァと目が開いて。
首を傾げたままそれを眺める我とは当然視線が絡まる訳で。
目と目が合った瞬間、視認できそうな程に強烈な殺意を球根さんが身(?)に纏い。
その至る所から根が生え、伸び、絡まり合い。
あっという間に四足歩行の獣の姿を形作る。
ってちょっと待った、ヤバくないこれ?
我がそう思い全力で後方目掛けて跳躍するのとほぼ同時に。
ほんの数瞬前まで我のいた地面が爆ぜた。
耳をつく轟音。
巻き起こる土煙。
降り注ぐ土砂。
そして、それら全てを意に介す事無くこちらを引き裂かんと前足を振るい顎を打ち鳴らす凶獣の姿。
我? あっちに跳んだりこっちに跳ねたり必死に逃げ回っていますが?
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名前:
種族:バイオプラントガーディアン
状態:憤激
称号:なし
Lv :30
HP :1400/1400
MP :100/300
筋力 :200
耐久 :400
敏捷 :150
魔力 :5
幸運 :10
【スキル】
操根
再生 (微)
【魔術】
土魔術
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全力で逃げ回りつつ鑑定してみたら根っこゴーレム改、形態変化でステータスまで変わりやがられました。
耐久が100減って敏捷が100アップ、MPが200減ってるのは形態変化の消費かな?
あと状態が憤激に、まぁこれはよく分かんないし多分そう意味はないと思うからスルーするとして。
人型の時に胸に埋もれていた球根は顔部に収まり、一つ目でこちらを射殺さんばかりに睨んでいる。
多少サイズダウンしたとはいえ多分7~8メートル程度はあると思われる体長。
で、その巨躯で敏捷が3倍に大増量。
サイズ差も相俟って我の体感速度はそりゃあもう洒落にならない事になっておりまする。
ただでさえ状態異常:飢餓で敏捷が半減して600しかないものだから回避も完全ではない現状。
うまい事コントロールできない不安定な空間魔法・転移が命綱であります。
ガリガリMP減ってるけどねっ。
そんな我の命綱その2は兄弟姉妹ズも持っていた謎の初期スキル・逃げ足。
なんぞ? と思っていたこのスキル、逃走時限定で敏捷が倍加する神スキルでした。
ぶっちゃけこれと転移がなかったらアッサリ引き裂かれてます、我。
実際さっきからすぐ後ろで風切り音がうるさい位に大合唱をして、その度に巻き起こる風圧が我の背を押している。
エアジャンプがなかったら風に煽られて体勢崩してサックリ刈られてます。
逃げ足がなかったらあの爪で引き裂かれるか顎に噛み砕かれてます。
ほんとにどうしてこーなった、我の平穏な食っちゃ寝生活返しやがられなさいましこんちくせう。
心中で悪態を吐きながら逃げ回る事十数分、先刻までいた草原はその碧を更に深く宿し。
明らかに今までと空気の違う、どこか静謐な雰囲気に少し戸惑いながらも足を止める事無く地を、宙を駆る我の前を。
その必死の逃走を無に帰す様な巨大な湖が道を塞ぐ。
尤も、宙を駆ける我からすれば根っこゴーレム改の足止め万歳、であるが。
そのままの速度で湖面に突っ込むか足を止めて迂回して我を見失うがいいわフゥーハハハーと有頂天で湖の宙空を駆けるべく足に力を篭めた我を、だが運命は嘲笑うが如く。
突如、湖面が隆起し。
突進した我の前方を封じるかの様に水が爆ぜ、巨大な何かが湖面を割り沸き出でて。
咄嗟に停止する術など持たない我は回避する間もなくそれに激突し。
弾き返され顧みるそこには根っこゴーレム改が迫る姿が在り。
嗚呼、お腹空いたなぁ等と現実から目を逸らす我の耳を。
大気に染み渡る様に響く声が震わせた。




