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117:我、『    』。

明日から三日間、余裕がないので本日投稿となります。

今年最後の更新です。

今年も一年お付き合い頂き本当にありがとうございました。


 ルカのツッコミで床と熱烈なキスをする羽目になった後、土下座で乞うと溜息を吐きながらちみっこ皇女の道程を教えてくれて現在その後を追いかけているワケなんだけども。

 何かある毎に泣きついて頼ってる我が言うのもなんだけど、ルカ万能すぎない?

 ぽてぽて歩きながら後ろを歩くルカをちらりと盗み見る。

 最初は我の中? 脳内? にいたっぽいのに気付いたら普通に実体化してるし。

 体躯も伸縮自在っぽいし、念話も使える。

 おまけにどうやってるのか知らないけど誰かが近づいてるのを感知したり我が聞いたら対象人物がどこにいるかまで答えてくれる。

 多分だけどどこにいるか、だけでなくまるで見ているかのように動向や、下手をしたら何を話してるのかまで把握できるんじゃなかろうかと我は睨んでる。

 さっき我の目の前でやった衣装の早着替え的なスキルとか厨房で見せた収納っぽいのとか、我のサポート要員にしては芸達者とゆーかハイスペックすぎやしませんかね?

 これでもし仮に我に忠実でなんでも言う事聞いてくれるとかだったら我の兎生(じんせい)べりーいーじーもーどですだよ? ルシェル、ほんとにこんなスーパー冥土さんを我にくれて良かったの?

 いや、まぁ全然ゆーこと聞いてくれない上にどっちが主でどっちが従よってレベルだけどもさ。

 でもでも、なんだかんだで頼めば甘やかしてくれてる事を考えると我自身のスキルを使いこなすとか頑張ってれべるあっぷでぱわーあっぷを狙うよりも寧ろルカと仲良くなってゆーことを聞いてもらえるようにするのが先決なんじゃなかろうかしらん?


 「適当に甘やかして調子付かせておいて、ここ一番で梯子を外されるのをお望みですか?」


 …素直に自己研鑽しますです、はい。

 でもさ、我を抱えて運んでくれるくらいはしてくれてもばちは当たらないんじゃないかな? カナ?

 期待を籠めたきらきらお目々で見上げたルカの笑顔は満面の笑み。

 お? まさか? とわくてかした我の目の前で笑顔のままルカはぐっと親指を立てて見せ……そのまま手首を半回転してくれましたとさ、ぐすん。




 「そこを右です」


 めそめそ泣く我の首ねっこを摘まんではポイしながら道を進むルカに自分の足で歩くからもーやめて~、と悲鳴を上げ。

 ぽてぽてと無人の城内を進んでいる、のだが……。

 なんか、通路の壁とか床とかがへこんでたり穴が空いてたり砕けてたりと、進めば進むほどいやんな気分になってくるとです。

 危険が危ないピンピンチの予感がするですよ?


 「大丈夫ですよ、いても精々禁獣程度ですから」


 それ、大丈夫言わない。 てゆーかソレが危険がピンピンチの元凶デスヨネ?

 そもそも禁獣を程度なんて言えるのはルカくらいのものだと思うデスヨ、我?


 「マスターにとっても禁獣程度は脅威でもなんでもないですよ?」


 ハハッ、ナイスジョーク。

 そこらへんのジャリチビ相手でもあっさり狩られる我が世間一般で言う所の脅威そのものであるごちゃまぜモンスターをちょちょいのちょいとかぬかしよるわ。

 この我ぞ?

 ちょちょいのちょいで一捻りにされる未来しか思い浮かばんわっ!!!


 「はぁ……」


 胸を張ってそう言ったら何故か盛大に溜息を吐かれましたとさ、解せぬ。




 その後もルカの指示に従ってあっちこっちとてぽてぽ歩くこと大体五分くらい?

 目の前に現れた階段の下の方から破壊音っぽいのと怒号っぽい声が聞こえて来ましたね。

 これはあれでせうか、遂にちみっこ皇女に追いついたって事でせうか?

 と、なるともうすぐさっきの部屋に散らばってた破片じゃなくてごちゃまぜモンスターそのものと対峙するというワケで。

 …うん、深呼吸しつつ十分くらい精神集中して落ち着こう。


 「さっさと行きなさい」


 そんな我の決意ごとルカが我の体を足の甲で掬い上げるように前方目掛けてシュート。

 結果、覚悟を決める余裕も無いまま階段をころころと転がり落ちて踊り場にべちょりと五体倒置で着地。

 上司に対する不敬罪、とかこの世界にはないのかしら?


 「不敬、と言われましても……そもそも敬意自体」


 はい、この話やめ。

 最後まで聞くと凹みそうなルカの台詞を遮り、これ以上何か言われる前にさっさと行動に移ることに。

 手すりにしがみつき、そ~っと身を乗り出して階下に目をやれば……いました、ちみっこ皇女。

 右腕の付け根から巨大なムカデを生やした人? に捕まってますね、ムカデで胴体ぐるんと巻かれた鳥肌待ったなしのグロ注意な光景デス。


 …我、今すっごく回れ右して帰りたい。

 我、虫は無理なの。 生理的に受け付けないの。

 なのにそんな(ムカデ)が人体から生えた生命体と邂逅とかどんな罰ゲームなのさっ。

 しかもよく見たらあの生命体、お顔が180度ぐりんと上下反転してるし!

 本来おでこのある場所でお口が開いて、そこから50センチくらいありそーな緑色の舌と(おぼ)しきもの伸ばしてるしっ!

 ってゆーかよく見たら本来お口のある場所にある推定おでこ部分にもとげとげの牙だらけの口っぽいものがあるしっ!?


 あーうー、と唸るも眼下の光景が変わることもなく。

 萎え果てそうになる気力を振り絞って、視点を巡らせちみっこ皇女と生理的に無理なキモ生命体から外した視野で眼下を睥睨してみると。


 ・かつてメイドさんだったと思われる肉塊。

 ・我に命名してくれやがった兎耳っ娘、ただしボロボロで血まみれ。

 ・同じくボロボロで血まみれ、着ているドレスも既に服の役割を放棄状態の縦ロールさん。

 ・胴体の無い人間の顔面だけが肥大化して、そこに毛むくじゃらの手足を生やした謎生命体。

 ・巨大な蜘蛛の頭部にあたる部分から上半身を生やした蟷螂の鎌、人の腕、蹄のついた丸太のように太い腕の三対六本を備え持つ美人さん。


 以上が目に飛び込んできやがられました。

 もう、我、ごーるしてもいいよね?

 このまま意識途絶えてぽてりと倒れても許されるよね?

 いろんな意味でぽんぽんがいぱーいですよ?

 お目々をぐるぐるさせながら半泣き状態になった我のそんな思いを嘲笑うかのように兎耳っ娘が吼え、ムカデマンへと疾走し。

 一瞬で射線上に割って入った蜘蛛美人さんの丸太腕に薙ぎ払われ、吹き飛び、壁に叩きつけられ力なく崩れ落ちる。

 へ~、あんな速度で走るとか咄嗟に腕をクロスして防御してみせるとか、兎耳っ娘って強いっぽかったんだ~、と思わず遠い目で現実逃避。


 「もうやめてぇっ!」


 …ちみっこ皇女の悲痛な叫びが現実さんを呼び戻してくれやがりました、こんちくせう。


 「おちびを離しなさい、このバケモノッ!!」


 そんな我の気持ちなど知った事かと眼下の状況は変化し続ける。

 怒号と共に縦ロールさんが地を蹴り、先程の兎耳っ娘の時と同様に蜘蛛美人さんがその射線上に割って入る。

 移動の速度そのままに振るわれた丸太腕を避け、次いで振り下ろされた蟷螂の鎌を更に加速する事ですり抜け。


 「はぁっ!!」


 裂帛の気合と共に繰り出した掌底が容赦なく打ち込まれ、ゴキンという嫌な音と共に蜘蛛美人さんの首が本来あり得ない角度で仰け反る。

 ぐらりと傾くその体躯を一瞥することなく更に駆け、ムカデマンへと肉薄し。


 「なっ…!?」


 傾いたままの体勢で、されど地に伏す事無く起立した蜘蛛美人さんの人の腕の掌から伸びた蜘蛛の糸にその身を絡め取られ、縦ロールさんの動きが静止し。


 「がっ!?」


 身動(みじろ)ぎすらできぬ程に雁字搦めにされたその無防備な体躯に、顔面さんがタックル? 頭突き? …とにかく全身で突撃し、防御すらとれぬままその一撃をその身に受けた縦ロールさんは吹き飛び、床に叩きつけられ、更に二度、三度とその身が大地を跳ね。

 ごろりと転がり、そのままぴくりとも動かなくなる。


 「おねえさま! おねえさまぁっ!!」


 ちみっこ皇女の慟哭だけが響く中、バケモノーずは(きびす)を返し……。


 「…それは、(わたくし)の妹ですわよ……?

  いつまでその薄汚い腕で触れているつもりですの……?」


 弱々しい声、そして床石を掻き毟る音。

 起き上がる事すらできぬその有様で、されど視線はしっかとムカデマンを捉え、床石を掻き毟りながら這いずる縦ロールさん。


 「(わたくし)の家族に手を出して…無事に帰れるとでも思っていますの……」


 ボロボロの体躯で、己から流れ出る血で床を朱に染めながら。

 その目に確固とした意思を灯し、ずり、ずり、と前進するその姿に、不意に我の脳裏を我や兄弟姉妹ズを護る為に根っこゴーレムへと突撃したファザーの姿が過ぎり。

 そんな縦ロールさんをちみっこ皇女を蜘蛛美人さんに投げて渡したムカデマンが、まるでゴミでも払うようにその右腕で容赦なく殴り飛ばす様を見せ付けられた瞬間、その姿が根っこゴーレムに弾き飛ばされたファザーの姿とシンクロし。

 唐突に、我の体の奥からマグマのような熱が噴き出してきた。


 それは、己に制御できるようなものではなく、あっという間に全身を巡りその熱を余す事無く行き渡らせ。

 ドクン、ドクンと心臓が痛い程に鼓動を打つ中。

 理解不能な衝動が、我の脳内を埋め尽くしていく。


 アレヲ決シテ赦スナ。


 報イヲ、裁キヲ。


 全テヲ蹂躙セヨ。


 ドス黒い、熱気を帯びた激情に突き動かされるままに我は地を蹴り、跳躍し。



 (駄目よ、それは私の領分だもの)


 突然、脳裏に響く鈴の音のような凛とした声。

 そして、誰かに優しく抱き締められるような錯覚を覚え。


 (交代。 ね?)


 優しく語りかけて来るその声がすぅ、と心に染み渡り。

 抗いがたい衝動に促されるまま、その声の主にその身を委ね。


 我の意識は、途絶えた…───。


皆様、良いお年を。

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