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105:大乱-⑪


 先週、また朝一で電話がかかってきてバイト君がバックレたから代出頼まれた筈が気付いたらホタルの光を聞きながら閉店業務をこなしていた件。

 週休一日なのに代休なしとかもう、ね。。。。


 私用で先週投下できなかった事、心よりお詫び申し上げます。 m(_ _)m



 開戦からおよそ六刻。

 ミラ法国2,169、ガオルーン皇国12,000で始まった大乱も少しずつ収束へと向かっていた。


 ミラ法国の被害1,868、残数301。

 対するガオルーン皇国の被害9,143、残数2,857。


 二刻前の戦況と見比べれば異常な規模でミラ法国の被害が加速しているが、対するガオルーン皇国の側もそれまで以上の被害を半分の時間で叩き出している。

 こうなった理由は単純で、シェラ=フォーンや剣聖ロー=フォーを始めとした本来であればミラ=フォールンに至るまで温存すべき戦力の投入に加え遊軍として味方陣営のフォローに回っていた主戦力達の攻勢変転である。

 結果、ミラ法国側へ甚大な被害を与える事にこそ成功したが、その対価として兵の大半と温存すべき戦力の損耗を招いてしまった。


 刻一刻と悪化していく状況の中、苦渋の選択としてウシュム=ガオルーンはその戦法を執り。

 多大な損耗と引き換えに戦場で暴れる禁獣達を駆逐し尽くし、残すはミラ=フォールンとその周囲を守る近衛と思しき三百の兵のみという戦況を作り上げた。

 現時点でのガオルーン側の兵力は三千弱、主力の消耗はあれどまだ勝ちの目があると誰もが思っていた。


 「失敗作の廃棄処分も終わったみたいだし、後はあなた達でさっさと終わらせてきなさい」


 ミラ=フォールンのこの言葉と、それを受け動き出した純白の革で作られた全身鎧に身を包んだ三百の兵が動き出すまでは。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 「クソがっ、なんなんだこいつらは!?」


 怒声をあげながらガオルーン兵士の突き出した槍は、その身に纏った革鎧に阻まれ。


 グチャッ。


 突かれたその体勢のまま、文字通り伸ばされた(・・・・・)腕が肥大化しながらガオルーン兵士の頭を掴み、容易く握り潰した。

 その横では背から二対の腕を生やした兵がそれぞれの手に構えた六本の剣を振るい周囲のガオルーン兵士を薙ぎ払う。

 離れた場所では背から翼を生やし宙を舞い、ガオルーン兵士目掛けて口から炎を吐き出し。

 更に別の場所では両手に一人ずつガオルーン兵士を掴み、それを獲物の如く振り回し周囲の敵兵を殲滅していく。


 人の形を保ったまま異形へと変ずる、ヒトの皮を被ったナニカ。

 それが先ほどまで自分達が相対していた禁獣と同質のものであると理解するまでに数多の被害が出。

 またその被害の元、認識を改めた者達もなまじ相手が人の形を保っているが故に無意識に対人の戦法を選択し。

 結果、更に多くの被害を生みガオルーン兵士達はいとも容易くすり潰されていった。




 「…成る程、これ(・・)が本来の禁獣ということか」


 そう呟くカミラ=トリュケシアの視線の先には細切れになったヒトガタのナニカが転がっている。

 それを見下ろすカミラの表情は険しく、苦々しい感情が色濃く浮き上がっていた。


 先ほどまで切り捨ててきた禁獣。

 だが、今斬り殺したこれは明らかにそれらとは異なる代物であった。

 無論、一対一であればカミラに敗北などあり得ない。

 だが、禁獣どもと違い無傷という訳にもいかない。


 禁獣は、元となった魔物の性質によりその性能は左右されていた。

 故に、中には数で攻めれば兵のみでも十分に屠れる程度の者も多数いた。

 しかし、今戦った者はそういった次元の相手ではない。

 身に纏っている頑強な革鎧など、それの本来持ち合わせた性質からすれば誤差程度でしかない。


 ミラ=フォールンの声に従いこれが戦場に放たれた後、カミラが斬り伏せたのは今眼下に転がるものを合わせて三体。

 そのすべてが同様の力量と性質を持ち合わせていた。

 革鎧に包まれたその下にある皮膚は、その身を覆っていた革鎧以上に頑強で。

 腕力は並の人間を凌駕しているなどという生易しいレベルでなく、素手で大地を砕くほど。

 それに加え人型を保ったまま体のあちこちが変質し、その口から炎に毒に雷と多彩なブレスを吐き出しながら襲い掛かってくるのだ。

 極めつけは手足を切り落とそうが胴に穴を開けようが再生してのける馬鹿げた生命力である。

 流石に切り落とされた首を再生する事はできないようだったが、頭を失っても倒れる事無く我武者羅に暴れ回るそれを仕留める為に被弾覚悟で突撃する羽目になった。

 人の形を保ち、その見目も人と変わらず、言葉を操る。

 その上でそれである。


 「それが三百程度、か……」


 そう呟くカミラの瞳が揺れる。

 確かに、己は今三体を仕留めた。

 だが、そのいずれも無傷という訳にはいかず禁獣との連戦も相俟って既にその身は限界が近い。

 他の者達も似たようなものであろうし、突出した戦力を持つシェラとローも禁獣を殲滅する為に随分とその身を酷使し残された体力はそう多くないだろう。

 そんな状況で、先程までの禁獣が可愛く思えるほどのバケモノが三百体。

 カミラの脳裏を絶望の二文字が過ぎるのも無理はないだろう。






 ミラの放った一言から凡そ十分の後。


 ミラ法国の残存戦力、278。

 ガオルーン皇国の残存戦力、927。


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