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107:大乱-⑬



 投稿、失敗してたみたいです。(´・ω・`)

 研修会に参加して出先で一泊したので気付くのに

 遅れてしまいました。(´;ω;`)



 四方八方、どちらを向いても屍山血河の地獄の中。 他所とは一風異なる光景が繰り広げられている場所があった。

 その中央にはガオルーン皇帝ウシュム、皇后ラヴェルナ、皇太子ヴォイド、ガオルーン皇国侍女長シェラ、そしてトリュケシアの剣聖ロー。

 対峙するは百を超える禁獣の群れ。

 そして、そんな彼らの繰り広げる血の狂宴を一歩引いた場所から笑みを浮かべ眺めるミラ=フォールン。


 演者が集い、場は築かれ、最終演目を告げるベルが静かに鳴り響いた。




 ■□■□




 「大したものねぇ。 この子達は自信作のつもりだったんだけど、ちょっと自信無くしちゃうわ」


 ミラの号令に従い行動を開始した三百の真なる禁獣。 ミラが"神徒"と呼称するそれらのうち、周辺の掃討へ向かった者は百名。

 残りの二百名はミラに付き従いガオルーン皇を目指し進軍。

 これを受け遊撃手として動いていたシェラとローはそちらに回らざるを得なくなり、結果百名の神徒による虐殺を許すこととなった。

 同時に、積極的な交戦を控え指揮と鼓舞に専念していたウシュム、ラヴェルナ、ヴォイドの三名は僅かな近習と共にそれまで相手にしてきた禁獣を遥かに上回る化け物二百名を相手取る事となる。

 普通ならば、それは最早闘争とすら呼べない一方的な蹂躙としかならない。

 ただしそれはシェラ=フォーンとロー=フォーという人の領域を逸脱した存在がいなければ、の話であるが。


 ウシュム達を捕らえるべく動いた二百名の内、既に八十超が屠られ地へと還っている。

 その内ウシュム、ラヴェルナ、ヴォイドの倒した数は八体。 残りはすべてシェラとローの戦果である。


 「はっ、我輩のような枯れたジジイ一匹殺せぬものが自信作とは底も知れようというものであるな」


 ただし、その代償は決して安くはない。

 身の護りを捨て、ただひたすらに敵を葬る事だけを実行し続けた結果。

 シェラとローの体には大小様々な傷が出来、手足は震え、疲労困憊の相で肩で息をする有様であった。


 「仕方ないじゃない、素質で選んだだけで素材の厳選まではできなかったんだもの」


 明らかに呼吸を取り戻す時間稼ぎの為であるローのその軽口に、しかしミラは容易に応じる。

 ご丁寧に神徒を手で制し攻撃の手を止めさせた上で、である。

 それは余裕のあらわれか、それとも更なる悪意の準備段階か。

 付き合うのが正解か、今この瞬間を逃がさず動きを止めた禁獣を刈り取るべきか。

 意図が読めず、更に警戒を強めながら。 答えの出ない思考を捨て、呼吸を整えながらローは対話に付き合う道を選んだ。


 「素材、とな?」


 「ええ、素材。 邪神の呪いを祓う為、っていう名目で各国に差し出すよう指示を出しているでしょう?」


 そう言ってニヤリと嗤うミラの姿に、素材が何を指すのかを理解したローは顔を歪めた。

 今まで自分がその手にかけてきた者達は、そして今周囲を囲む者達は元を辿れば何者であるかを改めて自覚させられれば否が応にも精神への負荷は増す。

 そして同時に、ここで自分達が倒れればどういう末路を辿るかも強く再認識させられた訳である。


 「…外道が」


 「よく言われるわ」


 ローの後方でその会話に耳を傾けていたウシュムが吐き捨てるように呟き、ミラは嗤い顔を笑顔に変えて答える。

 その笑顔は先ほどまでの邪悪な狂相でなく、屈託のない純粋な笑みであった。

 そう、たとえば褒められた幼な子がそれを誇るかのような。


 「ガオルーン皇は知っているわよね、ミラ法国(わたしのくに)ができる以前そこに在った国に神と呼ばれる存在がいた事を」


 笑みを絶やす事無く、誇らしげな声音で。

 ミラは、言の葉を紡ぐ。


 「不死にして不滅の巨鳥フェネクス、その存在を知った時から私はずっと想い焦がれていたの。 ああ、そんな存在を素材に使えば一体どんな素敵な合成獣(キメラ)ができるんだろう、って」


 頬を染め、両手を胸の前で組み合わせ、うっとりと瞳を潤ませる。

 声色にも艶が混じり、悩ましげに吐息を漏らしながら身を震わせるその姿に狂気の色はまるで見て取れず。


 「だから、奪ったの。 森人(エルフ)から、森人(エルフ)と共にフェネクスに依存していた人間共から。

  アレは私のモノ。 未来永劫、この先もずっと私だけの大切な宝物(オモチャ)なの」


 左右の手を両頬にあて、切なげに身をくねらせるその姿は恋に焦がれる一人の乙女のようで。

 だがしかし、その瞳は徐々にどろりと濁っていく。


 「神と呼ばれるだけあってフェネクスは本当に強かったわ、私が必死に造った合成獣(キメラ)達が束になってもまるで敵わなかったもの。

  でも、ただそれだけ。 強いのはフィジカルだけでメンタルは全然強くなかったわ」


 言葉と共に笑顔は歪み、ニヤリと口角が吊り上がり。

 影を潜めていた狂気を再び前面に押し出し、濁りきったその瞳を三日月のように形を変え、ミラは嗤った。


 「だってフェネクスに侍る巫女を使って造った粗雑で出来損ないの禁獣を見た瞬間に戦意を失っちゃったんだもの。

  呆然と! 泣き出しそうな! あの喪失の表情っ!! 思い出しただけで身体が熱くなるわ」


 息を(あら)げ、我慢できないとばかりに己の身を抱きすくめ。


 「あなたが従わないならこの国のすべてをこうする、って言ったらあっさりと膝を屈したわ。

  不死不滅の神が、この私なんかに頭を垂れたのよ!?

  あの瞬間の快感は決して忘れられないわ」


 思い出したのかぶるりと身を震わせ、ぞくぞくと走る快楽を必死に堪えながら。

 愉悦の表情で、濁った瞳で、歪に嗤う口元で。

 全身で示すその悦楽のリアクションは、当人以外からすれば醜悪以外の何物でもなく。


 「それからは肉を削いで、骨を引き抜いて、血を抜き取って、寝る間も惜しんで実験を繰り返した(あいしあった)わ。

  庇護下にあった住民達を一人残らず実験材料に使ったと伝えた時の絶望の表情と悲鳴。

  あぁ、今思い出してももう……」


 片手で己の胸を揉み、もう片方の手をローブの上から秘所へと走らせ。

 熱い吐息を漏らしながらもどかしげに身悶え。


 「…でも、うまくいかなかった」


 唐突に、動きを止める。


 「フェネクスの血を媒体として使えば確かに安定した禁獣を生み出せるようになったわ。

  でも、フェネクスの骨や肉を素材として使った場合、フェネクス自身の持つ生命や神聖に類する素質を持った人間でなければ物言わぬ肉塊か、崩壊と再生を繰り返した挙句自我を失った巨大合成獣(ギガント)にしかならなかったの」


 両手で顔を覆い、悲しげな声音で、嘆くように小刻みに身を震わせ。


 「だけど、それが諦める理由にはならないわよね?」


 そう溢した言の葉から悲壮の色は消え、体の震えも止み。

 覆っていた手を外したその表情は、どこまでも真剣で。 しかしてその瞳は濁り、澱み、狂気を孕み。


 「真なる神も世界(はこにわ)(システム)もどうだっていい、私はただ私の欲望に忠実であり続けられればそれだけでいいの。

  だからあなたたちは私の為にその身を捧げなさい。 それだけ優秀な素材ならきっと成功するわ、いえ、してみせるわ!」


 その身から溢れ出した狂気は伝播し、戦場を覆い包み。

 ミラに呼応するかのように周囲を囲む神徒達も異様な熱気を発する。


 「そろそろ呼吸も整ったでしょう?

  なら存分に抗ってちょうだい、貴重なデータサンプルとして」


 そう言い放ち、ミラはにっこりと微笑み。

 その言葉を合図に、ウシュム達目掛け神徒が殺到した。




 子供の頃、幼心に犯人や黒幕はなんであんなべらべらとやらかした事を語るんだろうと疑問に思っていましたが。


 視聴者に知らしめる為、という以上に。


 自分のやった事を誰かに知らせたくて仕方なくて、

  死人に口無しとばかりにこれから死に行く相手に語っているんだよ、と兄から教わりました。



 ……今思うとやな子供ですね、我が兄ながら。


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