114:我、専属冥土さんをゲットする?
ぽてぽて、ぴょこぴょこ。 無人の城内を我が行き。
てくてく、すたすた。 そんな我の後ろを実体化したルカが続く。
ちらりと振り返ってみれば何か? と小首を傾げこちらを見るルカの姿。
元の造りがいいだけに絵になるにゃあ、ってそうじゃなくてルカさんや?
「なんでしょう?」
我が一匹ぴょこぴょこ跳ねてるだけならそこまで問題でない気がするんですけどもね?
明らかにここのお城の関係者じゃない風味の衣装着込んだルカが堂々と歩いてるのってさ、万一関係者な人に見られたらまずいんでない?
と、ツッコミながら改めてルカの服装をじ~ろじろ。
上は薄紅色の着物、下は紺色の袴。 白い足袋に草履履き。
これで草履がブーツだったらはいからさん待ったなしですな、…じゃなくて。
どう考えても明らかにこの世界で浮いてるよね? 浮きまくってるよね?
「そうですか?」
少なくとも我、このお城生活始めてから今までの間に一度も和装とか見たことねーですだよ。
もし仮にこの世界に和装的なモノがあるにしても城内にいきなりそんな格好のがいたら目立つし誰ぞアレ? って疑問待ったなしなワケでして。
そんな誰ぞアレ? と我が一緒に行動してるのを見られたりしたら我まで痛くも無い腹を探られるとは思いませぬか?
「痛くも無い腹……?」
なんでそこに疑問持つのさ。
「マスターの抱えているもの、どれ一つとして発覚すれば騒動待ったなしかと?」
…やめろし、そーゆー現実さんをパワーアップさせる発言は。
今ですら現実さんにメッタ打ちにされてるのにこの上更に現実さんが強化されたら太刀打ちできなくなるでしょっ!
「今まで、一度でも太刀打ちできた事ありました?」
ゴフッ。
ルカさん、致命の一撃はやめろくださいまし。
「しかしそうですね、マスターの言う事にも一理ありますか」
下手をして面倒事に巻き込まれても面白くありませんし、と呟きつつ萎れて床にへにょりと倒れ伏した我の体の下に自分の足を潜り込ませてくるルカ。
これ、何ばしよっとね。
そんな我の抗議を無視してどんどん潜り進んでくるルカの足はやがて我を甲に乗っけた形になり。
「時間がないのを理解しているのならさっさと歩きなさい」
言葉と共に勢い良く振り上がるルカの足、そして射出される我。
………射出っ!?
慌てて空中で姿勢を制御し、どうにかこうにかすちゃっと着地。
片前足をビシッと天へ伸ばしポーズを決めっ。
…じゃなくて、急に何するんだってばよ。
と、抗議の足ダンと共に振り返ってルカを視界に収めてみれば。
「状況を鑑みず床でとろけるマスターが悪いです」
…なんか服装が変わってました、ハイカラさんから冥土さんに。
ぱっと見はシェラさんが着てるメイド服と同じ風なんだけど、よくみて見ればあちこちアレンジされてるね。
なんか裾からレースが生えてるし、靴下が白じゃなくて黒だし、あと頭につけてるホワイトブリムに飾りが付いてるし、…って。
ちょいとルカさんや、我の目がふしあなさんじゃなかったらそのホワイトブリムに付いてるアクセサリ、デフォルメされたドクロじゃござーません?
「可愛いでしょう?」
ええ、まぁ可愛くはあると思いますですよ?
…そのドクロが明らかに兎モチーフっぽくなければね。
アレですか、コンセプトは我だけの冥土さんデスカ。
「冥土の土産はキャロットンガラでいいですか?」
それ、土産じゃなくて凶器ちゃう?
死因:キャロットンガラpart.2とか流石にルシェルに見捨てられる気がするですよ?
前回キャロットンガラ死した時も割と本気で見捨てようと思ったって言われたし。
「それならそれであの愉快犯の玩具を脱する好機では?」
おもちゃ扱いは御免こーむるけど死ぬのもイヤでごんす。
と、素直に答えたらなんかルカからゴミでも見るような目で見られた件。
解せぬ……事はないね、流石に自分でも今の発言はどうよって思うし。
「僅かなりと、マスターにもまともな部分はあったようで何よりです?」
そうですか、そう言って貰えると嬉しいデス。
ところでルカさんや、なじょしてスカートを摘まんで右足を軽く持ち上げてるのカナ?
「もし解せぬ、で言葉を止めていたらとりあえずストンピングでもしようかと?」
…今履いてるの、さっきまでの草履じゃなくてブーツだよね?
「見ての通りの編上ブーツですよ?」
今、足を下ろした時にゴトッっていう音がしたけどもしかして厚底だったりしません?
「靴底に鉄板、爪先に鋼製先芯が入っているだけでそこまで底は厚くありません?」
凶器じゃんそれ。
そんなんでストンプされたら我中身出ちゃうじゃん。
「運が良ければど根性ラビになれるかもしれませんよ?」
靴底に貼り付いてどないせーゆーねん。
そも、万が一ど根性ラビ化できたとしてもルカがいつもの服に戻ったら我どーなんのさ。
「試してみます?」
試してみませぬ。
そこ、そんな残念そうな目をしない。
ちょっとだけ、先っちょだけ的な視線で右足を持ち上げないっ。
舌打ちもすんなしっ!
■□■□
と、毎度恒例の漫才を終えた我とルカは再び進軍を開始した訳ですが。
曲がり角を三つ曲がってみれば前方には大穴の開いた壁とひしゃげた扉、周囲に飛散する壁だった瓦礫という見るからに何かありました~、と言わんばかりの光景が。
もしかして、神属さんの部下な人達既に城内に侵入済み?
「一部の禁獣を対象の確保の為に送り込んだようですね」
たいしょーのかくほ?
そーいえば戦争いや~としか考えてなかったけど、神属さんって "戦争ぼうぜぇ!?" とかそんな感じで喧嘩吹っかけてきたわけじゃないの?
我の脳内では以前見かけた神属さんが "ビキィッ" とか "!?" とかを頭上に浮かべながらピッケル片手に単車に跨って特攻してきてたんだけど。
「アレの目的は理想の合成獣、及び禁獣を産み出す事です。 従ってすべての言動はそれが前提となります」
合成獣って魔物を数匹こねこねしたごちゃ混ぜモンスターだよね?
で、禁獣は確か人間をベースにこねこね……。 もしかして、対象ってこねこね材料に使う人間のこと?
「はい、最優先目標はこの国の第三皇女ティセリナ=ガオルーンのようですね」
だいさんおーじょってゆーと……え~っと、もしかして我をここに連れてきたちみっ子?
え、あの子がごちゃ混ぜモンスターになるの?
我の脳内で巨大化したちみっ子が怪獣の着ぐるみを着て口から火を吐きながら都市を蹂躙していく。
頭上に『ぎゃお~』と鳴き声らしき書き文字が浮かんだ辺りで頭をぷるぷると振ってイメージを霧散させる、どうやら我の想像力ではごちゃ混ぜモンスター像は作成不可能っぽい。
「彼女の持つ聖魔術を含むいくつかの素質にアレの保有する管理用ユニットの血肉による侵食を封ずる効果があります。
故にアレは己の理想を造り出す為に該当スキルの所持者を実験材料として欲しているのです」
…えーと、要するに神属さんが理想のごちゃ混ぜモンスターを造るにはちみっ子みたいな特定のスキルの持ち主が必要で。
それ以外を材料にしたら理想と違うしょんぼりモンスターにしかならないっていう事?
「大体合っています」
ごちゃ混ぜモンスターを一匹造るために戦争吹っ掛けてくるとか迷惑千万極まりないってレベルじゃねーですよ。
で、さらっと言ってたからスルーしかけたけどさ。
今、ルカ、神属さんが管理用ユニットを保有してるとかゆってなかった?
「言いましたが?」
…管理用ユニットってオールステータス一万とかゆーふざけんな生命体デスヨネ?
そんなんがあの神属さんの部下にいるの?
「部下ではありません。 文字通り保有されているだけです、生きた素材として」
あ、なんか急に親近感湧いてきた。
我達みたいな扱いなのね、神属さん家の管理用ユニットさん。
「心臓を抉り取られても死ねずにいますから、確かに死ねないマスターとは通じ合うものがあるかもしれませんね」
いや、流石に我心臓をもがれたら死ぬからね?
寧ろ心臓を抉られても生きてる管理用ユニットさんが異常な件。
「ミンチにされようが一片残らず焼き尽くされようが魂魄を滅されようがあっさり生き返るマスターの方が余程異常です」
それ、我の能力ちゃうねん。
ルシェルの加護やねん。
などと言葉を交わしながら大穴の開いた壁の横を通り過ぎ…───。
「…誰、か…いる、の……?」
………通り過ぎれないまま強制イベント発動っぽいです。




